メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

システムとしてのお墓の限界──「守る人」の存在が不安定に

[22]お墓のあり方が多様化していく理由

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

お墓に入る人/お墓を守る人

 人が死んだら遺骨を納める「お墓」。ほとんどの人はその言葉から、「○○家」という家の名前が刻んである、縦に細長い長方形の石を思い浮かべるだろう。

 近年では、デザイン性の豊かな墓石が建立されたり、樹木葬でのように、これまでとは新しい形式のお墓がつくられたり、お墓の多様化が進んでいる。

 それでも、和型墓石と呼ばれる、縦長の石のお墓がまだまだ主流であることは変わらない。

 現代のお墓というものは、構造的には、遺骨を入れる小さな部屋(カロートと呼ばれる)と、その上に建てられている墓石から成り立っている。

KPG-Payless拡大KPG-Payless/Shutterstock.com

 これはそれぞれ、遺骨を入れて保管するという機能と、故人の「しるし」という機能がある。「しるし」の機能はさらに、故人を記録する、記念する、というメモリアル的機能と、故人に祈りを届ける、故人と対話する、という依り代的な機能に分けられる。

 これらのうち、お墓がお墓である所以は、依り代的な機能にある。

 保管の機能だけであれば倉庫で充分であり、メモリアル的機能だけであれば街角や家の庭に記念碑を建てればいい。そこに依り代的な機能が加わるから、石というモノが、お墓となり、手を合わせる対象となる。

 またお墓には、そこに入っている人(遺骨)と、それを守る人がいる。死者と生者と言ってもいい。

 お墓における主役は、もちろんお墓に入っている死者である。

 一方でお墓を使うのは、生者であり、遺された家族である。つまり、お墓は、それを守る人がいないと成り立たない。

 ところが、このお墓を守る人に、近年異変が起きているのだ。

 それは、お墓を守る人という存在が、極めて不安定になってきているということである。


筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

薄井秀夫の記事

もっと見る