ペリー荻野(ぺりー・おぎの) 時代劇研究家
1962年、愛知県生まれ。大学在学中よりラジオパーソナリティを務め、コラムを書き始める。時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」のプロデュースや、「チョンマゲ愛好女子部」を立ち上げるなど時代劇関連の企画も手がける。著書に『テレビの荒野を歩いた人たち』『バトル式歴史偉人伝』(ともに新潮社)など多数。『時代劇を見れば、日本史はかなり理解できる(仮)』(共著、徳間書店)が刊行予定
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ドラマに対する向き合い方の二極分化
90年代後半以降、筆者は2時間ドラマ関係者に取材してきたが、その中で、興味深かったのは、2時間ドラマの特徴についての話だ。
たとえば、「土曜ワイド劇場」は、週末の放送ということで娯楽色が特に強い。名探偵明智小五郎が、顔面の変装をべりべりとはがす場面でも知られる「江戸川乱歩の美女シリーズ」(天知茂・北大路欣也・西郷輝彦主演)や温泉ギャルズと呼ばれる女性たちのヌードも定番だった「混浴露天風呂連続殺人シリーズ」(古谷一行・木の実ナナ主演)、高橋英樹の船長シリーズ(高橋英樹主演)、「タクシードライバーの推理日誌シリーズ」(渡瀬恒彦主演)など、男性主役のシリーズが多いのも特徴だ。
また、娯楽の中心が映画からテレビへと移った時期に始まったため、映画出身の監督が参加。映画「眠狂四郎」や必殺シリーズでも知られる田中徳三監督の「京都殺人案内」(藤田まこと主演)や前述した「終着駅シリーズ」のファイナルを93歳で撮った池広一夫監督など、演出家の味わいを感じさせるシリーズも多い。奇怪な事件の犯人が妖怪!? という奇抜すぎる設定で、今も語り草になっている「京都妖怪地図」シリーズの「京都妖怪地図 嵯峨野に生きる900歳の新妻」などを演出した田中監督からは、「いかに観ている人を楽しませるか、驚かせるか。それがすべて」と聞いた。
「土曜ワイド」のライバルといわれた「火サス」は、まだ週末には遠く、視聴者も仕事モードで、浜木綿子主演の「監察医・室生亜季子」、片平なぎさ主演の「小京都ミステリー」、眞野あずさ主演の「弁護士・高林鮎子」など働く女性たちが活躍するシリーズが目立つ。
週休2日制が定着してくると、フジテレビの金曜枠に「赤い霊柩車」はじめ、「京都祇園入り婿刑事事件簿」(三田村邦彦主演)、「おだまりコンビシリーズ」(美川憲一・加賀まりこ主演)、「スチュワーデス刑事」(財前直見主演)といった人気シリーズが出てくる。この枠はコメディタッチで気楽に楽しめるところが特徴だ。