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世界遺産紹介する「産業遺産情報センター」に行ってみた

見学にハードル、見えない近代化の「影」

中沢けい 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

単独見学受け入れ枠は午前・午後3人ずつ

拡大産業遺産情報センターの看板(上)と、同センターが入っている建物=東京都新宿区若松町
 産業遺産情報センターに平日午前中ガイドなしの予約を入れておいた。折り返しメールで予約受付の完了お知らせが来た。午前中は極めて苦手なのだが、ガイドなしの単独見学者の予定数が埋まっていた。

 見学を終えてから、受付で単独見学の受け入れ人数を尋ねた。午前が3人、午後が3人という定数だった。それで足りるのですか?と重ねて聞くと、個人で見学に来る人はそんなに多いわけではないですからという返事で、たしかに私が出かけた日も、ガイド無しの個人見学者は私ひとりであった。

 場内は撮影も録音もすべて禁止。荷物は無料のロッカーにすべて預ける。深紅の上着を着た受付の女性からパンフレット、アンケート用紙、メモ用の白紙1枚などを受け取り、場内へ入る。受付の女性が着ていたのと同じ深紅のジャケットを着たガイドの女性に案内されている大人4、5人のグループがいた。ほかにガードマン風の制服を着用した警備の人の姿もあった。スタッフの深紅のジャケットはなんとなく万国博覧会のコンパニオンを連想させたが、男性のスタッフも同じデザインの上着を着用していた。

 展示は三つのゾーンに分かれている。

 ゾーン1は明治産業遺産の概要と世界遺産指定までのプロセス。ゾーン2がメイン展示室で写真と映像資料で産業遺産の歴史的価値を示す展示、ゾーン3は資料室となっている。

 ゾーン3へ足を踏み入れようとすると深紅のジャケットの男性スタッフが資料を読みたければ、テーブルと椅子の用意がありますよと教えてくれた。グループ見学者を案内しているガイドさんが「朝鮮人だけが豆がらを食べさせられたなんてことはありません」と説明しながら通り過ぎる。

拡大産業遺産情報センターでは、映像やパネルで世界遺産に登録された資産が紹介されている=同センター提供


筆者

中沢けい

中沢けい(なかざわ・けい) 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

1959年神奈川県横浜市生まれ。明治大学政治経済学部政治学科卒業。1978年「海を感じる時」で第21回群像新人賞を受賞。1985年「水平線上にて」で第7回野間文芸新人賞を受賞。代表作に「女ともだち」「楽隊のうさぎ」などがある。近著は「麹町二婆二娘孫一人」(新潮社刊)、対談集「アンチ・ヘイトダイアローグ」(人文書院)など。2006年より法政大学文学部日本文学科教授。文芸創作を担当。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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