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『ジキル&ハイド』に初登場!柿澤勇人に聞く(下)

大変さすら楽しめるんじゃないかな

橘涼香 演劇ライター


柿澤勇人に聞く(上)

僕の曲は疲れてなんぼだよと…

──また共演の方々も女性陣も含めて、新鮮な方達が多いですね。

 (笹本)玲奈ちゃんはいま舞台で一緒なのですが(※取材は11月下旬)、ほかの女性キャストの方々、玲奈ちゃんとダブルキャストのルーシー役の真彩希帆さん、エマのダブルキャストのDream Amiさんと桜井玲香さんとは「はじめまして」になります。でも皆さんの舞台を観たり、歌を聞いたりはしていて、とても素敵な才能豊かな方達だということは知っていますし、ジョン・アターソンのダブルキャストの石井一孝さんと上川一哉さんを含めて、今回は固定ではなくて、色々な組み合わせがあるんです。それはすごく大変なことでもあるのですが、その大変さすら楽しめるんじゃないかなという方々ですし、ご覧になるお客様には純粋に様々な組み合わせを楽しんでいただけると思います。上川さんとダンヴァース・カルー卿の栗原英雄さんも劇団四季の先輩ですから、共演できるのが楽しみですね。

柿澤勇人=宮川舞子 撮影
拡大柿澤勇人=宮川舞子 撮影

──本当にいまおっしゃってくださったように多彩な組み合わせがありますが、こういうダブルキャストが固定ではない形というのは、例えばお一人入れ替わっただけでも随分違うものですか?

 それは全然違いますね。ひとつの台詞の投げかけだけでも、ガラッと変わっていったりもしますから。それこそがライブの魅力だし、ダブルキャストを生の舞台でやっていくことの魅力なんじゃないかなと思います。

──先ほどもお話に出ましたが、フランク・ワイルドホーンの楽曲の魅力は歌われる側としてはどう感じられますか?

 ロックで、ポップで、1回聞けばおそらく鼻歌で歌えるんじゃないか、お客様も覚えられるメロディーがあるだろう、というくらいキャッチーな曲なんですよ。ただ、いざ舞台で歌うとなるとものすごくエネルギーを使って歌わないと歌えない。身体を使って引っ張りながら出さないといけないので、スタミナがいります。でもフランク自身が「それが正解だ」って言うんです。「疲れてなんぼだよ、僕の曲は。疲れさせるように書いているから」と(笑)。ですから、役者泣かせの楽曲でもありますが、だからこそ壮大だし、大きな魅力があるんだと思います。

演じることの根本は変わらない

柿澤勇人=宮川舞子 撮影
拡大柿澤勇人=宮川舞子 撮影

──本当にスケールの大きさが伝わります。そして先ほど石丸さんのスケジュールがとても大変だとお話くださいましたが、柿澤さんご自身もNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源実朝役で大変な話題を集められながら、舞台活動もなさっているというハードスケジュールですが、舞台作品と映像作品で、それぞれ演じることについて違いを感じる部分、また変わらないと思われる部分はありますか?

 一番の違いというと、舞台は1000人、2000人の方が入れる小屋の、3階席の1番後ろで観ている方にまで言葉を伝えなければいけないわけです。そうするためには、声も前に飛ばさなければいけないし、張らなければいけない。でも映像の場合は基本的な考え方として1対1なので、やっぱり1対2000なのか、1対1なのかとなった時には、表現が全然違います。映像はカメラが寄ってくれたりもしますから、まばたきひとつが意味を持ったりする、とても繊細なものなんだろうとは思っています。ただ、じゃあ根本的に違うのかと言ったらそうではなくて、演じるということの根っこは全く同じだと思います。台本の読み方ひとつにしても、舞台だからこう読む、映像だからこう、というようなことはないですし、役として、そのシーンとして、そのモーメントとしてどうなのか?という演じる上でのアプローチは変わらないですね。ですからあくまでも空間の違い、どこに伝えるのか?ということなので。

 舞台だったら立ち位置に距離を持たせることにも意味があるんです。シンメトリーなのか、アシンメトリーなのかで全く意味が違ってくるし見え方も変わってくる。でも映像はカメラの方が動いてくれるので、自分達役者同士も基本的に距離が近い。その変わり、さっきもまばたきと言いましたけれども、例えば僕が今、顔だけすっと上を向いて、そこに芝居の意味を自分ではこめたとしても、舞台だとなかなか伝わらないけれども、映像なら伝わります。意識するのはそういう違いですね。

柿澤勇人=宮川舞子 撮影
拡大柿澤勇人=宮川舞子 撮影

──ではそうした伝えるための方法論と言うのでしょうか、その違いを双方経験されていることは、ご自身にとってもプラスが大きい?

 そうですね。少なくとも自分ではそうだと思ってやっています。

◆公演情報◆
ミュージカル『ジキル&ハイド』
東京:2023年3月11日(土)~28日(火) 東京国際フォーラム ホールC
名古屋:2023年4月8日(土)~9日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
山形:2023年4月15日(土)~16日(日) やまぎん県民ホール
大阪:2023年4月20日(木)~23日(日) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎
[出演]
石丸幹二、柿澤勇人(Wキャスト)、笹本玲奈、真彩希帆(Wキャスト)、Dream Ami、桜井玲香(Wキャスト)、石井一孝、上川一哉(Wキャスト)、畠中 洋、佐藤 誓、栗原英雄 ほか
〈柿澤勇人プロフィル〉
 2007年に倍率100倍以上の難関を突破し劇団四季の養成所に入所。同年デビューし、翌年から立て続けに主演を務める。2009年末、更なる活動の場を求め同劇団を退団。近年の主な出演作品は、『ブラッド・ブラザーズ』、『スルース~探偵~』、『ハルシオン・デイズ2020』、『スクール・オブ・ロック』、『フランケンシュタイン』など。
オフィシャルファンクラブ
公式twitter

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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