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ミュージカル『ジキル&ハイド』製作発表レポート

石丸ジキルの集大成と柿澤ジキル初登場による5年ぶりの上演!

橘涼香 演劇ライター


 世界的なミュージカルのヒットメイカー、フランク・ワイルドホーン音楽による大ヒットミュージカル『ジキル&ハイド』が、2023年3月11日~28日東京・東京国際フォーラム ホールCで上演される(のち、4月8日~9日愛知・愛知芸術劇場 大ホール、4月15日~16日山形・やまぎん県民ホール、4月20日~23日大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演)。

 二重人格の代名詞ともなっているR.L.スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」をミュージカル化したこの作品は、2001年鹿賀丈史主演により日本初演され、2003年、2005年、2007年と立て続けに再演される人気ミュージカルとして定着。2012年に石丸幹二を新たなジキル役に迎えたニュー・プロダクションがスタートし、2016年、2018年と上演記録を重ねてきた。

 今回2023年の上演は、その歴史を紡いできた石丸ジキルが集大成の「最後の実験」に臨み有終の美を飾ることが発表され、ダブルキャストで「実験開始」を果たす柿澤勇人が新たなジキル/ハイドとして初登場するほか、ハイドと深く関わる娼婦ルーシーに2012年、2016年にジキルの婚約者エマを演じ、2008年にルーシーを演じた笹本玲奈の続投と、元宝塚雪組トップ娘役で、退団後もミュージカルで次々に大役を務めている真彩希帆のダブルキャスト。ジキルの婚約者エマ役に、これがグランドミュージカル初挑戦となるDream Amiと、近年ミュージカルの世界で数々のヒロイン役を含め経験を積み続けている桜井玲香という新鮮なダブルキャスト。ジキルの親友ジョン・アターソン役にミュージカル界に欠かせぬ存在の石井一孝と、劇団四季出身で柿澤とは劇団時代以来の共演となる上川一哉のいずれも初役によるダブルキャスト。更に、エマの父親ダンヴァース卿にやはり劇団四季出身で、多くの作品で活躍する栗原英雄が初挑戦する一方で、その秘書官のストライドを石丸ジキルの初演以来共に演じ続けている畠中洋と、多彩な顔触れが集結。ひとりの人間のなかにある「善」と「悪」が二つの人格に分離されていくことが生む、数奇な運命を描いていく。

 そんな作品の製作発表会見が都内で開かれ(2022年12月)、報道陣と一般オーディエンス100名が見守るなか、まず石丸幹二と柿澤勇人が、この作品の顔ともいうべき代表曲「時が来た」を、スペシャルヴァージョンとして、2人で歌う歌唱披露からスタートした。

石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影拡大石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影

 ダブルキャストの2人が舞台上でこの歌を共に歌う機会はなく、2人による「時が来た」はこの製作発表会見だけで実現する特別なもの。石丸がまず慣れ親しんだ馥郁とした声で歌い出し、柿澤がエネルギーを感じる伸びやかな声で歌い継ぐ。柿澤のソロパートでも歌詞を口ずさんでいた石丸と、歌いあう声はやがて重なり、『ジキル&ハイド』という作品にとってはもちろん、ミュージカルの世界でも指折りの名曲が豊かに流れ、場を盛り上げる力は絶大。最後のロングトーンが消えていったあと、ホッとしたのだろう駆け寄った柿澤を石丸が「よくやった!」と言わんばかりの満面の笑みで迎え入れ、手を取り合って舞台を降りていく姿がなんとも印象的だった。

石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影拡大石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影

そんな名曲のバトンをつなぐ2人の歌声の余韻が残るなか、壇上が整えられ、改めて石丸幹二、柿澤勇人、笹本玲奈、真彩希帆、Dream Ami、桜井玲香、石井一孝、上川一哉、畠中洋、栗原英雄、演出の山田和也が登壇。まずそれぞれから「意気込みを共に」という挨拶があった。

