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宝塚退団後初主演舞台『マヌエラ』に臨む 珠城りょうインタビュー(下)

人が息づいている様を劇場で体感して欲しい

橘涼香 演劇ライター


珠城りょうインタビュー(上)

お客様の空気に緊張を解いてもらった

──今はまだ演出の千葉哲也さんとはお会いになっていないとお伺いしていますが(※取材は11月下旬)、多彩な共演者の方々も揃われていて、お稽古も白熱しそうですね。

 稽古に入るのを本当に楽しみにしています。俳優としての千葉さんは舞台でも拝見していて、素晴らしい役者さんだと思っていたので、俳優の視点もお持ちの千葉さんが、この作品をどう演出してくださるのかを考えるだけでワクワクしています。渡辺大さんとは今日初めてしっかりお話しさせていただけたのですが、物腰も柔らかく、どっしりと構えてくださっているので、良いステージをご一緒に作っていけるのではないかなと思いますし、ほかのキャストの皆さんもそれぞれ個性的で実力派の方々ばかりなので、どんな稽古になっていくのかが本当に楽しみです。

珠城りょう=岩田えり 撮影拡大珠城りょう=岩田えり 撮影

──宝塚退団後、コンサートや朗読劇、また映像など様々なご活動を展開されていますが、この期間を振り返って特に印象に残っていることは?

 今ちょうどライブツアーをさせていただいているのですが、歌を歌っている時に今までに感じたことのない感覚があったんです。自分の歌ってまだここから伸びるんじゃないか?という可能性を初めて感じられているのが幸せです。

──これまでには、そうした感覚はなかったのですか?

 いままでは歌って、表現として語弊があるかもしれませんが、点数をつけられるものだと思っていたんです。

珠城りょう=岩田えり 撮影拡大珠城りょう=岩田えり 撮影

──あぁ、それはちょっとお辛いですね。もちろんコンクールとか、試験などでは何某かの点数はつきますけれども、芸術って本来点数化できるものではありませんものね。

 エンターテインメントを純粋に楽しもう、としてくださる方ももちろんたくさんいらっしゃいますが、まずどんなものか評価しよう、という見巧者の方々も多くて、私自身がエンターテインメントの在り方について色々考えたりもしていたんです。でも今回、各地の会場に本当にありがたいことに温かいお客様がたくさん足を運んでくださって。もちろん最初は緊張もしましたが、歌詞に心をこめて歌い、それがダイレクトに皆様に伝わった時に「あぁ、こんな空気になるんだ」と、新鮮な感動があって。今回の秋のコンサートツアーは、ショーアップしたものではなくて、10月に出させていただいたオリジナルアルバム「Freely」、カバーアルバム「Shine」を掲げてのライブとして音楽に重点を置いてたので、本当に歌を頑張らなきゃいけないと思っていたんです。でも劇場のお客様の空気に緊張を解いていただいたと言う初めての経験をして。

──素敵ですね。

 すごく不思議な感覚でした。自分の声も自分でも知らない領域に少し進んでいると感じられたので、退団後ボイストレーニングはずっと継続してやっていたのですが、続けてきてよかったなと思えました。今回の『マヌエラ』でもカーテンコールで歌わせていただくそうなので、マヌエラの心情としてきちんとお届けしたいですし、頑張ればそれもできるかもしれないと、いう気持ちにいまなっています。

◆公演情報◆
PARCO PRODUCE 2023 『マヌエラ』
東京:2023年1月15日(日)~23日(月) 東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
大阪:2023年1月28日(土)~29日(日) 森ノ宮ピロティホール
福岡:2023年1月31日(火)  北九州芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:鎌田敏夫
演出:千葉哲也
音楽:玉麻尚一
振付:本間憲一
[出演]
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ ほか
〈珠城りょうプロフィル〉
 2008年に宝塚歌劇団に入団。月組に配属され、2010年、入団3年目で『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演初主演。2016年に入団9年目で月組トップスターに就任。近年では極めて異例のスピード出世となった。2021年8月に宝塚歌劇団を退団。退団後は、コンサートやドラマ、舞台『8人の女たち』に出演。また、2022年10月19日にオリジナルアルバム「Freely」、カバーアルバム「Shine」で、アルバムデビューを果たし、コンサートツアー「RYO TAMAKI LIVE TOUR 2022~Freely~」を開催。
オフィシャルサイト
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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