さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
男役の集大成で飾る真風涼帆ラストステージー宝塚のジェームズ・ボンドは華やかに輝く
宝塚宙組公演、アクション・ロマネスク『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』が、3月11日、宝塚大劇場で初日を迎えました。ゆるぎなき男役像を確立し、今や宝塚全体をけん引していた真風涼帆さんがついに卒業の時を迎え、相手役の潤花さんとともに、サヨナラ公演に挑みます。
この作品は、イアン・フレミングの小説『007/カジノ・ロワイヤル』をもとに、脚本・演出の小池修一郎氏が宝塚独自のアレンジを加え、コミカルでオリジナリティあふれる作品に仕上げました。従来の007とは少しイメージは異なるかもしれませんが、主役はなんといっても、究極の男役にやらせたいキャラクター“ジェームズ・ボンド”。真風さんの集大成にふさわしく、すべての瞬間で究極の男役像が輝いていました。(以後、ネタバレあります)
プロローグでは007らしさが盛り上がります。スクリーンには東西冷戦時代と各国の秘密諜報機関の状況説明が映し出され、わかりやすく入り込めるのがいい。そして、登場する真風さんとスーツの男たち。途中から加わる、一人違う装いの芹香斗亜さんとの敵対感も美しく、KAORIalive先生の緊迫感あるダンスシーンで、しびれるような幕が上がりました。
――第二次世界大戦後の1968年、アメリカとソ連を中心とする冷戦時代。イギリスの秘密諜報機関MI6に属するジェームズ・ボンド(真風)は、コードネーム007を持つ諜報部員だ。ある日、ボンドは、ソ連のKGBに属する諜報部員でフランスの司令塔ル・シッフル(芹香)と「ギャンブルで勝負せよ」との依頼を受ける。ル・シッフルに勝ち、彼が経営するクラブともどもKGBの資金源を断つのが狙いだ。さっそくパリへ向かったボンドは、デモ騒ぎが起こる街中で、警官に追われていた女子学生デルフィーヌ(潤)を助けた。彼女はパリ学生連盟のリーダーで恋人のミシェル(桜木みなと)とともに、デモに参加していたという。ボンドは意志の強いデルフィーヌに心惹かれる――
真風さんはまさに和製ジェームズ・ボンドです。白いタキシードに蝶ネクタイ、胸には赤いバラではなく赤いカーネーション。ビジュアルイメージそのままに、英国紳士のダンディズムを鮮やかに体現し、一部の隙もありません。外見だけでなく、ただ立っているだけの姿からタバコを吸う仕草、背中で語る演技まで、男役17年の歳月がすべてナチュラルに詰め込まれていました。
銃撃戦やカジノのギャンブル、殺陣などアクションシーンが、ほぼダンスで表現されているのがダイナミックかつスタイリッシュ、ミュージカルらしさが活きています。
真風さんは徹底した二枚目ながら、時には笑いを誘い、時には強引にデルフィーヌを引き寄せ、思わずドキッとさせるなど、包容力もたっぷりに女性のハートをくすぐり続けていました。
◆公演情報◆
『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』
原作/イアン・フレミング「007/カジノ・ロワイヤル」(白石朗訳、創元推理文庫刊)
2023年3月11日(土)~4月17日(月) 宝塚大劇場
2023年5月6日(土)~6月11日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出/小池 修一郎
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