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【Journalism 3月号】〈NHK、読売新聞、朝日新聞 〉採用・教育担当座談会 大震災で揺れたメディアの採用活動

 朝日新聞が発行するメディア研究誌「Journalism」3月号の特集は「メディア企業の採用と育成」です。今回は巻頭記事の「NHK、読売新聞、朝日新聞 採用担当者座談会」の番外編をお届けします。3月号本誌の内容(目次)はこちらhttp://www.asahi.com/shimbun/jschool/report/new.htmlからご覧ください。

拡大採用・教育担当座談会

〈NHK、読売新聞、朝日新聞 〉採用・教育担当座談会 大震災で揺れたメディアの採用活動

◇座談会参加者◇

NHK人事労務部副部長 山内昌彦

読売新聞東京本社人事部次長 原田康久

朝日新聞社採用担当部長 堀江 浩

上智大学文学部新聞学科教授 音 好宏

 昨年3月の東日本大震災、そして会社説明会の12月解禁は、メディア各社の記者採用と記者教育にどのような影響を及ぼしたか――。「Journalism」の毎春恒例企画となったNHK、読売新聞、朝日新聞の採用・教育担当者による座談会。今回は新しい試みとして、ツイッターで質問を募集、座談会席上で各社担当者に答えてもらった。この部分の進行役は編集部・伊丹和弘(http://twitter.com/itami_k)が務めた。

「学歴不問」は本当ですか?

編集部 今回はツイッターで質問を募集してみました。まずは学歴についてです。「募集用件に学部不問と学歴不問という表現があるが、違いがいま一つ分からない。大学卒業は必須なのか。社会人で応募する場合は、社会人になる前の学歴も関係するのか」という質問です。

堀江浩(朝日) 朝日は基本的に学歴不問です。大学卒業は応募の条件ではありません。ただし、大学に在学している学生は、卒業が条件になります。

拡大朝日新聞社採用担当部長 堀江浩

編集部 中退で入社はダメですか?

堀江 すでに大学を中退している人が入社試験を受けるのは問題ありませんが、入社が決まったあと、卒業できずに中退するのは困るという立場です。そこはしっかり卒業してほしい。大学院に進んでから受けた場合は、学部は卒業しているので、大学院中退でもOKです。要は学生である期間をしっかり終了しないで入社するのは困るということ。学歴に関する基本は高校卒でも、中学校卒でも問題ありません。実際に高卒の人も入っています。

原田康久(読売) 読売も朝日と同じです。新卒に卒業を義務づけるのは、大学を卒業するぐらいのマネジメント能力を持っていなさいということです。

拡大読売新聞東京本社人事部次長 原田康久

編集部 確かに企業を受かったら、大学をやめていいよでは、大学に失礼ですし、困りますよね、音先生。

音(上智大学) ええ、本当に。大学院ではまれにですが、いますよ。修士論文が嫌で嫌で就職しちゃったんじゃないかという学生が。

拡大上智大学文学部新聞学科教授 音好宏

原田 新卒の面接では、受験者の大学名を面接担当者には知らせません。受験資格としては学部も学科も不問なのですが、面接する上で、どんな勉強をしてきたか聞くときの手がかりとなりますので、これは伝えています。ただし、採否を決める評価には加えません。

編集部 新卒以外の面接の場合、学歴、つまり大卒か、高卒か、などという情報はどうしていますか。

原田 それも面接担当者には全く見せないようにしています。ただし、学力は大学4年卒業程度としており、全員に学力試験を課しているので、これには合格してもらわねばなりません。

山内昌彦(NHK) NHKも全く同じですね。学歴不問ですが、在学中に内定した人については、卒業してもらうことが前提です。キャリア採用とか、有期契約記者を正職員に登用する試験では高卒や専門学校卒業で受かった人もいるので、そういう意味では本当に学歴は不問です。

拡大NHK人事労務部副部長 山内昌彦

編集部 新卒一括採用に対しては学生による反対デモが起きました。「新聞・NHKの採用は違いますよ」と宣伝してもいいのに、あまり知られていませんね。

原田 新卒と既卒で全く差をつけていませんからね。「第2新卒」のように3年以内なんてケチなことも言いません。

堀江 秋採用もありますし、すでに卒業している人はいつでも入社することができます。

原田 ある種の通年的な採用もやっています。確かにアピール不足です。

既存メディアとネットメディアの差は?

