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必見! サッシャ・ギトリ特集(下)──傑作、逸品、問答無用の面白さ

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 今回は前回記した、サッシャ・ギトリのプロフィール、および代表作『とらんぷ譚』評をふまえて、傑作4本を短く論評したのち、そのほかの逸品についても寸評したい。

■『夢を見ましょう』(1936)
 不倫というギトリ好みの主題を軽妙洒脱に描く艶笑譚(セックス喜劇)の傑作だが、弁護士の独身男(サッシャ・ギトリ)が、自宅に招いた友人の妻(ジャクリーヌ・ドゥリュバック)を待つあいだに朗々と述べる、頓智(とんち)の利いた15分間の(!)モノローグに聞き惚れる。

サッシャ・ギトリ監督拡大サッシャ・ギトリ監督・主演『夢を見ましょう』=提供・シネマヴェーラ渋谷

 なお本作は、ギトリの代表的な戯曲の映画化だが、カメラのクイック・パン(素早い首振り)などの撮影技法ゆえ、演劇臭をいささかも感じさせない。かつてギトリの映画に対してなされた、“撮影された演劇にすぎない”という批判がいかに的外れであるかは、これ1本を見ただけで一目瞭然だ。<星取り評:★★★★★+★、以下の作品も同>


筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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