「ういやつ」という党内の地位を確立
件のヤジについて、今回初めて考えてみた。「この愚か者めが!」の一言で勝負ありだったと思う。国会で女性議員(ほとんど野党)が何かを強く主張する(ヤジとは限らない)、そういう場面を思い浮かべる。与党の男性議員(圧倒的多数)は、判で押したように嘲笑している。「ヒステリックな女」とみなし、相手にしない証として笑う。女性の主張は素通りになる。
そこに「この愚か者めが!」だ。「武士ですか?」な非日常語を使うことで、「ヒステリック」という反応を封じる。それも女性による“武士言葉”だから、今でいう「ギャップ萌え」の効果もあったろう。どこまで計算したかはわからない。が、インパクト大だったから、野党自民党の男性たちは喜んだ。はしゃいでTシャツまで作った。丸川さん、これで完全に「ういやつ」という党内の地位を確立した。と思う。
「安倍=ブラボー」ぶりを発揮したころ

参院選で3選を果たした丸川珠代氏と安倍晋三首相(当時)=2019年7月21日
以後は楽勝で歩いたはずだ。12年に与党に復帰してからずっと「安倍一強」だったから、単純に「トップ=ブラボー」で事足りる。保守層の方を向きまくっているトップだから、自ずと右側通行になる。丸川さんに限らない。高市早苗さんも杉田水脈さんも、程度や歩く作法は違っても、みんなそっちを歩いている。
それでも、もし安倍一強でなかったら、党内に安倍氏と違う思想の対抗勢力があったら、彼女の実力がどう発揮されたかと想像しなくもない。が、さほど変わらなかったろうなと思う。褒められるとうれしい。そこにためらいがない。丸川さんはそういう人なのだ。
と認定したのは、2018年3月27日だった。2期目の彼女は参院予算委員会の証人喚問で質問した。証人は財務省理財局長だった佐川宣寿氏。森友事件の主たるプレイヤー。3週間前、財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自死していた。そのつらい出来事も踏まえ、佐川氏を改ざんに動かしたのは安倍氏(と妻の昭恵さん)と見ている人が多かったと思う。
そこで丸川さん、
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