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『喜劇 老後の資金がありません』にダブル主演 渡辺えり×室井滋(下)

ストレートと変化球で漫才コンビのように面白くなる!

米満ゆうこ フリーライター


渡辺えり×室井滋インタビュー(上)

実はクヨクヨと悩むタイプ

――渡辺さんも室井さんも、こうやってお話をうかがっていると、すごく楽しくて、前向きな方というイメージがあります。でも、渡辺さんはバラエティ番組ではそう見せているけれど、結構、一人ではクヨクヨ悩まれるタイプだそうですね。

渡辺 母親譲り。悪い地獄のようなことばっかり考えちゃう。夜ずっと考えて、朝も気持ち悪くなって起きたりする。

室井 本当に? お酒は?

渡辺 飲まないの。母親も心配性ですごくそれが嫌だった。ポジティブにポジティブに考えなきゃいけないですね。脳科学者の教授も言ってたけど、気持ち悪いものや怖いものを見ると、脳がそれを覚えていて定着してしまうから、明るくて豊かなものを考えて寝たほうがいい。気を付けたほうがいいなと思っています。

室井 私は若いころは自分の膝小僧を抱えているような、いい言い方をすれば、アンニュイな少女だったのに(笑)、年を取ったら全くそういうところがなくなっちゃって。明日困るから、今日起こったことは今日解決したい。解決できないと、外でデッカイ声出したりして、スッキリさせる。溜め込みたくないタイプなんです。

渡辺えり(左)と室井滋=宮川舞子 撮影拡大渡辺えり(左)と室井滋=宮川舞子 撮影

渡辺 ええーっ、羨ましい。何歳から?

室井 知らない間にドンドンそうなっちゃった(笑)。

渡辺 それは長生きするわ。そういう人は認知症にならないし、長生きするって脳科学者が言ってた。

室井 別に長生きしたいわけじゃないんだけど(笑)。

渡辺 木野花さんや加藤登紀子さんもそう。ポジティブなことしか言わないし、2人とも明日の夢しか語らないのよ。すごく明るくて羨ましい。

室井 私、夢みたいなことは全然考えないんですよ。トラブルを持ち越したくない。一緒に住んでる家のオヤジが一回りほど歳が上なんだけど、だいぶヨボヨボになってきて、電子レンジの使い方を間違えて、ゆで卵が爆発したんですよ。

渡辺 あららら。

室井 すごく腹が立って、大げんかですよ。電子レンジの中のカスを掃除機で吸い取ったりして(笑)。でも怒りすぎたかなと思って「人の言うことを聞いてくれたら、こんなに怒らないから」と。

渡辺 あの方ですよね? 私、Facebookで友達になってますよ(笑)。

室井 アッハッハッハ、本当ですか? 「二度とゆで卵を作らないと約束して」と言いました。

渡辺 猫じゃなくて良かったじゃない。

室井 猫には「チンするよ、離れて」と子猫の時から教育してあるんですよ(笑)。「チン」と言った瞬間にもう逃げていく。猫のほうがしっかりしている。

渡辺 アハハハハ。歳はいくつ?

室井 21年生きていて、もう104歳ぐらいですよ。

渡辺えり=宮川舞子 撮影拡大渡辺えり=宮川舞子 撮影〈ヘアメイク:新田美佐子、スタイリスト:矢野恵美子、衣装協力:アクセサリー/アビステ〉

渡辺 それはすごい! 私はもうクヨクヨクヨクヨして。あのね、戦争が終わらないでしょ。寝ても覚めても「どうやったら止められるんだろう」と考えたら胃が痛くなっちゃって。眠れないんですよ。

室井 やさしいんですよね。

渡辺 小さい時から本当にクヨクヨするタイプだね。だから戯曲を書く。

室井 私も小さい時はクヨクヨしてたんですよ。

渡辺 私も室井さんみたいになれるかな? ちょっとしたことをずっと後悔ばかりして。パレスチナにも行ったほうがいいんだろうかとか、居ても立っても居られなくて。仕事があるからと自分に言い聞かせるんだけど、何か毎日モヤモヤしてますよね。宮沢賢治の「世界全体が幸福にならなければ、個人の幸せはありえない」という思想が東北人だからある。誰かが犠牲になっていたら気持ち悪くて、自分だけおいしいもの食べていいんだろうかと。そういう風に育って教育されていなければ、明るく生きていけるものを。ディスコとかも何か、楽しめない、

室井 ディスコ!(笑)

渡辺 上京してきて、行くじゃない? 今、親がなぁとか思うと胃が痛くなって踊れない。何か理由がないと楽しめないわけよ。演劇でも親が喜ぶからやるみたいに、理由付けがないと楽しめない性格なのよ、不幸だよね。さっき、食事にお金かけると言ったじゃない? 死ぬまで何食も食べられないから今を楽しむ発想でしょ?