【登壇者挨拶】

長い生命力を持つ作品に携われた幸運に感謝

山田和也=橘涼香 撮影拡大山田和也=橘涼香 撮影

山田 今、上演の歴史を(司会が)おっしゃっていて、2001年からだったので、そうか準備を始めたのは20世紀だったんだなと思ってちょっとびっくりしたというか、歳を取るわけだなと思ったんですが、もう四半世紀ということです。長い生命力を持つ作品に携われたこと、その幸運にまず感謝しています。意気込みは、死なないように頑張ります(笑)。

石丸幹二=橘涼香 撮影拡大石丸幹二=橘涼香 撮影

石丸 今、山田先生もおっしゃっていましたけれども、四半世紀近くこの作品は日本で皆様の前で上演されております。私は2012年からジキル&ハイドとしてこの作品に関わって参りました。ひとつ前が2018年だったんですね。考えたら5年近く間が空いてるんですが、自分の意識の中ではついこの間のような気がします。それぐらいやはりインパクトのある作品で、この役をやるにあたっては非常に体力が必要だということを思い出しました。ですから今回も若い柿澤くんと一緒にこの役をやりますけれども、柿澤くんに負けないように、私も体力をつけて臨みたいと思っております。

柿澤勇人=橘涼香 撮影拡大柿澤勇人=橘涼香 撮影

柿澤 僕はこの作品の鹿賀丈史さんのバージョンを学生の頃に、そして劇団四季を退団した後、石丸さんのバージョンを拝見しております。日本が誇る大スターたちがやる役なんだなと思って観ていたので、まさかこんな若造の僕がやれるとは思っていませんでしたから、正直驚いております。ですが若輩者なりに一生懸命、がむしゃらに稽古をして、皆さんに刺激を受けながら、そして石丸さんの素敵なところ、良いいところをたくさん勉強させていただいて、盗ませてもらって、なんとか新しいジキル&ハイドを作れたらいいなと思っております。

笹本玲奈=橘涼香 撮影拡大笹本玲奈=橘涼香 撮影

笹本 私は2012年から石丸さんと一緒にこの作品に参加させていただきました。2回はヘンリーの婚約者であるエマ。そして前回から娼婦のルーシー役に替わって参加させていただいたのですが、二つの違う世界からヘンリーとハイドを見て、本当にこの作品に懸ける思いは、私の中で今までにないぐらい強く、大切な作品になってきました。私も石丸さんと一緒で最近本当に体力とか、健康が1番だなというのを感じていて。

石丸 まだ若いのに!

笹本 いえいえ、本当に人間健康であることが1番大事なんだなと思いますし、この作品は心もすごく疲れる作品なので、体と心を健康に保ちながら、新しいキャストの皆さんと一緒に、楽しくカンパニーとしてまとまっていけたらいいなと思っています。

真彩希帆=橘涼香 撮影拡大真彩希帆=橘涼香 撮影

真彩 『ジキル&ハイド』は私も子供の頃から知っている作品でもありますし、楽曲もたくさんの方に愛されて、歌われていて、その中でこのルーシー役を演じるということが、どんなに大変で大きなことなのかを、今朝目が覚めた瞬間から、もちろんその前からもなのですが、ずっと思っています。この作品が何故愛されているのかということを稽古中にしっかりと感じつつ、今日いらっしゃる皆さんもそうですし、稽古場からご一緒する皆さんからもたくさんのことを学んで、丁寧に積み木を組み立てていって、ルーシー役をしっかりと演じていきたいと思います。

Dream Ami=橘涼香 撮影拡大Dream Ami=橘涼香 撮影

Dream Ami 今回この『ジキル&ハイド』という作品に初参加させていただけること、本当に光栄に思っております。初参加ということで不安は残るところもあるのですけれども、この長年愛される作品と、超実力者の皆様方に囲まれて、私も今まで自分でも感じたことのない新しい自分を発見できるんじゃないかなと、今からすごくワクワクしております。そしてこの作品のファンの方もたくさんいらっしゃると思うので、そんな皆様にも納得していただけるエマを演じられるように精いっぱい頑張りたいと思います。

