膨張・巨大化する陰謀論の刃から国民の安全を守ってほしい
2023年02月13日
前回の記事「Colabo叩きのネット右派、根拠弱く不正を訴える姿はまるでQアノン」に続き、反Colabo運動について取り上げます。
前稿では、家庭等に居場所がなく困難を抱える若い女性を支援する一般社団法人Colabo(コラボ)を攻撃する運動の主体は「女性蔑視表現クラスタ」と「性売買クラスタ」という2つのネット右派であり、根拠に乏しいままColaboの活動を「不正」だと主張している点は、アメリカやブラジルの議会襲撃事件と類似性があると指摘しました。
Colabo叩きのネット右派、根拠弱く不正を訴える姿はまるでQアノン
今回は、一連の反Colabo運動が「サイバージェンダーバックラッシュ」であるということを論証したいと思います。
反Colabo運動がネットから雑誌メディア等に至るまで右派界隈を席巻しています。彼らがColaboバッシングに参加する目的はジェンダーバックラッシュという政治運動として効果的だと考えているからでしょう。
前稿で述べたように、彼らはColaboの会計の問題をやり玉にあげてはいるものの、それは「おためごかし」に過ぎません。というのも、もし本当に「公金を投入している委託先の会計を正しくチェックしなければならない」のであれば、電通やパソナをはじめ、国や地方自治体から委託を受けたあらゆる法人について、同レベルの調査を求めていいはずです。
とりわけ、パソナの再委託先による約10億円の過大請求(水増しした虚偽の報告)という本物の公金不正受給問題が発覚していますし、まずは「委託の金額が大きい組織」や「自身や関連組織に法令・契約違反の疑惑が実際に浮上している組織」「内部告発が出ている組織」等からチェックをするよう求めるのが自然ではないでしょうか。
その上で、「委託先に対する国や自治体のコントロールが甘い」と、制度的な問題点を主張するなら分かりますが、Colaboや若年被害女性等支援事業にのみ矛先を向けている時点で、目的が別にあるのではないかと思われても致し方ないでしょう。
彼らの目的はやはりジェンダーバックラッシュであり、日本のフェミニズム運動やそのキーパーソンである仁藤夢乃氏(Colabo代表)の影響力を削ぐことではないでしょうか。実際に、反Colabo運動は、現在政府が制定を目指し、仁藤氏も有識者会議に参加している「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針」へとターゲットを拡大させています。
また、「男女共同参画予算を削れ」「女性支援ではなく別(たとえば自衛隊)に公金を使うべきだ」といった主張もしています。性売買クラスタによるAV新法改正運動や、性犯罪をめぐる刑法見直しへの反対運動等とも連動しています。
このように、様々な面において「ジェンダー平等に逆行する政治的な動き」を展開していることから、かつて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)や安倍晋三氏らが起こしたとされるバックラッシュに代わり得る、ネット発祥の新しい「サイバージェンダーバックラッシュ」だろうと思うのです。韓国における女性家族省廃止の動きとも類似性があるように見えます。
一方で、旧統一教会のジェンダーバックラッシュとは異なる特徴があります。それが、「露出志向」と「過激性」です。旧統一教会は水面下に潜って権力者・有力者にアプローチする傾向がありましたが、反Colabo運動はSNSやメディアを駆使して大々的な露出を試みています。
また、リーダーによって統率された組織運動ではないためか、Colaboがカフェとして使用しているバスへの傷つけや、迷惑系YouTuberによる妨害行為等、一部が過激化しやすいのもその特徴でしょう。ただし、それは反Colabo運動に限らず、主体である「女性蔑視表現クラスタ」が備え持った性質だと思います。
というのも、同様の過激な攻撃は日頃から頻繁に発生しているからです。たとえば、2022年11月、前衆議院議員の尾辻かな子氏が、JR大阪駅構内のゲーム広告を批判した際も、「殺す」などと脅迫するメッセージが複数回送られてきたそうです(「SNSでジェンダー問題発信 声上げる女性へやまぬ攻撃 ゆがむ日本」 毎日新聞、2023年1月16日)。
私自身も「論座」では「おっぱい募金」「志布志市のウナ子CM」「壇蜜の宮城PR動画」「HKT48の歌詞、頭からっぽでいい」等と、女性差別・女性蔑視の広告・表現について多数の批判をしてきましたが、その都度彼らによって「反論」の度を超えた誹謗中傷を多々受けてきましたし、殺害予告の脅迫をされたこともあります。
「おっぱい募金」を許して良いのか?(上)
志布志うなぎ少女CMで見えた差別の根深さ(上)
壇蜜の宮城PR動画炎上とグヘグヘエロ蔓延の理由
HKT48「頭からっぽでいい」の罪(上)
ここまで過激な例をあげましたが、このバックラッシュに参加しているのは、必ずしもそのような過激な匿名アカウントとは限らず、知的階層の人々も多数います。
「不正をしている」というシナリオを信じるのは、陰謀論者でなくても誰しも陥りかねない落とし穴ですから、陰謀論者とそうではない人の境界はあいまいです。また、陰謀論に基づいたデマやバッシングに対する拒否感よりも、「被害に遭っている側の人間のほうが気に食わない」という感情を優先させた結果、バックラッシュに加担する人もいます。
たとえば、普段はファクト確認の重要性を訴えている研究者や医療系のインフルエンサーの中に
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