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コロナ禍の歳月を焼き付けて、還ってきた『Endless SHOCK』

2020年以降の舞台芸術を「定点観測」する〈下〉

後藤隆基 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター助教

 新型コロナパンデミックに激しく揺さぶられてきた演劇界のこの3年間を、堂本光一の舞台『Endless SHOCK』を「定点」として見つめる論考の後編です。苦境の中、いかにして「Show must go on」の精神は貫かれたのか――。
  〈上〉はこちらからお読みいただけます。

映像とスピンオフ作品が併走した2022年

 2022年の『Endless SHOCK -Eternal-』公演――帝国劇場(4月10日~5月31日)と博多座(9月。当初、具体的なスケジュールは発表されていない)では、ライバル役が上田竜也からSexy Zoneの佐藤勝利(帝国劇場)とKis-My-Ft2の北山宏光(博多座)に交代し、劇場のオーナー役として前田美波里(帝国劇場)にくわえて島田歌穂(博多座)が配役されるなど、新たな布陣が固まった。

 堂本光一が『Endless SHOCK -Eternal-』の上演を決めたのは、製作発表会見(2月18日)の2日前。直前まで、2年ぶりとなる本編の有観客上演の可能性を模索したが、コロナ禍以前の形態での上演は困難と判断。本編の無観客収録による映像配信と、帝国劇場および博多座での新演出による『Endless SHOCK -Eternal-』公演という2本立てになった。

 本編映像と『Endless SHOCK -Eternal-』の組み合わせは2021年2月と同じだが、2022年には、限られた時間のなかで、新キャストによる本編の撮影と『Endless SHOCK -Eternal-』公演の稽古を同時並行で進めねばならない。ライバル役の佐藤勝利と北山宏光に新曲が用意されるなど、『Endless SHOCK -Eternal-』自体も深化していった。

拡大『Endless SHOCK -Eternal-』の一場面=2023年4月、東京・帝国劇場、東宝提供

 4月5日に帝国劇場で収録した『Endless SHOCK』の本編映像は、9日にジャニーズネットオンラインで配信。翌10日に初日を開けた『Endless SHOCK -Eternal-』では、前年同様に映像が駆使されたが、新規収録の本編映像と実際の舞台を融合させることで、ふたつの作品がより有機的に絡み合う新たな劇世界を創出した。

 また、前年までの感染対策のガイドラインでは、舞台袖に演者の人数分の着替え部屋を設置する必要があり、装置を簡略化せざるをえなかったが、2022年に条件が緩和され、舞台袖に装置を入れられるようになった。

 そこでオーケストラを舞台上からオーケストラピットに据え、映像で対応していた殺陣を実際におこなうなど、しだいに本編に近づく演出に刷新されていったのである。


筆者

後藤隆基

後藤隆基(ごとう・りゅうき) 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター助教

1981年静岡県生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は近現代日本演劇・文学・文化。著書に『高安月郊研究――明治期京阪演劇の革新者』(晃洋書房、2018)、編著に『ロスト・イン・パンデミック――失われた演劇と新たな表現の地平』(春陽堂書店、2021)、『小劇場演劇とは何か』(ひつじ書房、2022)ほか。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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