コロナ禍や映像配信の普及の影響かわからないが、最近、国内の大きな国際映画祭の終了が相次いだ。1985年に始まった隔年開催の「広島国際アニメーションフェスティバル」と1991年から毎年開催された「アジアフォーカス福岡国際映画祭」の2つが2020年を最後に終了した(前者は「ひろしま国際平和文化祭」の中の『ひろしまアニメーションシーズン』に変更)。またアニメーション部門やマンガ部門を持つ「文化庁メディア芸術祭」は1997年に始まったが、昨年2022年が最後となった。それぞれ広島市、福岡市、文化庁が中心となった映画祭で、各分野で高く評価されていた。
そんな時にこの3月に忽然と現れたのが、「新潟国際アニメーション映画祭」である。筆者はこの欄において国際映画祭とは何か、東京国際映画祭はどうあるべきかなどについて何度も論じてきた。
東京国際映画祭は「飛躍」したか──作品の質は高くなったが……
この新しい映画祭にも「映画評論家」ならぬ「映画祭評論家」として足を運んだので、その新しさや今後の展望や改善すべき点などについて述べてみたい。
まず映画祭の事務局に着いて驚いた。到着した外国人の監督に流暢な英語で案内をしていた女性も、ジャーナリストなどのプレス担当も映画界では知られた業界人だ。さらに会場運営にも東京や高崎の映画館のスタッフがいた。後述する教育プログラムもパリ在住の女性が担当していた。つまり東京を中心に活躍する有能な国際派たちを一本釣りで集めた感じだ。
事務局でもらった資料を見てさらにびっくり。国際映画祭には不可欠のデイリー・ペーパー(毎日発行され、その日の情報や著名ジャーナリストによるコンペ星取表が載る)が日英表記で毎日発行されている。これは地元紙「新潟日報」の取材・制作である。そこには外国人2人を含む5人の星取表まであった。新潟日報といえば、資料のなかにその新聞の4頁からなる特別号もあり、押井守監督(審査委員長)や映画祭実行委員長の堀越謙三さんなどへのインタビューがあった。チラシは日本語版と英語版の2種。

「新潟日報」企画・制作の「新潟国際アニメーション映画祭」の特別号とデイリー・ニュース=撮影・筆者

日本語と英語のチラシ=撮影・筆者
押井守監督は特別号のインタビューで、審査員を受けた理由を「親しいプロデューサーが実行委員会の中心の一人になっていることが最大の理由」と述べている。確かに、実行委員会にアニメ界の大物が揃っており、それによって今回の審査員や作品のラインナップが可能になったのではないか。