山口大器(やまぐち・ひろき) 劇作家・演出家・俳優
1996年、福岡市生まれ。高校演劇を経て、北九州市立大学進学と共に「劇団言魂」を結成。以降ほぼ全ての劇団公演にて作・演出を務める。テンポのいい会話劇で繰り広げられる少し不思議な世界で、日常に潜むドラマを掘り起こそうとしている。2019年に「量子の歌声」にて九州戯曲賞大賞受賞。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
若手劇作家が高齢者と出会い、物語紡いで
大学進学と共に北九州にやってきて、9年になります。
それまでは、同じ九州の福岡市で生まれ育ち、北九州といえば「八幡製鉄」「環境問題」「スペースワールド」など、教科書で知った名前が浮かぶ程度の街。演劇と出会い、演劇一色だった高校生の頃の私は、北九州には「北九州芸術劇場」があるらしいという噂を頼りに進学先を選び、その後大学で同級生と「劇団言魂」を結成、劇作家・演出家・俳優として演劇活動を始め、今に至ります。
その北九州芸術劇場が2012年から実施している「Re:北九州の記憶」という企画があります。
これは、北九州在住の高齢者を地域の劇作家が訪問してインタビューを行い、伺ったお話の中から作家が短編劇を創作するもの。講師による戯曲講座でのブラッシュアップを経て、演劇公演を劇場で行います。私は2019年から劇作家としてこの企画に関わっています。先日、11年続いてきたこの企画の一つの節目として本公演が北九州と東京で上演され、私にとっての「Re:北九州の記憶」について振り返るべく、このテキストを書いています。
2018年ごろ、大学を卒業してもう少し演劇活動を続けていこうと決めていた頃、「作家として『Re:北九州の記憶』に参加しませんか?」とプロデューサーの吉松寛子さんに声をかけてもらい、二つ返事で参加を決めました。
私の場合(多くの劇作家がそうだと思いますが)通常戯曲を書く時には自分の経験や考えを頼りに創作を始めますが、高齢者のエピソードを元に創作するとはどういうことか、自分の外側をきっかけに戯曲を書くとどうなるのか、面白そうだと思ったのです。(戯曲講座で面白い戯曲の書き方教えてもらえるじゃん、ラッキー!という気持ちもありました)
舞台「君といつまでも~Re:北九州の記憶~」は、演劇を通して個人の記憶を後世に伝えてゆくことを目的に始めた事業のまとめとして、北九州芸術劇場(2023年2月23~26日)と東京芸術劇場シアターイースト(3月3~5日)で上演された。地元の若手劇作家が執筆してきた物語をもとに、指導役として関わってきた内藤裕敬が脚本・構成・演出を手掛け、新たに、北九州に生きた人々の群像でつづる「街の記憶」の物語を作った。