お墓に入る人/お墓を守る人
人が死んだら遺骨を納める「お墓」。ほとんどの人はその言葉から、「○○家」という家の名前が刻んである、縦に細長い長方形の石を思い浮かべるだろう。
近年では、デザイン性の豊かな墓石が建立されたり、樹木葬でのように、これまでとは新しい形式のお墓がつくられたり、お墓の多様化が進んでいる。
それでも、和型墓石と呼ばれる、縦長の石のお墓がまだまだ主流であることは変わらない。
現代のお墓というものは、構造的には、遺骨を入れる小さな部屋(カロートと呼ばれる)と、その上に建てられている墓石から成り立っている。

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これはそれぞれ、遺骨を入れて保管するという機能と、故人の「しるし」という機能がある。「しるし」の機能はさらに、故人を記録する、記念する、というメモリアル的機能と、故人に祈りを届ける、故人と対話する、という依り代的な機能に分けられる。
これらのうち、お墓がお墓である所以は、依り代的な機能にある。
保管の機能だけであれば倉庫で充分であり、メモリアル的機能だけであれば街角や家の庭に記念碑を建てればいい。そこに依り代的な機能が加わるから、石というモノが、お墓となり、手を合わせる対象となる。
またお墓には、そこに入っている人(遺骨)と、それを守る人がいる。死者と生者と言ってもいい。
お墓における主役は、もちろんお墓に入っている死者である。
一方でお墓を使うのは、生者であり、遺された家族である。つまり、お墓は、それを守る人がいないと成り立たない。
ところが、このお墓を守る人に、近年異変が起きているのだ。
それは、お墓を守る人という存在が、極めて不安定になってきているということである。