山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者
1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学・日本大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
知性で未来を切り開く女の子、英国の大ヒット作、日本初上演
ロンドンで4000回以上のロングランを続けている人気ミュージカル『マチルダ』が、日本の劇場に初登場した。
とびきり高い知性を持つ5歳の女の子マチルダが、家庭で、学校で、無理解な大人たちと闘い、自分にふさわしい生き方を獲得してゆく痛快な物語。原作はロアルド・ダールの児童文学で、舞台ではオーディションで選ばれた4人が交代でマチルダ役を演じ、共演の子どもたちも大活躍している。子どもも楽しく見ることができる舞台だ。
一方で、驚くほどたくさん、「いまの社会」を映した要素が盛り込まれた作品でもある。
性別で「らしさ」を押しつけられる不条理、子どもの尊厳を大切にしない大人の横暴、他人を「力」で支配する罪、特別な才能のある子(ギフテッド)との向き合い方、家庭とも学校とも違う第三の居場所(サードプレイス)の意義、女性同士の連帯(シスターフッド)……。
それらが、軽快な歌とダンスを盛り込んだ、愉快な物語の中で、やわらかく、でも、鋭く語られてゆく。
相手が誰であっても、間違った行為や不正に対して、マチルダはいつも、まっすぐに言う。
「それって正しくない」
この言葉をためらわずに口にする率直さと勇気を、いまの自分は持っているだろうか--。大人にこそ、グサリとくる。そんな舞台なのだ。
Daiwa House presents
ミュージカル『マチルダ』
デニス・ケリー脚本
ティム・ミンチン音楽・歌詞
マシュー・ウォーチャス演出
常田景子翻訳、高橋亜子訳詞
各役複数の俳優が交代で出演
マチルダ:嘉村咲良、熊野みのり、寺田美蘭、三上野乃花
アガサ・トランチブル校長:大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成
ミス・ハニー(担任教師):咲妃みゆ、昆夏美
マチルダの母:霧矢大夢、大塚千弘
マチルダの父:田代万里生、斎藤司
ミセス・フェルプス(図書館員):岡まゆみ、池田有希子
東京・渋谷の東急シアターオーブ
3月22~24日プレビュー
3月25日開幕、5月6日まで上演中
大阪・梅田芸術劇場メインホール
5月28日~6月4日
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