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「舞いあがれ!」は口数少なめの佳作だから、脚本家はもう変えないで

矢部万紀子 コラムニスト

 舞(福原遥)がIWAKURAの営業担当になった。ハカタエアラインの内定を断り、亡き父(高橋克典)が残したネジ製造会社の再建に向けて本格始動だ。リーマンショックが連れてきた人生の大転機。うまくいきますように。そしてこのドラマを包む空気が、もう変わることがありませんように。

 というわけで朝ドラ「舞いあがれ!」だ。昨今の風潮にあらがうよい作品で、“佳作”という表現がふさわしいと思う。2022年の“傑作”ドラマ「エルピス」(カンテレ・フジテレビ系)のように「あらがうぞ!」とぐいぐい訴えかけるタイプではない。だけど「あらがってくれている」と癒やされる。支えているのは、ヒロイン舞をはじめとする口数少なめな登場人物たちだ。

「舞いあがれ!」の主人公を演じる福原遥さん拡大朝ドラ「舞いあがれ!」(NHK)の主人公を演じる福原遥さん

 朝ドラ界において、口数少なめヒロインは珍しいことではない。「べっぴんさん」(16年後期放送)もその一つだった。ヒロイン(芳根京子)は何かを語る時に「なんか、なんかな」と逡巡した。そこに注目はしたが、心引かれたわけではなかった。それが「舞いあがれ!」では、「口数少なめ」に激しく引かれる。なぜだろう。

 自分で自分を分析するに、世の中全体が当時よりずっと「口数多め」になっているからだと思う。論破したり暴露したりで名をあげる人はごく一部だとしても、SNSというものは結局、自分が「真ん中」にいることを「大声で」アピールする手段なのだ。そんな世の中に感じる苦さが、自分の中で増している。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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