さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
“知的なツンデレ”月城かなとが学問の神様・菅原道真となって怪事件を解決!?
月組公演、平安朝クライム『応天の門』-若き日の菅原道真の事-、『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』が、2月4日、宝塚大劇場で初日を迎えました。原作は灰原薬氏による人気コミックスで、学問の神様・菅原道真と、平成の色男・在原業平がタッグを組んで、怪事件を解決していく歴史サスペンスです。2017年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞、現在も連載中の作品であることも話題となりました。
主演の月組トップスター月城かなとさんが演じるのは、幼い頃から秀才と誉れ高き菅原道真。人並外れた優秀さと、徹底したクールなキャラクターの中にものぞく優しさの“ツンデレ”具合が月城さんのイメージと重なって、まるでアテガキのようです。道真のバディとなる業平には鳳月杏さん。稀代のプレイボーイ設定がこれまたピッタリです。トップ娘役の海乃美月さんは、唐渡りの品を扱う店の女主人・昭姫。きっぷのいい姉御肌が、月組トップコンビの雰囲気にもよく合っていました。
ショーはラテングルーヴ『Deep Sea-海神たちのカルナバル-』。今年の寒さを一気に吹き飛ばす熱いショーとともに、月組生の魅力もフルパワーで弾けています。(以後、ネタバレあります)
――時は平安の始め。京の都では、月の子(ね)の日の夜に鬼たちが大路を闊歩し、その姿を見たものを取り殺すという「百鬼夜行」が頻発していた。そんな夜、在原業平(鳳月)が人目を忍んで屋敷へ帰る途中、門の上で書物を読む風変わりな青年・菅原道真(月城)と出会う。道真はいきなり、業平が六条の姫との逢瀬帰りであることを見抜き、驚かせるのだった――
道真と業平の出会いのシーンが印象的です。大きな満月を背に、門の上で書物を読む平安スタイルの月城さんの美しさはたとえようもなく美しい。プログラムの表紙をめくったところにもこのショットが掲載されていて、感動が何度でもよみがえります。宝塚歌劇の平安スタイルは足元がブーツで現代風メイク。スタイリッシュなアレンジで、独特の雅な美しさが堪能できるのもうれしいですね。
道真は、帝の侍読をつとめる菅原是善の3男。文章生(もんじょうしょう)と呼ばれる学生でしたが、凡庸な貴族の子弟たちとは学ぶのは無意義と、もっぱら屋敷に引きこもって書物を読みあさっていました。あたたかな情や笑顔はなく、ひたすらクール。原作での道真のチャームポイント(?)は、その冷めた三白眼ですが、端正なマスクの月城さんに冷たい演技スイッチが入るとカッコよさにすごみが増すので、再現度も抜群です。
やっかいごとには巻き込まれたくないと思いつつも、優しさをのぞかせるツンデレ具合が月城さんの雰囲気によく合っています。次々と謎を明かしていく様子は、まさに名探偵のようで痛快。原作での少年感を大人の色気に変換し、宝塚らしくアレンジしながら独特のキャラクターを作り上げていました。
◆公演情報◆
『応天の門』-若き日の菅原道真の事-
『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』
2023年2月4日(土)~3月6日(月) 宝塚大劇場
2023年3月25日(土)~4月30日(日)東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『応天の門』
原作:灰原薬「応天の門」(新潮社バンチコミックス刊)
脚本・演出:田渕大輔
『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』
作・演出:稲葉太地