寄り添うのは「健気に頑張る被害者」だから?
2023年01月11日
本土復帰から半世紀の2022年は、沖縄にさまざまな視線が向けられた。さて、明けて2023年の今年は? 沖縄在住の若き劇作家が「復帰51年」の現在地を考えます。
沖縄本土復帰50年を振り返って、というテーマでこのテキストを書きはじめてはみたものの、この大きすぎる題目に早速頭を抱えています。復帰50年とはなんだったのかなんて、簡単に言葉にすることはできないことは端っからわかっていたはずじゃないかと、このお話をいただいたときの自分自身にいま現在のわたしがぼやいています。
などと言ってばかりではいられないのでぼちぼちと話を進めていきますが、なのでとりあえず自己紹介ということでもないのですが、まずはじめに自分がどの立場からこのテキストを書いているかということを説明する必要があると思います。
わたしは沖縄在住の劇作家であり、小さな保育園の経営者です。33歳男性で、1歳の子どもの父親です。沖縄市知花という嘉手納基地にほど近いところで生まれ育ち、いまは宜野湾市真栄原という普天間基地まで徒歩圏内の地域に暮らしています。
昨年11月末から12月上旬にかけて、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ライカムで待っとく』という、わたしが脚本を担当した演劇作品が上演されました。それは沖縄本土復帰50年という節目に、沖縄在住者の立場から現在の沖縄そして日本を見つめた作品になることをめざして創作しました。それが達成されたかをわたし個人が独断で決定することはできませんが、観劇いただいた多くの方の声から強度のある作品として立ち上がったことは事実だと思っています。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『ライカムで待っとく』
作:兼島拓也、演出:田中麻衣子
出演:亀田佳明、前田一世、南里双六、蔵下穂波、小川ゲン、神田青、魏涼子、あめくみちこ
2022年11月30日~12月4日、KAAT神奈川芸術劇場中スタジオで上演された。
神奈川県で暮らす雑誌記者・浅野は、ひょんなことから1964年に宜野湾市で起きた米兵殺傷事件について取材することになり、しだいに沖縄の過去と現在が入り交じる世界にのみこまれてゆく。題名の「ライカム」は、かつて沖縄本島中部に置かれていた琉球米軍司令部(Ryukyu Command headquarters)。いまも地名として残り、2015年に近くの米軍施設跡地にオープンしたショッピングモールの名前にもなっている。
昨年は、演劇に限らず、また県内外問わず、沖縄に関する多くの作品がつくられ発表されました。否が応でも沖縄に注目が集まり、沖縄戦や米軍統治の歴史について、あるいはそこから現在に至るまでの日米と沖縄の関係について、いろいろな角度から振り返る機会となりました。
沖縄(という土地が持つ歴史や記憶)がメディアを通してどのように描かれてイメージとしての「沖縄」になっていくのか、ということを考え続けたのがわたしにとっての2022年でした、と、とりあえずはそれっぽいことを言うことができるかなと思います。
イメージとしての「沖縄」にわたしたち沖縄人は(あえて大きな主語で一般化した言い方をしますが)、ときに積極的に同化し、ときに強く反発しながら、そして同化や反発を方法として利用しながら、自らの立ち位置を探り利益を享受してきました。
それは今にはじまったことではなく、きっと琉球王朝時代でさえもそうだったのだろうと思います(そのときは「沖縄」ではないですが)。それはわたしたちが生きていくため、もっと俗っぽい言い方をすれば食っていくために、必要なふるまい方なのです。
でもややこしいのが、その「食うためのふるまい」はときに、自らの寿命を縮めてしまうリスクもある、ということです。でもそれが良いとか悪いとか、正しいとか正しくないとか、そういうふうに分別できるものでもなくて。いま目の前にある飢えをしのぐための策が将来の寿命を短くすることになる。そんなふうな究極の選択を、常に、そしてマイルドに迫られているのがわたしたち沖縄人なのです。
2022年にあまた表出された「沖縄」を、わたしたち沖縄人がどのように受け止めたのかというふうな語り方はここで一旦停止して、ここからはわたし個人としてどう受け止めたのかという話をしようと思います。
先述したようにわたしは劇作家で、KAATで上演する作品の執筆を抱えていたため、いろいろと参考にもなるかと2022年に発表された舞台や映画、ドキュメンタリーや書籍など、あるいは昨年以前に発表された既存の作品をいくつも受信していました。そしてそれらがどのように沖縄(「沖縄」)を描いているのかというのを見極めようとしました。
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