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ミュージカル『キングアーサー』主演の浦井健治に聞く(上)

新しい毛色のロック・ミュージカルを作っていけるはず

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 聖剣エクスカリバーを引き抜いた者が王になる――。イギリス・ケルトに伝わる有名なアーサー王の物語を描いたミュージカル『キングアーサー』が、浦井健治主演で2023年1月12日に開幕する(1月12日~2月5日 新国立劇場中劇場、2月11日~12日 群馬・高崎芸術劇場 大劇場、2月24日~26日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール、3月4日~5日 愛知・刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール)。

 本作は2015年にパリで初演。『1789 -バスティーユの恋人たち-』『太陽王』『ロックオペラ モーツァルト』『CASANOVA』などを手掛ける名作曲家、ドーヴ・アチア氏のフレンチロックが舞台を盛り上げるスペクタクルミュージカルとして上演され、幅広い観客の心をとらえた。

 日本では2016年に宝塚歌劇団月組が『アーサー王伝説』というタイトルで初上演。韓国では2019年に上演され、その年のライセンスミュージカル作品賞、観客賞を受賞し、2022年に再演。この韓国プロダクションの演出を担ったオ・ルピナ氏は、『デスノートTHE MUSICAL』韓国プロダクションに演出補として携わり、2020年には第4回韓国ミュージカルアワーズ演出賞を受賞するなど、今注目を集める新進気鋭のクリエイターで、『キングアーサー』日本版の演出も務める。

 真の王としての運命に立ち向かう主人公アーサーを演じる浦井健治に、ハードな舞台となりそうな大作への意気込み、敵対する騎士・メレアガンをダブルキャストで演じる伊礼彼方・加藤和樹との親交、意外な体づくりなど、さまざまな話を聞いた。

台本のト書きを見て「どれだけ戦うんだよ!」

浦井健治=竹田憲司 撮影
拡大浦井健治=竹田憲司 撮影

――ドーヴ・アチアさん作曲のミュージカルは、日本でも『1789 -バスティーユの恋人たち-』、『ロックオペラ モーツァルト』や、宝塚歌劇団月組による『アーサー王伝説』など上演されていますが、観客としてご覧になったことは?

 実際観たことは残念ながらないのですが、音楽は打ち込みの音もあり、格好良くキラキラしていてダンスが印象的な、10代20代の方も入り込みやすい世界ですよね。フランス版の『キングアーサー』は映像で拝見すると、“バック転!サーカス!”みたいに激しい動きで紡いでいく感じでしたが、韓国版はそこからの脱却を模索し、演劇寄りになっているように感じました。今回はオ・ルピナさん演出のもと、新たに日本バージョンとしてやらせていただくので、両方とも楽しめるような、お芝居の深みを感じる、新しい毛色のロック・ミュージカルを作っていけるのではと思っています。

――まだ本格的な稽古に入る前(取材は11月上旬)とのことですが、オ・ルピナさんとは何かお話をされましたか?

 制作発表会見の場でお会いしましたが、ゆっくりお話はできていなくて。ただ、僕が出演した『デスノートTHE MUSICAL』で、韓国版の『デスノート――』を演出(補)されるために、栗山民也さんのもとで作っていた日本版の稽古場を見学に来られたんです。その時「あなたは二面性を演じる魅力をすごく持っている」と言っていただき、役への励みになりました。役者に寄り添ってくださる気がしますし、諦めない演出をされるのかなと思います。

浦井健治=竹田憲司 撮影
拡大浦井健治=竹田憲司 撮影

――偉大な王が去った混沌とした時代に、魔術師マーリンに導かれるように伝説の剣、エクスカリバーを引き抜き、真の王として国の平和と幸せを目指すアーサー王。世界的に有名な物語ですが、今回の台本を読まれての印象は?

 “人間”が描かれているなと思いました。アーサーは聖剣を引き抜く前はすごく天真爛漫だけど、あっという間に王になった後は、常に周りの人たちから王権を狙われる。メレアガンは「(王位につけず)悔しい悔しい」と言い続け、忠誠を誓っていた臣下(ランスロット)が最愛の妃(グィネヴィア)を奪い……そこは純愛なのでしょうけど裏切りがあり、「人間の運命って何なんだろう」と思いますし、また、運命に歯向かったり、逆に従うというような、まっすぐにはいかない人生の教訓が含まれているなと。いい変化もあれば悪い変化もあり、それが人生で、それを謳歌することが人生の醍醐味なのかなと感じました。

――深いですね。

 また、ト書きには「どれだけ戦うんだよ!」というぐらい、「熱く剣を交える」と書かれていて (笑)。それこそ聖剣の物語ですし、円卓の騎士の動きはクローズアップされると思います。一方で王になったがゆえの苦悩や、民のための決断など、普通の市民だった青年のアーサーがどう変わっていったのか。周りの人がそれをどう受け入れたかなど、一人ひとりが粒だっていく群像劇だとも感じます。ショーアップされているけど、人間の機微が描かれ、お客様が感情移入しやすい部分が大きいのではないかと思います。

◆公演情報◆
ミュージカル『キングアーサー』
東京:2023年1月12日(木)~2月5日(日) 新国立劇場 中劇場
群馬:2023年2月11日(土・祝)~12日(日) 高崎芸術劇場 大劇場
兵庫:2023年2月24日(金)~26日(日) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
愛知:2023年3月4日(土)~5日(日) 刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
日本版台本・演出:オ・ルピナ
翻訳・訳詞:高橋亜子
[出演]
浦井健治、伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト・五十音順)、太田基裕/平間壮一 (Wキャスト・五十音順)、小南満佑子/宮澤佐江 (Wキャスト・五十音順)、小林亮太、東山光明
石川禅、安蘭けい ほか
〈浦井健治プロフィル〉
 2000年『仮面ライダークウガ』で俳優デビュー。ミュージカル、ストレートプレイ、映像作品と幅広いジャンルの作品に出演。2006年、第31回菊田一夫演劇賞、第44回紀伊國屋演劇賞個人賞と、第17回読売演劇大賞杉村春子賞を受賞。2015年に第22回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞<演劇部門>など数々の演劇賞を受賞。主な出演作品は、『ヘンリー六世』『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』『GHOST』『王家の紋章』『デスノート THE MUSICAL』など。2023年4月に『アルジャーノンに花束を』への出演が決まっている。
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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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