宙組25周年記念コンサート『明日へのエナジー』 姿月あさとインタビュー(下)
大切な家族との別れを経て、「“未来”は遠いものではなく近いもの」
小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー

姿月あさとインタビュー(上)
宙組の現役の方にもぜひ観ていただきたい
――宙組25周年のスペシャルコンサート『明日へのエナジー』は、ロマンチック・レビューシリーズを長年手掛けられている宝塚歌劇団の演出家、岡田敬二さんが構成・演出をされるのですね。
はい、私が岡田先生にご一緒したいとお願いいたしました。宝塚へ伺い打合せをし、譜面を出したり、場面の細かい尺や着替え、出番について決めたりと、提案や相談をさせていただいています。

姿月あさと=久保秀臣 撮影
――どのような内容になりそうか教えていただけますか。
まず、宙組のお披露目公演『エクスカリバー』の「未来へ」という歌は盛り込みます。この曲は、コロナ禍で宝塚歌劇の公演がストップしてしまった時、生徒の皆さんがアンケートで「今歌いたい曲」を投票し選ばれた曲で、(観客のいない)宝塚大劇場の客席で、現役の皆さんで歌われたんです(2020年に放送された宝塚歌劇専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」の特別番組)。その映像を私も拝見しましたが、やはり歌詞が今の世の中にぴったりですし、現役の方もこの曲を大切に思い、「勇気をもらえる」「好き」と言ってくださることがとても誇らしいです。
――あの大合唱は感動的でした。コンサートではほかにどんな曲を?
私が宙組トップの時の作品、『エリザベート』や『激情』、ショーの作品からお届けします。また、宙組お披露目公演前の香港公演の場面や、和央さんがトップの時の『ミレニアム・チャレンジャー!』、湖月さんが専科の時に宙組に出演した場面の再現なども。2部では、退団後にソロとして活動してきた3人が、それぞれ今歌いたい曲をお送りします。私はオリジナル曲「夜明け」を歌わせていただきます。
――今回共演される和央ようかさん、湖月わたるさんの印象を改めて教えてください。
和央さんは私の1期下で宝塚音楽学校の頃からお付き合いがあります。入団後は雪組で若い時から新人公演や本公演で活躍なさっていて、湖月さんは星組で、同じように新人公演など活躍されていました。お2人とも私よりいろんな経験がおありだったので、とても頼りになりました。

姿月あさと=久保秀臣 撮影
――先ほど、『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』の楽屋で「また一緒にやりたいね」とお話されたとのことでしたが、3人が揃うと居心地がいい、などありますか?
このポスターの迫力でもわかりますように、3人とも大きく、かなりのジャンボちゃんなので(笑)、目線が合うというのがすごく心地いいです。今でこそ「大変だったね」「つらかったね」と笑って話せるのですが、当時は一緒にお食事やお茶にも行ったことがないぐらい忙しかったんです。このポスター撮影の後に、初めて3人でお食事へ行きました! 今やっと「あの時、こうだったね」とお話できるのが楽しいです。
――ご卒業後、3人は宝塚歌劇OGバージョンの『シカゴ』に2014年、2016年と出演され、ニューヨークにまで行かれましたね。
行きましたね! リンカーンセンターで何日間も公演させていただいて。女性だけで『シカゴ』をやったということも含め、すごいことをしたんだなと。現地のお客様もたくさんいらしてくださって。今回、この『シカゴ』の曲も歌います!
――それは楽しみです。『明日へのエナジー』には出雲綾さんなど、ほかにも元宙組のOGの方が出演されますね。今このメンバーで作る『明日へのエナジー』には、どのような意気込みがありますか。
当時と同じように飛んだり跳ねたりはできなくても、退団してからそれぞれいろいろな経験を重ねてきた今の私たちだからこそ、以前とはまた違う熱い想いも届けられると思います。お客様はもちろん、宙組の現役の方にもぜひ観ていただき、何かを感じ取ってほしいな、という気持ちがすごくあります。
35周年を迎えて感じること

姿月あさと=久保秀臣 撮影
――2022年は姿月さんにとって初舞台より35周年という節目の年でした。改めてこれまでのご活動を振り返られるといかがですか。
宝塚を退団してからいろんなジャンルの音楽に挑戦させていただき、いろんな方とお仕事できたことは自分の財産になっています。
――石井竜也さんや坂東玉三郎さんなど様々な方とご共演されてきました。
クリエイティブな総合演出をなさる方とも多く向き合ってきたので、舞台がどう見えるか俯瞰する姿勢など、とても刺激になりました。それが自分のソロコンサートやライブにも活かせています。
今は宝塚を辞めたらすぐコンサート、というのが皆さん当たり前のようなスタイルになっていますが、私が辞めた当時はまだそこまで定着していなかったと思います。私は宝塚を退団後すぐに、コンサートを全国でやる活動などから始めたのですが、その時も道なき道を歩んでいたのだなと感じます。
――姿月さんの公式サイトには「2000年 ソロヴォーカリストとして新たに出発」とありますね。「ソロヴォーカリスト」と名乗られていることへの想いは?
辞めてすぐの時は、例えばクラシックのオーケストラの中で歌いたいとか、サントリーホールで歌いたい、サッカーの大会で国歌斉唱をしたい、紅白歌合戦に出たいなど、歌手としての夢が大きくありました。そうしてソロとして活動するなか、秋元康さんに作詞していただいた「夜明け」という曲が生まれ、今まで12年間ずっと歌い続けています。少しずつでも、自分の名刺代わりに「こういう歌があります」と、このオリジナル曲をお伝えすることができればいいなと思います。
――先ほど『明日へのエナジー』の2部で歌われるとおっしゃった曲ですね。
はい。「夜明け」は歌うたびに私自身感じることが違いますし、秋元さんが書いてくださった歌詞が、今回の『明日へのエナジー』という作品にもぴったりくるのではないかなと。
◆公演情報◆
Cosmos 25th Special Concert
『明日へのエナジー』
東京:2023年3月3日(金)~6日(月) よみうり大手町ホール
兵庫:2023年3月11日(土)~14日(火) 宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
構成・演出:岡田敬二(宝塚歌劇団)
[出演]
姿月あさと、和央ようか、湖月わたる
出雲綾、久路あかり、天羽珠紀、光海舞人、美月悠
〈姿月あさとプロフィル〉
1987年に宝塚歌劇団入団。花組に配属される。1993年に月組に組替え。1998年、宙組の立ち上げメンバーに選ばれ、『エクスカリバー/シトラスの風』で初代トップスターに就任。『エリザベート』など数々の名作で主演を務める。2000年5月、『砂漠の黒薔薇/GLORIOUS!』で退団。退団後はヴォーカリストとして、多方面で活躍中。
★オフィシャルサイト
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