米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター
ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
悩み葛藤する青年たちをチームプレイで作っていく
――島健さんが手掛ける楽曲を聴くとダイナミックで壮大で、中川さんには讃美歌のようなナンバーもありましたね。
中川 音楽は何かを物語るわけです。今の時代を俯瞰して説明しているようなリアルなナンバーや、政治や自分の生い立ちなどを語るナンバー、ルネッサンスという誰もが自由に発言できて、誰もが新しい分野を作る担い手になっていく、時代が大きく変化していくというナンバーもあり、とても重厚感がある。日本語の美しさも島さんの音楽の中には感じられて。
でも美しさだけにとらわれると音楽に負けちゃうなと思ったんです。自分の中で内生する声を聞いて、キャッチボールさせていかなきゃいけない。そこで初めてその時代を生ききることができるのかなぁと。でも誰に対してキャッチボールするのか? 今それがやっていてすごく楽しいところでもあり、苦しいところです。
――中川さんが音楽に対して負けちゃうと思うのですね。
中川 製作発表で披露した曲は『誕生』という曲で、その後に『チェーザレ』というタイトル曲につながります。『チェーザレ』は、彼がどう考え、どう自分の未来が見えているのかと、走馬灯のように蘇る歌なんです。モノローグなんですけど、音楽が激しくて壮大なんですよ。それは内からくるものなんです。自分の中で何か理屈を作ることで、ようやくスタート地点の10歩手前までは立てた気になる。この曲とほかのナンバーが織り成していくことで、大河のように壮大で歴史ロマン的な作品のゴールが見えると思うんですよね。でも誰がこの歌の悲哀をキャッチしてくれるんだろうと。誰に対して、何に対してだろう……。きっと宇宙とつながっているんだとか色々考えますね。
橘 宇宙か。ああ、そういう感覚は何か分かります。でも歌にかんして、僕は分かることは少ないのですが、総じて印象的でいい曲ばかりだなと思い、歌っていて楽しいです。僕は歌わないパートも稽古場でずっと聴いていて、本当に素晴らしい曲が多いんですよね。何が強いんだろう? メロディかな? すごく心に残りますよね。ミュージカルは好きで、僕もたくさん観に行くんですけど、印象的な曲ってそんなにたくさんはないなというイメージがあって。今回の曲はどれもこれも強く心に残りますね。
――ミゲル役をするにあたり、歌い方は変えたりするのでしょうか。
橘 そもそも僕は歌い方がないので(笑)。生まれて、ヨチヨチ歩きの赤ん坊が歌の先生に指導してもらって、これから小学校に入学しますみたいな感じです。いかに、本番に向けてクオリティを上げて、皆さんに聴いてもらえるような歌にするのかが僕の一番の課題です。皆で一緒に歌うシーンもあるので、その流れに乗ると、やっぱり歌うっていいなと思いますね。稽古場で中川さんが本読みの時に、張り上げるような感じではなく、あえて流すように歌っているのを聴いて、それでもすごいなと思ったんです。本番になるともっとすごいんだろうと。幕が開けるのが本当に楽しみですね。
◆公演情報◆
ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
東京:2023年1月7日(土)~2月5日(日) 明治座
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[スタッフ]
原 作:惣領冬実『チェーザレ 破壊の創造者』(講談社「モーニング」所載)
原作監修:原基晶
脚本:荻田浩一
演出:小山ゆうな
音楽:島健
[出演]
中川晃教
橘ケンチ(EXILE)
[スクアドラ ヴェルデ] 山崎大輝 風間由次郎 近藤頌利 木戸邑弥(Wキャスト)
[スクアドラ ロッサ] 赤澤遼太郎 鍵本 輝 本田礼生 健人(Wキャスト)
藤岡正明/今拓哉 丘山晴己 横山だいすけ/岡幸二郎
別所哲也 ほか
〈中川晃教プロフィル〉
2001年「I Will Get Your Kiss」でデビュー。第34回日本有線大賞新人賞を受賞。翌年、ミュージカル『モーツァルト!』の主演に抜擢され、第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第10回読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞する。以降、その圧倒的な歌唱力と類い希な表現力で活躍の場を広げ、『キャンディード』『SHIROH』『エレンディラ』など、数々の舞台で主演を務める。2016年にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』のフランキー・ヴァリ役が話題となり、第24回読売演劇大賞最優秀男優賞、第42回菊田一夫演劇賞を受賞。
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〈橘ケンチプロフィル〉
2007年、二代目J Soul Brothersのメンバーに抜擢。2009年3月1日、EXILEにパフォーマーとして加入。2012年より、橘ケンチ、黒木啓司、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHIの5人から成る「THE SECOND from EXILE」(2016年に「EXILE THE SECOND」に改名)としても活動開始。2008年より、グループ活動のほか、舞台・ドラマを中心に役者として本格的に活動を始める。主な舞台出演作は、舞台『魍魎の匣』、舞台『幽劇』、舞台『歌姫』、舞台『熱海殺人事件 Battle Royal』、朗読劇『LOVE LETTERS』、舞台『レッド・クリフ-戦-』など。
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