2023年02月07日
丸川珠代参議院議員のことを、何度も書いている。彼女を見ていると、「そうだよね」と思うからだ。「評価される女性って、こういう人だよね」と。誰の評価かというと、会社だったりなんだったりの組織で、構成しているのは圧倒的に男性。つまり「男社会」ということになる。そこで評価される術を彼女が体現しているから、彼女を見ると男社会の図々しさと分厚さを感じる。へこむ。へこみつつ、そんなこんなの残念さを書いてきた。
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さて、今回の丸川さん。昔の武勇伝が話題になった。2010年の民主党政権下、所得制限なしの「子ども手当」が参院厚生労働委員会で可決された時、1年生議員の彼女はこうヤジを飛ばした。「この愚か者めが! このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん!」。
それから13年。23年1月末の予算委員会で、当時の厚労大臣・長妻昭衆院議員(立憲民主党政調会長)が「とんでもない罵詈雑言」だったと訴えた。行き詰まった岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を言い出し、茂木敏充自民党幹事長は「児童手当の所得制限撤廃」を求めているなか、メディアは立憲民主党の「逆襲」と報じた。首相は「反省すべきものは反省しなければならない」と答弁した。
当の丸川さんは国会内を歩きながら、「反省すべきは、しっかり反省したいと思います」と言っていた。「反省はしてらっしゃるということでよろしいですか」と重ねる記者に、「さようでございます、反省しております」。殊勝そうに対応していた。
このニュースで、彼女が現在、自民党参議院幹事長代行だと知った。世耕弘成参院幹事長の記者会見に同席後、記者とやりとりしたのだそうだ。自民党ホームページで「役員」という所をクリックしたら、「参議院自由民主党」というカテゴリーがあり、その上から4番目が「幹事長代行」だった。下にはいっぱいの役職。丸川さん、相変わらず「評価」の一本道。
件のヤジについて、今回初めて考えてみた。「この愚か者めが!」の一言で勝負ありだったと思う。国会で女性議員(ほとんど野党)が何かを強く主張する(ヤジとは限らない)、そういう場面を思い浮かべる。与党の男性議員(圧倒的多数)は、判で押したように嘲笑している。「ヒステリックな女」とみなし、相手にしない証として笑う。女性の主張は素通りになる。
そこに「この愚か者めが!」だ。「武士ですか?」な非日常語を使うことで、「ヒステリック」という反応を封じる。それも女性による“武士言葉”だから、今でいう「ギャップ萌え」の効果もあったろう。どこまで計算したかはわからない。が、インパクト大だったから、野党自民党の男性たちは喜んだ。はしゃいでTシャツまで作った。丸川さん、これで完全に「ういやつ」という党内の地位を確立した。と思う。
以後は楽勝で歩いたはずだ。12年に与党に復帰してからずっと「安倍一強」だったから、単純に「トップ=ブラボー」で事足りる。保守層の方を向きまくっているトップだから、自ずと右側通行になる。丸川さんに限らない。高市早苗さんも杉田水脈さんも、程度や歩く作法は違っても、みんなそっちを歩いている。
それでも、もし安倍一強でなかったら、党内に安倍氏と違う思想の対抗勢力があったら、彼女の実力がどう発揮されたかと想像しなくもない。が、さほど変わらなかったろうなと思う。褒められるとうれしい。そこにためらいがない。丸川さんはそういう人なのだ。
と認定したのは、2018年3月27日だった。2期目の彼女は参院予算委員会の証人喚問で質問した。証人は財務省理財局長だった佐川宣寿氏。森友事件の主たるプレイヤー。3週間前、財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自死していた。そのつらい出来事も踏まえ、佐川氏を改ざんに動かしたのは安倍氏(と妻の昭恵さん)と見ている人が多かったと思う。
そこで丸川さん、
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