室井滋=宮川舞子 撮影拡大室井滋=宮川舞子 撮影〈ヘアメイク:鈴木將夫〔MARVEE〕、スタイリスト:多木成美(Cコーポレーション)、衣装協力:ブラウス/CAWAII(0120-990-577)、ブローチ/ABISTE(03-3401-7124)〉

室井 いやいや、食べることが好きだからですよ。高くても素材が良くていいなと思ったらそっちを買う。

渡辺 例えば何?

室井 いつもいいもの食べたいわけじゃないんですよ。でも今のシーズン、マツタケがあればマツタケが食べたい。

渡辺 私もそういう風にしたいのに、フォアグラもらうと、高くてもったいないから食べないで、結局、腐らせちゃう。

室井 ハハハハハッ。

渡辺 本当に性格を直したい。

室井 私はいい葡萄をもらうと、2人で食べきれないから、マネージャーや友達にあげて、お風呂屋の番台さんとか会う人、会う人にあげる。向こうはそれでちょっと親切にしてくれたりするから(笑)、腐らせるんだったら差し上げたほうがいいんですよ。

渡辺 そうよね。

渡辺えり(左)と室井滋=宮川舞子 撮影拡大渡辺えり(左)と室井滋=宮川舞子 撮影

――あのー……。

渡辺 あ、すみません(笑)。

――いえいえ、つい聞き入ってしまいました(笑)。ちょっと話題を変えて、演じることについてお伺いしたいのですが、室井さんは普段でも役に憑依するタイプだそうですね。

室井 私の場合、最近舞台は少ないので舞台では分からないんですが、映画やドラマでそうなっちゃうことはありますね。怒りっぽい役だったら普段も怒りっぽくなるとかそういうところはありますね。

渡辺 それは私もありますね。女王様の役をやっていると、普段でも皆がかしづいてくれないと嫌になっちゃうし、女中さんの役やっている時は、皆にお茶入れちゃう。

室井 アハハハハ。

――それは、舞台が終わったら自然に抜けるのですか?

渡辺 抜けるのに時間がかかったものもありますね。明るい役だったら境がないけど。一度、拳銃自殺をしなきゃいけない役をやったんですよ。本当に死ぬんじゃないかと思ってしまって、広島で公演した翌日にアコーディオン奏者のcobaさんのコンサートに行って、「伝説のチャンピオン」を聴いて、「ああ、生きなきゃ」と思った。彼は命の恩人で今でもお付き合いがあります。小日向文世さんと『ミザリー』をやった時も、夢の中で小日向さんの足を切っていて。

室井 ああ、それは嫌だ……。

渡辺 夢の中でああーっ、狂うんじゃないかとなりましたけど、戻ってきていますね。ベトナム人を虐殺する役の時は、ベトナム人が夢に出てきちゃって、うなされて大変でしたね。それは1カ月ぐらいで戻ってこられたんじゃないかな、自分に。

室井 考えこむんだね。

◆公演情報◆
喜劇『老後の資金がありません』
京都:2023年1月14日(土)〜28日(土) 南座
東京:2023年2月1日(水)〜19日(日) 新橋演舞場
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:垣谷美雨(中公文庫)
脚色・演出:マギー
[出演]
渡辺えり、羽場裕一、長谷川稀世、原嘉孝、多岐川華子、一色采子、明星真由美、松本幸大(ジャニーズJr.)、宇梶剛士、室井滋
〈渡辺えりプロフィル〉
 1978年に劇団2○○(その後劇団3○○に改名)を結成し主宰をつとめる。劇団では作・演出・出演の3役を担い、1983 年『ゲゲゲのげ~逢魔が時に揺れるブランコ』で岸田國士戯曲賞、1987年『瞼の女 まだ見ぬ海からの手紙』で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。2019年には日本劇作家協会会長に就任し、舞台劇術の発展に尽力している。1997年に、映画『Shall weダンス?』で日本アカデミー賞最優秀助演女優を受賞。近年の主な舞台出演には、『喜劇 有頂天旅館』、『喜劇 有頂天一座』、『喜劇 有頂天団地』、『喜劇 有頂天作家』をはじめ、『三婆』、『喜劇 お染与太郎珍道中』などがある。
公式ホームページ
公式instagram
〈室井滋プロフィル〉
  富山県出身。早大在学中の1981年に映画『風の歌を聴け』でデビュー。映画『居酒屋ゆうれい』、『のど自慢』、『 OUT 』、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』などで数多くの映画賞を受賞。また、ディズニー映画『ファインディング・ニモ』、『ファインディング・ドリー』日本語版のドリーの吹替えを担当。2012年日本喜劇人大賞特別賞、2015年NHK連続テレビ小説『花子とアン』で第36回松尾芸能賞テレビ部門優秀賞を受賞。エッセイストや絵本作家としての才能も発揮。絵本『タオルちゃん』、『しげちゃんのはつこい』、『会いたくて会いたくて』、エッセイ『ヤットコスットコ女旅』他多数。
公式ホームページ

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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