桜井玲香=橘涼香 撮影拡大桜井玲香=橘涼香 撮影

桜井 先ほど主演のお二方の歌唱を聞いて、遂に『ジキル&ハイド』の世界に浸る時が来たんだなと実感して感動していました。素晴らしいキャスト、スタッフの皆様とご一緒に、素晴らしい作品に携わらせていただけるということで、色々なものを吸収して学びながら、エマという力強くそして愛情深い女性を、しっかりと信念を持って演じられたらいいなと思います。精いっぱい頑張ります。

石井一孝=橘涼香 撮影拡大石井一孝=橘涼香 撮影

石井 僕はこの『ジキル&ハイド』という作品が昔から大好きで、それこそ2001年の日本の初演の前に、僕はレコードコレクターなので、コンセプト版のCDを海外から取り寄せて聞いていて。なんていい作品なんだろう、いつか出たいな、出させてもらえないかなとずっと思っていたんです。ジキルの実験室のフラスコ役でもいい(笑)と思っていたところ、人間の役をやらせていただけることになりまして、ジキルの親友のジョン・アターソンなんですが……問題がありましてですね。石丸さんの親友には見えると思うんです。問題はカッキー(柿澤の愛称)です。カッキーのおじさん役に見えないだろうかと(笑)いま、すごく心がキュッとなっているんですけれども、なんとか若々しさを存分に出して、カッキーの親友役に見えるように頑張りたいと思います。

上川一哉=橘涼香 撮影拡大上川一哉=橘涼香 撮影

上川 たくさんの方に愛され続けている『ジキル&ハイド』という作品に参加させていただけるのを本当に光栄に思っております。長年僕が憧れ続けてきた先輩方とご一緒できること、そして劇団四季時代以来、久しぶりに再会したカッキーと一緒にこうして共演できること、本当に嬉しく思っております。初参加なので全力で作品にぶつかっていこうと思います。

畠中洋=橘涼香 撮影拡大畠中洋=橘涼香 撮影

畠中 僕も2012年の石丸版の『ジキル&ハイド』からずっと、同じサイモン・ストライドを演じさせていただいております。今回4回目なんですが、大胆なキャスティングと言いますか、新たな息吹が入り込んで、また新しい進化した『ジキル&ハイド』をお届けできるんじゃないかなと、稽古に入るのが今から楽しみで仕方ありません。歌と芝居と音楽が一体となった1級のエンターテインメントだと思うので、どうぞ皆さん楽しみにしていてください。

栗原英雄=橘涼香 撮影拡大栗原英雄=橘涼香 撮影

栗原 意気込みはですね、ありません(笑)。意気込んでうまくいった試しがないので、リラックスして皆さんと芝居を作っていけたらと思います。ただ、「善と悪」というテーマがあって「善」というのが実は「悪」であり、「悪」と見えるものが「善」であるというところを追求して、この物語の時代と現代をうまくリンクさせて、みんなで作品を作っていけたらいいなと思っています。でも多分意気込んでいくんだと思います(笑)。ちょっと公共放送終わったばかりで(笑)これからこの世界に入っていくと思うので、皆さんよろしくお願いします。

【質疑応答】

『ジキル&ハイド』製作発表記者会見から=橘涼香 撮影拡大『ジキル&ハイド』製作発表記者会見から=橘涼香 撮影

 登壇者全員の挨拶に続いて、司会からの代表質問、そしてメディアからの質疑応答に引き継がれた。

──山田さん、石丸さんと柿澤さんにそれぞれ期待することは?

