『マチルダ』で競演!大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成インタビュー(上)
あくまでもマチルダから見たミス・トランチブル校長を演じたい
橘涼香 演劇ライター

英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが2010年に製作し、瞬く間にウエストエンドで最も人気のある作品となり愛され続けてる大ヒットミュージカル『マチルダ』が、2023年3月22日から5月6日、東京渋谷の東急シアターオーブで日本初演の幕を開ける(のち、5月28日~6月4日大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演)。
ミュージカル『マチルダ』は、映画「チャーリーとチョコレート工場」(原作本邦題:「チョコレート工場の秘密」)で知られる英国の国民的作家ロアルド・ダールによる小説「マチルダは小さな大天才」をミュージカル化した作品。図書館にある難解な本も全て読みつくしてしまうほど、高い知能と豊かな想像力を持った5歳の少女マチルダ。けれども両親はマチルダに全く関心を示さず、辛い境遇に置かれている彼女が、図書館に居場所を求めたことから担任教師ミス・ハニーに出会い、様々な困難を機知と勇気で乗り越えていく物語が、思わず口ずさみたくなる音楽と、個性豊かなキャラクターたちを通じて描かれていく。
ウエストエンドでの初演以来熱狂的に愛された作品は、ローレンス・オリヴィエ賞において、ミュージカルとしては過去最多の7部門受賞。2013年にはブロードウェイに進出し、トニー賞で5部門の受賞を果たし、全世界で1100万人以上を動員。100もの国際的な演劇賞に輝いていて、待望の日本初演に大きな期待が集まっている。
そんな作品で、元ハンマー投げの名選手で、マチルダの通う学校を「恐怖」で支配している、ミス・トランチブル校長をトリプルキャストで演じる大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成が、作品のこと、マチルダにとって大きな壁となる強烈なキャラクターである役柄のこと、更に互いに感じる魅力を語り合ってくれた。
言いなれない言葉がリズムや間で心地よくなる

左から、大貫勇輔&小野田龍之介&木村達成〈ヘアメイク:エムドルフィン〉=岩田えり 撮影
──お稽古が進んでいると伺っておりますが、稽古に入られて改めて作品についてどう感じていらっしゃいますか?
大貫 やはりロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが作っている、ということもあって、日常で使わないような英語が多く使われているそうなんです。それを日本語に変換した時にも、やっぱり普段あまり使わないような、「このアンポンタン!」とか(笑)、言ったことがないなという、本当に言いなれない台詞が多いんです。だから自分だけで台本を読んでいる時には正直入りづらかったのですが、いざ稽古場でそのセリフを言うと音楽がバーンと入ってきて、動きや振付になっていく流れ、リズム感や間みたいなものが「こんなに心地いいのか!」というのを改めて感じました。

大貫勇輔=岩田えり 撮影
小野田 僕も一人の観客としてこの作品、『マチルダ』を観たことが過去にあるのですが、次から次へと色々なナンバーがまるで降り注いでくるという印象で、本当に感動してワクワクさせられる作品だったんです。それで、こんなに興奮させられる秘訣はなんだろう、と当時からずっと考えていました。で、いざ稽古に入った時に、それぞれのキャラクターとナンバーの動きが、非常に厳格に決まっていたんですね。声のトーンとか、どこで動くかということまでが。もちろん「ザ・ミュージカル」という雰囲気はあるのですが、ポップでカジュアルなミュージカルの軽快なノリだけではなくて、むしろカジュアルに見せる為に厳格な動きが要求されるんです。
ですから、こういった一つひとつをきっちりと積み上げていった、その積み重ねがあの感動を生むんだなということを、毎日の稽古の中で各シーンを観たり、やったりしながら感じています。演じていてとても楽しい役ですし、作品もすごくポジティブで、カンパニーも素敵なので毎日楽しくやらせていただいていますが、ちゃんと日本版として更に感動を増す作品にしないといけないな、という気持ちも強いので、身を引き締めて頑張っています。

小野田龍之介=岩田えり 撮影
木村 僕は子供の頃に、映画の『マチルダ』を観たことがあって、多分当時はマチルダ目線でこの作品を見ていたので、今こうして自分がマチルダに相対するトランチブルという役をやって、大人が子供を見下す目線で作品を観ていることが、感慨深いなと思いながら稽古に励んでいます。ただ、今かなり頭の中でバグりそうなのが、日本版ですから台詞は日本語で喋るし、もちろん歌も日本語で歌うんですが、黒板に書く文字は英語なんですよ。その世界観を自分の中でどう作っていけるのか?というのをはじめ、乗り越えなければいけないフィクションの壁は絶対にあると思っているので、そういったところも含めて、色々と稽古しながら楽しんで行けたらいいなと思っています。

木村達成=岩田えり 撮影
◆公演情報◆
Daiwa House presentsミュージカル『マチルダ』
プレビュー:2023年3月22日(水)~24日(金) 東急シアターオーブ
東京:2023年3月25日(土)~5月6日(土) 東急シアターオーブ
大阪:2023年5月28日(日)~6月4日(日) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:デニス・ケリー
音楽・歌詞:ティム・ミンチン
脚色・演出:マシュー・ウォーチャス
[出演]
マチルダ:嘉村咲良/熊野みのり/寺田美蘭/三上野乃花(クワトロキャスト)
ミス・トランチブル校長:大貫勇輔/小野田龍之介/木村達成(トリプルキャスト)
ミス・ハニー:咲妃みゆ/昆夏美(Wキャスト)
ミセス・ワームウッド:霧矢大夢/大塚千弘(Wキャスト)
ミスター・ワームウッド:田代万里生/斎藤 司(トレンディエンジェル)(Wキャスト)
ミセス・フェルプス:岡 まゆみ/池田有希子(Wキャスト) 原慎一郎 ほか
〈大貫勇輔プロフィル〉
7歳より母の経営するスタジオでダンスを始める。祖父は体操のオリンピック強化選手、母や伯母も元体操選手という生粋のサラブレッド。17歳よりプロダンサーとして数々の作品に出演。以降、舞台や映像作品にも幅を拡げ、俳優としても活躍中。近年の主な舞台出演作品は、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、『メリー・ポピンズ』、『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』など。現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』では浅井長政役を演じる。また、8月から舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』にハリー・ポッター役で出演が控えている。
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〈小野田龍之介プロフィル〉
幼少の頃よりミュージカルを中心に活躍。2011年に、シルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンサート・コンクールへ出演し、リーヴァイ特別賞を受賞する。主な舞台出演作品は、『ミス・サイゴン』、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、『ウエスト・サイド・ストーリー』、『メリー・ポピンズ』、『レ・ミゼラブル』、『マリー・アントワネット』など。7月に『ピーターパン』への出演が決まっている。
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〈木村達成プロフィル〉
2012年、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンでデビュー。主な舞台出演作品は、『管理人』、『血の婚礼』、『四月は君の嘘』、『SLAPSTICKS』、『ジャック・ザ・リッパー』、『The Last 5 Years』、音楽劇『銀河鉄道の夜2020』、『ロミオ&ジュリエット』など。テレビ『オールドファッションカップケーキ』など。6月太宰治作『新ハムレット』への出演が決まっている。
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