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校條拳太朗が語る『七人のおたくcult seven THE STAGE』!(下)

「おたく」たちが団結していく迫力を伝えられるのが舞台ならでは

橘涼香 演劇ライター


校條拳太朗が語る『七人のおたくcult seven THE STAGE』!(上)

「陽のおたく」か「陰のおたく」かによって受け答えも変わっていく

──映画だから簡単にできたことも、舞台で目の前で人が演じるのには難しかったりする部分もあるのかな?と思いますが、だからこそこれは舞台にしか出せない魅力だなと感じるところはありますか?

 この作品って、「おたく」がそれぞれ熱中しているものに対する愛情だったり、とことん追求していく熱量がすごいんですね。そういう熱さをもっている人たちが、ひとつのミッション、目標に向かって団結して、ついに達成する物語なので、それぞれの熱量もそうだし、はじめはバラバラだった「おたく」たちが団結していく、目の前でどんどん変化していく過程の迫力がじかに伝えられるのが、舞台ならではのものになるんじゃないかなと思います。特に僕も原作映画を拝見してとても面白かったんですが、30年前の状況を舞台でいまの時代にやることによって、今を生きるお客様も、楽しみながら笑いながら見られるところが結構あるんじゃないかなと。

校條拳太朗=森好弘 撮影拡大校條拳太朗=森好弘 撮影

──ある意味身につまされずに、ワンクッションおけるということでしょうか?

 そうです、そうです! そのちょっと気楽に笑えるというのも、すごく楽しんでいただけるところだと思います。

──そんな作品を演出される元吉庸泰さんのお稽古の進め方や、演出スタイルはどんなものですか?

 僕はA型なせいか、すごく細かいことを気にしたりするんですよ。台本を読んでいても考え出したらきりがないというくらい、どんどん「ここはどういう意味?」「ここは?」と気になっていってしまうので、自分の中である程度線引きをしているんですね。あまり自分だけで考えようとせずに、現場で相談して役を作っていこうと意識していて。でも元吉さんってものすごく細かいところまで、本当に緻密に考えていらっしゃるので、僕が疑問に思うよりも前に元吉さんが「ここがこういう風になっている理由はこうです」と説明をしてくれるので、僕としてはとてもありがたい稽古場で、さっきも言いましたが、すごく集中して演じられているなぁと思います。

──それは素晴らしいですね。

 そうなんです。あと元吉さんがご自身でおっしゃったんですけど、「自分もおたくだった」ということで「おたくとは何ぞや」という話を結構してくださるんです。それが役者たち全員にとって大きなヒントになっていますし、元吉さんの作品をこうしていきたいという輪郭がしっかりされているので、僕らも安心してついていける、迷いなく作品に臨めています。

校條拳太朗=森好弘 撮影拡大校條拳太朗=森好弘 撮影

──そんな元吉さんからかけられた言葉で、直接校條さんにではなく、全体にでも構わないのですが、印象に残っているものはありますか?

 元吉さんってすごくたくさん話される方で、素敵な情報をどんどん話してくださるので、「なるほど」と思うこととかいっぱいあるんですが、この時代の「おたく」に対しても細かく掘り下げていらして。「おたく」だということがわかると、それがそのままいじめの対象になってしまったりもしていた時代の物語だけど、同じ「おたく」でもずっといじめにあう人と、その標的をかわせる人とがいたそうなんです。それはやっぱり「おたくだろう?」「はい」というひとつの受け答えだけにしても、「そうですか、それがなにか?」という態度で答えられる人と、「そうなんです、ごめんなさい。ごめんなさい」って、自分から引きこもってしまう人に分かれていたっていうんですね。元吉さんは「陽のおたくと陰のおたく」って表現されるんですけど。

──あっ! それはわかるような気がします。

 だから今回の作品にもたくさんの「おたく」が出てきますし、台詞としては何も変わらないんですが、自分が陽のおたくなのか、陰のおたくなのかによって言い方が全く変わってくるからと言ってくださって。それは僕たち役者にもすごく大きなヒントになりましたし、お客様に如何に伝えるか?というところでも、本当に細かいことまで考えて理解されているんだなと思いました。

◆公演情報◆
『七人のおたくcult seven THE STAGE』
東京:2023年3月4日(土)〜12日(日) 紀伊国屋サザンシアター
大阪:2023年3月18日(土)~19日(日) サンケイホールブリーゼ
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:一色伸幸
脚本:モラル・池亀三太
演出:元吉庸泰
[出演]
格闘技おたく・近藤みのる役…林翔太
ミリタリーおたく・星亨役…栗山航
パソコンおたく・田川孝役…校條拳太朗
アイドル&車改造おたく・国城春夫役…矢部昌暉(DISH//)
レジャーおたく・湯川りさ役…藤岡沙也香
無線おたく・水上令子役…諸橋沙夏(=LOVE)
喜一の母・ティナ…石田千穂(STU48)
劇中アイドル・藤堂のぞみ…後藤紗亜弥
フィギュアおたく・丹波達夫役…なだぎ武
島の有力者・高松一役…松尾貴史
ほか
〈校條拳太朗プロフィル〉
 中学生時代に独学でダンスを始め、面白さにのめり込み大会などに出場。アクロバット・ブレイク・アニメーションを特技とする。地元でのスーツアクターの経験を経て、2013年に舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇~眠れる直線鬼~で俳優デビュー。近年の主な舞台出演作は、『新選組始末記』、『Little Fandango』、『無人島に生きる十六人』、『ぼくらの七日間戦争 2022』、『宇宙戦艦ティラミス』シリーズなど。4月にホチキス第46回本公演『播磨谷ムーンショット』への出演が決まっている。
公式ホームページ
公式twitter

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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