山田 歌詞を間違えないこと以外ですか?(笑)。

──はい、それも大事ですけれども(笑)。

山田 まあ期待も何も、もう期待以上のことを見せてくださる2人なので、こちらから期待というのもむしろおこがましいかなと。体力の続く限り、表現の果てまでいっていただくと嬉しいなと思っています。石丸さんとは4回目にご一緒する作品で、毎回稽古場で話題になるのは、石丸さんのセクシーさエロティックさを、どうやってお客様に届けるかということを、女性スタッフがすごく頭を悩ませているんです。なのでこの『ジキル&ハイド』史上、最もエロティックにやっていただけたらいいなと思っています。

──石丸さん、エロティックということですが。

石丸 どこを見せますかね?(笑)。まあ、いまおっしゃったように、どこまでも探求できる作品なんですよね。私も歳を重ねて、愛を重ねて、今の年齢だからできる、歳を取っても若いアプローチはできるので、そこに光を当てながら、ちょっと透かし入りのエロティックさというのはいかがでしょうか?

山田 素晴らしいですね。

石丸 紗幕1枚お願いします!

山田 (笑) そして実は柿澤さんとご一緒するのは初めてなので、柿澤さんのエロティックがどこに潜んでいるのか、僕にもまだ分からないんです。そのままのエロですか?

柿澤 そんなことは……。まぁ、でも否定はしないです(笑)。

山田 そういう日常の世界では見えないようなところが見えてくるところが、この作品の魅力だったりもするので、妖しいとか狂気とかエロティックだとか欲望などが、どう見えてくると面白いのかな、というところを楽しみにしています。

──キャストの皆様、現時点で楽しみにしていること、またご自身の課題だと感じることがありましたら教えてください。

石丸 そうですね。未だにコロナ禍ではあるのですが、それでもこの1年の間にできることがずいぶん増えてきました。今回もお客様との間に、まだマスクは必要かもしれませんけれども、より色々なものを届けられるようなパフォーマンスを、稽古場で、みんなでやりたいと思います。そのためには良い意味での密な交流をしたりとか、僕は4回目ではありますが再確認し、新たなメンバーと構築し、山田さんに「前回と違うね」と言ってもらえるようなものを作っていきたいと、自分の思いも兼ねて思っております。

柿澤 この役はいわゆる「善と悪」を分けた時に、どこまでいけるのかというのがあると思うんですね。それには正解もないと思いますし、どこまで深く自分なりに入り込んで腑に落ちるところで芝居ができるのか、というところが挑戦なのかなと思います。エロさ云々というのは自分ではちょっと分からないのですが、行くところまで行っちゃいたいなというふうに思っています。山田さんに「柿澤さん、それはやめて」と言われるぐらいまでやりたいなと思いますし、先輩の石丸さんの公演中のスケジュールはとんでもないことになっているので、石丸さんの前では「疲れた」というのはやめようかなと思っています。

石丸 ありがとうございます!

笹本 石丸さんがおっしゃったように、コロナ禍で共演している皆様とコミュニケーションを取る機会が以前に比べてすごく少なくなったんですよね。会話をする時もちょっと離れてしなければいけないし、ずっとマスクをしているから表情もよく分からないという中で、カンパニーとしての団結力を作っていくのが、どうしても難しくなってきた面があると思うんです。でもこういう作品だからこそ、信頼関係はすごく大事だと思いますし、きっとカッキーも、すごく作ってくるんだろうなと思うので、そういうところでちゃんと皆さんとコミュニケーションが取れるのを楽しみにしています。カッキーとは今違う作品でご一緒しているのですが、全く違う役どころなのでいったいどのように表現するのかが、本当に楽しみです。

Dream Ami 私は本当に右も左も分からない状態というか、今正直ここに自分が座らせていただいているのも何かちょっと上の空というか、校外学習に来たみたいな(笑)、なにかの見学に来たように思うくらい、自分がこれほどの皆様の中でちゃんとエマを演じられるのだろうかと不安に思うところも本当にあります。でもその分、とても心強い皆様に囲まれているということなので、ご迷惑をおかけしないように真摯に向き合うのみかなと。私は長年グループでやってきたこともありまして、みんなで何か一つのものを作り仕上げるということがとても好きで、楽しくて、そこにすごく喜びを感じるので、この作品を皆さんと一緒に完成させていけることら今からすごくワクワクしています。

