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宝塚退団後初主演舞台『マヌエラ』に臨む 珠城りょうインタビュー(上)

心に響く「人間の価値ってなんなのだろう」というメッセージ

橘涼香 演劇ライター


 第二次世界大戦直前の上海を舞台に、実力と美貌とを武器に生き抜いたダンサー・マヌエラの力強い姿を鮮烈に描いた舞台『マヌエラ』が、2023年1月15日~23日東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、1月28日~29日大阪・森ノ宮ピロティホール、
1月31日福岡・北九州芸術劇場 大ホールで上演される。

 『マヌエラ』はSKDで将来を期待されながらも上海に駆け落ちし、生きていくためにダンスホールの踊り子となり、上海の薔薇と呼ばれた実在の日本人ダンサー永末妙子の愛と激動の半生を、音楽×ダンス×芝居で描いた作品。1999年に上演し好評を博し、この度、24年ぶりに宝塚歌劇団月組でトップスターとして活躍した珠城りょう主演で新たな幕を開けることになった。

 脚本は、「金曜日の妻たちへ」「男女7人夏物語」「29歳のクリスマス」、大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」など名作テレビドラマ、映画のシナリオを手掛けた鎌田敏夫。演出は、俳優として存在感を放ちながら演出家としても数々の受賞歴をもつ千葉哲也。音楽は、これまでに200作品を越えるオリジナル・ミュージカルの作曲を手掛けてきた玉麻尚一。そして、振付にミュージカル俳優でありながら演出・振付などでも引く手あまたの本間憲一という名だたるスタッフ陣が集結。

 また出演に、舞台初挑戦となった『魔界転生』でもその存在感を遺憾なく発揮した渡辺大。本格的な舞台は初出演となるお笑いコンビ「パックンマックン」のパックン。若手実力派俳優の代表格とも言われる宮崎秋人。ミュージカル界をリードしてきた実力派の宮川浩が揃い、鎌田が23年前に手掛けた脚本を、DANCE ACTとして甦らせる。

 そんな作品で宝塚退団後初となる単独主演を飾る珠城りょうが、作品に臨む思いや、演じることへの情熱、新たに生まれた感覚などについて語ってくれた。

リアルな世界観の作品に惹かれて

珠城りょう=岩田えり 撮影拡大珠城りょう=岩田えり 撮影

──宝塚退団後の初単独主演という機会に、この作品に臨もうと思われた気持ちから教えていただけますか?

 ここ最近ではあまり取り上げられていない内容に惹かれたこともありますが、私自身がファンタジー性を持つ作品とはまた違った、リアルな世界観のお話が非常に好きで。この作品は自分がいいなと思う世界観の物語でしたから、お話を伺った時に是非やらせていただきたいと思いました。

──いま、ファンタジー性とおっしゃいましたが、もちろん決して簡単にひと括りにはできませんけれど、宝塚歌劇の作品にはやはりどこかにファンタジー性があるものが多いのかなと思いますが、そうした宝塚歌劇団でトップスターとして活躍した珠城さんのなかに、リアルな作品への関心もおありだったのですね。

 宝塚にいる時から演劇が大好きで。宝塚は基本的にはミュージカルに属する作品が多いですから、様々なカンパニーでやっている舞台を観ることは大変勉強になりましたし、そうした作品に接することで、宝塚の良さに気づける部分もたくさんありました。それと同時に自分が演劇、お芝居に取り組んでいて足りないものはなんなのか?ということを、素晴らしい役者さんたちが出ていらっしゃる演劇を観ることで、感じられるものがたくさんあったので絶えず観るようにしていました。

──ではいわゆるストレートプレイと呼ばれる、台詞劇などもよくご覧になっていたのですか?

 もちろんです。特に下級生の頃には時間があったので、蜷川幸雄さん、野田秀樹さん、長塚圭史さん、栗山民也さん、G2さん等々の演出の舞台を観に行っていましたし、「大人計画」やPARCOさんの舞台もたくさん拝見していました。

珠城りょう=岩田えり 撮影拡大珠城りょう=岩田えり 撮影

──錚々たる演出家の方々のお名前が並びましたが、そんな優れた舞台を観続けてきた珠城さんのアンテナに触れた、この作品の魅力はどんなところですか?

 第二次世界大戦直前の上海、フランス租界を舞台に様々な登場人物が出てくるのですが、皆がそれぞれの信念のもとに生きているんだ、ということを強く感じました。何が正しくて何が間違っているのか正直わからないと言いますか、ご覧になるお客様それぞれの価値観によって、観方も受け取り方も変わる作品なんじゃないかなと思うんです。ただ、私個人の感想としては「人間の価値って何なのだろう」という部分が一番響いてきて。地位や学歴といったわかりやすいもので人は評価できるのか、必ずしもそうではないということが、この作品を観るとお分かりいただけるんじゃないかと感じています。

 もちろんキャリアを持っているのは素晴らしいことですけれども、人間の価値というのは、決してそういうことだけで一概には言い切れないんじゃないか。この作品の中にはそうしたことがメッセージとしてたくさん散りばめられていて、私自身も非常に考えさせられましたし、色々な思いがめぐってきました。そういったところが、作品の魅力、奥深さなのではないかと思います。台本も24年前に初演された時と、基本的には大きな変化はないのですが、千葉さんが新しいアイディアをたくさん入れて下さって、今までにない作品が出来上がりそうな気がしています。

◆公演情報◆
PARCO PRODUCE 2023 『マヌエラ』
東京:2023年1月15日(日)~23日(月) 東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
大阪:2023年1月28日(土)~29日(日) 森ノ宮ピロティホール
福岡:2023年1月31日(火)  北九州芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:鎌田敏夫
演出:千葉哲也
音楽:玉麻尚一
振付:本間憲一
[出演]
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ ほか
〈珠城りょうプロフィル〉
 2008年に宝塚歌劇団に入団。月組に配属され、2010年、入団3年目で『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演初主演。2016年に入団9年目で月組トップスターに就任。近年では極めて異例のスピード出世となった。2021年8月に宝塚歌劇団を退団。退団後は、コンサートやドラマ、舞台『8人の女たち』に出演。また、2022年10月19日にオリジナルアルバム「Freely」、カバーアルバム「Shine」で、アルバムデビューを果たし、コンサートツアー「RYO TAMAKI LIVE TOUR 2022~Freely~」を開催。
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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