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必見! 『ケイコ 目を澄ませて』──心揺さぶるボクシング映画

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 聴覚障碍を持つ女性ボクサーが健気に闘う姿を、岸井ゆきのが絶妙に演じる『ケイコ 目を澄ませて』は、今年の邦画界最大の収穫のひとつだと断言できる傑作だ。

『ケイコ 目を澄ませて』 12月16日(金)より東京・テアトル新宿ほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2022 「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS拡大『ケイコ 目を澄ませて』 12月16日(金)より東京・テアトル新宿ほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2022 「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

──レフェリーの指示も、セコンドの声も、ゴングの音も聞こえないケイコは、ボクシングへの情熱にかられて、練習を重ね、試合に挑む。が、やがてケイコの心に、ボクシングを続けることへの迷いが生じ、彼女は休養したい旨の手紙をジムの会長宛てに書くが、それを出せないまま時が過ぎていく。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知り、再起を決意する。自分が自分であるために……。

 こうしたシンプルな物語を、監督の三宅唱は、再開発が進むコロナ禍の東京の下町を舞台に、感傷を排した、しかし<情>の表現を逃げない、古典的な正攻法で描き切る(原案は聴覚障碍者の元プロボクサー・小笠原恵子の自伝『負けないで!』)。

ベルリン国際映画祭に出品された「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱監督=2022年2月13日、ベルリン拡大『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督=2022年2月13日、ベルリン国際映画祭で

筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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