真彩 いま、何を話そうかなと考えていたのですが、「真彩さん」と呼ばれた瞬間に飛んでしまって(笑)、自分がすごく緊張しているんだなと思いました。楽しみにしているのはフランク・ワイルドホーンさんの楽曲にチャレンジすることです。私は宝塚歌劇団に在団している時に、(トップ娘役としての)お披露目公演で楽曲を提供していただいて以来なので、エネルギーがものすごく必要な曲が多いということは自覚しております。ですから体力づくりをはじめ、音域などチャレンジすることがいっぱいあると思うので、そこは大先輩方に、ここでどうしたらこの歌の伸びが出せるのか、キープの仕方、筋力作り、声帯作りを稽古場から訊けるのではないかな、というのがとても楽しみです。

石丸 フランクに僕も言われたんだけどね、「肉食獣になれ」って。

真彩 え? どうしよう、私、野菜が好きなタイプなんです。

石丸 じゃあ、そこにお肉を交ぜることから始めてください!

真彩 そうですね、しっかりお肉を食べたいと思います。本当に筋肉が必要だと思うのでそこが楽しみです。ワクワクしています。

桜井 ただただ楽しめればいいかなと思います。『ジキル&ハイド』は重厚というか、お話もすごく大変なストーリーですし、ちょっと怖いなと正直思っていたのですが、先ほどまだそんなにたくさんはお話できていませんけれど、皆さんと控室でご一緒した時に、作品とは真逆で、皆さん朗らかで面白いユニークな会話をされていて、「なんて楽しいんだろう」と心が和んだので、その気持ちを継続して、苦しみながらも楽しい気持ちを大事にしてできたら、それだけで私はハッピーだなと思いました。

石井 昨日も石丸さん版のCDを全編最初からずって聞いていまして、なんていい曲だろうと。肉食獣のフランク・ワイルドホーンさんの作品には、石丸さんとご一緒した『SCARLET PINPARNELL』と、柿澤くんと一緒にやった『デスノート』と、今回が3作目ということで、僕はそもそもフランクの曲が大好きで。彼はミュージカル作家である前にポップス作家で、ロマンチックで、ヒットポイントの高いキャッチーなものを書く彼が、この作品で書いた曲はやはり、ミステリアスで、ダークでエロティック、大人っぽいんですよね。この大人っぽい楽曲にちゃんと浸りたいなと。そしてやはり彼のメロディーは難しいので、今までは一ファンとして「あぁいい曲だな」と聞いていたのですが、そこはきっちりと一音一音練習して、素晴らしい作品になるように、そのひとつになれるように頑張りたいと思います。

上川 色々出尽くしてあんまり言うことがないんですが(笑)本当にそうだな、そうだなと思いながら聞いていました。やっぱりこの『ジキル&ハイド』は歴史がとても長い作品なので、先輩方からいろんなお話を聞きながら、新たな『ジキル&ハイド』を作っていけたらな、というのが一番にありますので(笑)、本当に全力を出して頑張ります(なぜか笑いが止まらない様子)。

石井 そんなに笑う?(笑)

上川 何を言っているのか分からなくなって(笑)

──大丈夫です! 伝わっております。

畠中 もう4回目なので、前回とはまた違うアプローチをしていければいいなと思うし、今回メインキャストの方がみんなダブルキャストなので、もちろん役を通してですけれども、同じ芝居をしたくないなということを今考えおります。相手の目を見て、空気を感じて、台詞を聞いて、その時に役を通して感じたことを表現していければいいなと思っております。頑張ります。

栗原 今のところの課題は全部ですね。まだ始まってないんで。ただこの時代に生きた人々を生々しくリアルに、みんなと、いまここにいない方々とも全員で演じていくことによって、なぜジキルという人がそういう行動してしまったのか、が浮き彫りになっていくと思うので、より私たちも頑張って行かなければと思っています。楽しみは「初めまして」の方もいらっしゃるので、その人たちと作品のことを話したりしながらコミュニケーションを取っていきたいと思います。あとは親子関係を深めていきたいと思います。

