さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
夢と現実が交差するハートウォーミング物語、鷹翔千空がバウ初主演に挑む
宙組公演バウ・ドリーミング『夢現(ゆめうつつ)の先に』が、1月5日、宝塚バウホールで初日を迎えました。
主演の鷹翔千空さんは101期生。大劇場公演では2度の新人公演主演を経験し、前回の大劇場公演『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』ではSWORDの1人・村山良樹を演じるなど、すっかり宙組の頼もしい中心スターの1人となりました。
そんな鷹翔さんがバウホール初主演で挑むのは、毎晩、悪夢にうなされる“僕”が夢の中で“彼”に出会い、友情と愛に支えられ成長していく物語。夢と現実を交差させながら幻想的に描くハートウォーミングな作品です。
作・演出は、これがデビュー作となる生駒怜子先生。バウホール公演らしく、下級生の一人一人にまでたくさんのセリフが用意され、フレッシュさもいっぱいでした。
ポスターの鷹翔さんは、とても不思議なスタイルです。まるで宇宙服のようで、SFチックな雰囲気もあって、どんな物語なのか想像もできません。幕開きはそんな鷹翔さんが黒ずくめの男たちに翻弄され、悪夢にうなされている様子が推察されるところから物語は始まりました。
――いつものように“僕”(鷹翔)は悪夢にうなされていた。ところがあの日突然 “彼”(亜音有星)が現れ、「明るい夢の世界へ行こう」と連れ出されてしまう。そこは光に満ちていて、陽気な人々や “彼”を慕う羊のメル(花菱りず)、メラ(澄風なぎ)、メロ(泉堂成)がいて、“僕”を歓迎してくれた。さらに、なんと“僕”がひそかに想いを寄せる“彼女”(山吹ひばり)もいたのだった――
“僕”はとにかくヘタレ。大好きな彼女にアプローチなど到底無理な、母性本能くすぐりキャラで、鷹翔さんにハマっています。鬼邪高校初代番長の面影はもうありません。そんな 奥手の“僕”が、周りの人々や羊たちにけしかけられて、少しずつ勇気を出していくのがたまらなく可愛い。“僕”が成長するにつれ、衣装が少しずつ軽くなっていくことで、あの複雑なデザインの正体もわかる気がしてきました。
鷹翔さんの素直な歌唱は、“僕”が心の奥に持つ深い闇や、彼女への想いをストレートに伝えてきます。夢の住人や羊と一緒に、思わずお客様も“僕”を応援してしまうのではないでしょうか。
◆公演情報◆
『夢現(ゆめうつつ)の先に』
2023年1月5日(木) ~21日(土) 宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:生駒怜子