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宙組25周年記念コンサート『明日へのエナジー』 姿月あさとインタビュー(上)

今やっと、宙組初代トップを引き受けた自分に「よくやったね」と言える

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 「無限に広がる宇宙に羽ばたいてほしい」という願いのもと、1998年に発足した宙組。2023年は宝塚歌劇団に5組目の宙組が誕生して25年目となる。これを記念し、Cosmos 25th Special Concert『明日へのエナジー』が、宝塚歌劇OGによって上演される(3月3日~6日 よみうり大手町ホール、3月11日~14日 宝塚バウホール)。

 中心となるのは、宙組初代トップスター・姿月あさと、宙組2代目トップスターで宙組発足時は2番手男役として活躍した和央ようか、発足時に宙組男役スターとして活躍後、星組トップスターに就任した湖月わたる、という宙組レジェンドの3人だ。

 表題の「明日へのエナジー」は、宙組お披露目公演のレビュー『シトラスの風』の終盤、宙組のほぼ全員が舞台上でパワフルに歌い踊った力強いナンバー。今や宙組の代名詞としてこの場面は受け継がれ、現宙組トップスター・真風涼帆のお披露目公演『シトラスの風-Sunrise-』(2018年)にも登場し、姿月はアドバイザーとして後輩をサポートした。

 企画制作協力としても『明日へのエナジー』に携わる姿月が、本作への意気込みや宙組発足時のこと、さらに2022年に35周年を迎えた彼女自身の活動についてなど、率直な想いを語ってくれた。

挑戦しなければ何も始まらない

姿月あさと=久保秀臣 撮影拡大姿月あさと=久保秀臣 撮影

――まず、宙組トップスターになられた当時のお話から伺えますか。

 私も含め、お客様も生徒の皆さんも宝塚歌劇団に5組目ができるとは思っていなかったと思います。(初代トップスターを)簡単にお引き受けしたわけではなく、やはり怖かったですが、誰かが一歩踏み出さなければ、という思いでした。

 (宙組の前に花組から)月組へ組替えをした時、トップが同期生の天海(祐希)だったんです。天海は研7(入団7年目)でトップになったのですが、それもまた異例でしたし、すごく大変だったと思います。その月組で、私は急に新人公演の主演やバウホール公演の主演を頂くようになり、立場が急に変わったんです。

――天海さんの後、久世星佳さん、真琴つばささんと月組トップが引き継がれていきましたね。

 真琴つばささんがトップになられた時、私は2番手の立場を宝塚の公演だけ務め、東京公演には出演していない状況での(宙組トップ就任の)お話で、これもまた異例な形でしたし、不思議な経験をしたなと思います。

――宙組お披露目公演『エクスカリバー ―美しき騎士たち―』の作・演出をされた小池修一郎さんは、当時のプログラムで宙組発足にあたり姿月さんの存在の大きさ、貢献について語ってらっしゃいましたよ。

 あの時、宝塚に65年ぶりの新しい組ができるということで、社会的なトピックとして新聞、雑誌など様々なメディアが取り上げてくださり、いろんな方に知っていただくことができましたし、宙組は皆さんで作り上げたものだと思っています。そして今、この『明日へのエナジー』の取材会に大勢の記者の方が来てくださり、興味を持ってくださっているということに、宙組の25年という月日を改めて実感しました。

姿月あさと=久保秀臣 撮影拡大姿月あさと=久保秀臣 撮影

――宙組は今ではすっかり宝塚の5組の一つとして定着し、大きな人気を得ています。

 宙組はよく「コーラスの宙組」と言われるみたいですね。私が宙組にいた時、大勢での場面が多く、みんなでよくお稽古していたのですが、歌の伝統やチームワークが称賛されているのは大変うれしいです。

 私はゼロ番(舞台センターの位置)というところに立たせていただきましたが、お芝居では兵士の役もお父さんの役も大事です。ちょうどサッカーワールドカップを見ていて、舞台と一緒だなと感じました。サッカーもゴールを決める選手だけではなく、全員に役割がありますよね。宙組のお披露目公演は組の全員で一歩踏み出したのですが、サッカーを見ていて同じような気持ちになりました。PK戦では蹴る人が自ら立候補すると知り、その勇気にも共感しました。挑戦しなければ何も始まらない――。私は「あなたがトップで良かったね」というお声と同じぐらい非難も浴びましたが、毎日とにかく、舞台の上で出来る限りのことをやり、お客様に認めていただくしかない、という思いでした。

――当時の宙組が受け入れられたと、ホッとした瞬間はありましたか?

 それは自分が宝塚を辞めた2000年5月7日です。自分なりの役目を終えられたかなと思い、少しホッとしました。私が宙組にいたのは、(宝塚に)在籍した15年のうち2年間だけだったのですが、自分の上に先輩のトップの方がいないなかで、組の人たちと道なき道を作ってきたという実感があります。

◆公演情報◆
Cosmos 25th Special Concert
『明日へのエナジー』
東京:2023年3月3日(金)~6日(月) よみうり大手町ホール
兵庫:2023年3月11日(土)~14日(火) 宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
構成・演出:岡田敬二(宝塚歌劇団)
[出演]
姿月あさと、和央ようか、湖月わたる
出雲綾、久路あかり、天羽珠紀、光海舞人、美月悠
〈姿月あさとプロフィル〉
 1987年に宝塚歌劇団入団。花組に配属される。1993年に月組に組替え。1998年、宙組の立ち上げメンバーに選ばれ、『エクスカリバー/シトラスの風』で初代トップスターに就任。『エリザベート』など数々の名作で主演を務める。2000年5月、『砂漠の黒薔薇/GLORIOUS!』で退団。退団後はヴォーカリストとして、多方面で活躍中。
オフィシャルサイト

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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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