石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影拡大石丸幹二(左)と柿澤勇人=橘涼香 撮影

──石丸さんと柿澤さん、お2人は劇団四季の出身で石丸さんが退団された2007年に柿澤さんが入団されたというご関係だと思いますが、当時柿澤さんは石丸さんについてどんな印象でいらっしゃいましたか? また石丸さんもし新人の頃の柿澤さんの印象があればお聞かせください。それから随分年月が経って、同じ役をやられるという今のお2人それぞれの印象も併せてお願します。

柿澤 僕は2007年に劇団四季に入団しました。当時まだ研究生です。研究生というのは名前を覚えてもらうためにゼッケンをつけながらレッスンするんですね。僕は47期で「47・柿澤勇人」という緑のゼッケンだったんです。朝は掃除から始まります。劇団内は結構広くて、僕はその日は「ライブラリー」、図書館といって、色々な資料、CD 、DVD、本などがいっぱいあるところを掃除していたら、石丸さんが現れたんです。で、ゆっくりそこでコーヒーをお飲みになってまして。「違いがわかる男の石丸さんって本当にいらっしゃるんだ!」と(笑)。僕は掃除をしながら「おはようございます」と言ったら、ニコッと返してくださって、めちゃくちゃカッコよくて優しい人なんだなと、僕の中ではもうずっと憧れの存在です。ただ作品はそれ以降一緒になったこともないですし、共演もないので今回すごく光栄で。もちろん当時の研究生、47期の僕は石丸さんと同じ役をやるなんて思ってもないですし、本当に掃除に一生懸命だったので、当時の柿澤に「お前、結構頑張ったな」と言ってあげたいですね。とはいえ頑張るのはこれからなので、一生懸命務めたいと思います。石丸さん覚えていないですよね?

石丸 僕、コーヒー飲んでた?

柿澤 飲んでましたよ!

石丸 一緒に掃除してなかった?

柿澤 なんでですか!? しないでしょう!(笑)

石丸 いやでも僕ね、柿澤くんという名前と、どんなことをする人かということは聞いてました。「身体能力に優れた期待の星が入ってきたよ」と伺っていて、どんな人なんだろうという思いで、きっと朝、探しにいったんだと思うよ!

柿澤 僕をですか!? そんなことないですよ!

石丸 まあでもそれぐらい、これからの四季を背負って立つ人が入ってきてるんだな、という思いで彼のことは注目していました。栗さん(栗原)、47期ってね、僕たちはもうちょっと桁は同じだけどね。

栗原 世代が二つぐらい上だからね。

石丸 ねぇ。だから感慨深いなと思いましたが。僕は2007年に四季を出ましたけれども、柿澤くんはその後目覚ましい活躍をされて、数々のキャラクターを演じ、そして今ここにやってきて、同じ役を一緒に大きくすることになっています。僕にないものをたくさん持っているので、柿澤勇人というまた新たな『ジキル&ハイド』が絶対にここで煌めくんだなと、山田さん期待してくださいよ。彼はさっきとことんまで行くと言っていましたから、とことんまで付き合ってあげてください。僕はなかなか稽古場に行けないかもしれないので、すみませんがよろしくお願いいたします!という関係です。

 和気藹々とした会見はここで時間となり、続いてフォットセッションが行われ、「石丸ジキル最後の実験」と「柿澤ジキル実験開始」が並び立つ、一期一会の上演に対する期待が高まる製作発表となっていた。

◆公演情報◆
ミュージカル『ジキル&ハイド』
東京:2023年3月11日(土)~28日(火) 東京国際フォーラム ホールC
名古屋:2023年4月8日(土)~9日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
山形:2023年4月15日(土)~16日(日) やまぎん県民ホール
大阪:2023年4月20日(木)~23日(日) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎
[出演]
石丸幹二、柿澤勇人(Wキャスト)、笹本玲奈、真彩希帆(Wキャスト)、Dream Ami、桜井玲香(Wキャスト)、石井一孝、上川一哉(Wキャスト)、畠中 洋、佐藤 誓、栗原英雄 ほか

筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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