メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

[2022年 テレビベスト5]旧統一教会報道とドラマが描いた陰惨な世界

青木るえか エッセイスト

ドラマの紆余曲折とドラマの展開は関係ないのに……

第4位『エルピス ─希望、あるいは災い─』(関西テレビ、フジテレビ系)

 話題作。始まる前から話題になっていた。冤罪事件を扱うテレビ局の人間、のドラマ。志の低いバラエティ番組で冤罪事件を取り上げたって意味ねーんだとうそぶくプロデューサーやら、どうもその冤罪事件が時の政権の何かをつっついてしまいそうになってつぶしにかかってくるテレビ局の上層部、やんわりと手を引けと言ってくる政治部記者の恋人、というのはまあ、ある意味わかりやすい話だ。ここから「テレビ業界でチャラチャラしていた人間が、社会問題に目ざめて、そして悪を暴く」のか「途中で挫折する」のかわからないが、そういうドラマとして、納得して見ている。

 脚本が渡辺あやなので、こういうドラマによくある、いかにも安っぽいような場面や展開はない。いかにもなキャラは出てくるが、そのキャラたちはドラマの進行につれてどんどんキャラを変えていく。それもちゃんと変化が納得できるように描いてある。よくできたドラマだと思う。ちょっと都合よすぎる話じゃないかと思うところもあるが。

 ただ、この『エルピス』が放映されるまでにはいろいろ紆余曲折があって、最初に企画した時には局からダメ出しくらって、ドラマ化のために敏腕女性プロデューサーがそれまでいたテレビ局をやめて別の局に移った……なんていう話がネットのインタビューで語られた。

 そのせいか、「このドラマが、実際に制作され、放映までこぎつけたこと」が、「ドラマの中の、恵那や拓朗(長澤まさみと眞栄田郷敦。このドラマの主人公2人)が冤罪事件の真実に迫ること」と二重写しみたいに見られている、ような気がする。

 え? いやそこは別に関係ないことでは。

 この『エルピス』がどういう終わり方をするのか今の時点ではわからないが、ドラマの中で何かの希望が見えるにしろ、闇に堕ちるにしろ、それが現実のこの女性敏腕プロデューサーおよび有能で志の高い女性脚本家がこれからどう歩むのかということとは、まったく無関係なことだと思う。けど何か関連づけられて語られそうでいやだなあ。

佐野亜裕美さん(左)と渡辺あやさん拡大ドラマ『エルピス』のプロデューサー佐野亜裕美さん(左)と脚本家の渡辺あやさん

第3位

・・・ログインして読む
(残り:約2703文字/本文:約5095文字)


筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

青木るえかの記事

もっと見る