編集部 次の質問です。「記者教育の面での既存メディア企業の、ネット専業メディア、例えばヤフーとかニコニコ生放送などに対する強みは何か」。要するに、「私は今ネット系と既存メディアで迷っているけど、どちらがの方がいい記者になれるのか」ということでしょう。

原田 今、世の中に出ているニュースをスクープしているのは、基本的にはNHKなどの放送局と新聞各社です。インターネットメディアも活躍していますが、インターネット発で僕らマスメディアが驚いて、後追い取材に走ったという経験はあまりありません。それぞれのメディアの取材力とは、その組織にいるジャーナリストの質と数を掛けたもので、それはやっぱり新聞と、放送ではNHKが突出しています。

編集部 マスメディアは記者研修なども充実させているから、比べられること自体が心外ですか?

堀江 そんなことはありません。インターネットメディアの伝える力は強い。記者会見の生中継などでもその力は発揮されました。ただ、そのためか、発表されたものを右から左に早く流すことが記者の仕事だと思っている人がいます。でもそれは違う。発表されたことが本当なのか、その裏づけを取り、発表されていない事実を独自に調べ、真実を掘り起こすことこそ記者に求められる仕事です。そして、それを実際にやっているのが新聞やテレビの記者です。

山内 一時期、省庁の記者会見をネットメディアはノーカットで生中継しているのに、テレビは編集して短くしていると批判を受けたことがあります。ところがその後、原発事故に関する会見を全部流すと、今度はたれ流しだと批判されました。きちんと伝えるためには、取材して重要な情報か否かを見きわめ、取捨選択する作業が入らざるを得ない。そのとき、人間対人間で向き合って信頼関係を築き情報を取るという基本ができている既存メディアが行うのと、そうじゃない人たちが行うのとでは決定的に質が違うと思うのです。そこのところは僕らも本当はもっと大きな声で伝えて行かねばならないと思います。

ボランティア経験は選考に影響しますか?

編集部 学生時代に選挙のボランティアなど、政治系の活動をする学生さんも増えてきました。採用に悪影響を与えることはありますか。

原田 選挙事務所の応援や政治家の秘書をボランティアでやっている人が確かに増えました。世の中に興味があって、自分から飛び込んでいったということを私は高く評価します。どの政党の議員を選んだかということは全く選考に影響しません。プラスになることはあれ、マイナスになることはないと思います。

堀江 良い社会勉強だと思います。ただし、重要なのはそこから何を勉強したのか、得たのかというところ。そして、その体験をアピールするのであれば、記者の仕事とどう結びついてくるのかをちゃんと説明して下さい。どこでその体験をしたかは全然気にしていません。

山内 被災地のボランティアも同じですね。ただ、面接では経験を語るだけではなく、その経験から何を得たかもきちんと説明してほしいです。今年の受験者の中には、気仙沼に行って被災者の支援をしました、という人はたくさんいるでしょう。こちらは当然、「じゃあ、そこに行って、ふだんNHKが伝えているニュースと何か違うことを感じた?」と聞くわけです。その質問にちゃんと答え切れるかどうかが重要です。

各社の論調に合わせるべきですか?

編集部 最後の質問です。面接のときに、その新聞社の社論べったりの意見を言う学生さんもいるそうですが、そういう学生さんをどのように見ているのでしょうか。

堀江 「じゃあ、朝日とは違う意見についてどう思うか、他の新聞はちゃんと読んでいますか」と聞きたくなります。社論べったりでは、ちょっと心配な感じがしますね。世の中にはいろいろな視点、いろいろな考え方があり、そうした様々な人を取材しにいくのが記者たちの仕事です。それをまずベースとして理解できる人かどうか、前提や先入観なく、素直に相手と向き合えるかどうかの方が気になりますね。

原田 面接で本人の思想、信条、政治信念を聞くことはありません。どういう記事を読んでいるかは話題にすることはありますが、うちの社論をどう思うかという質問は面接ではしないと思います。

編集部 聞かなくても言う人は?

原田 言ってもいいのですが、時間の無駄になっている可能性があります。重要なのは記者として活躍できるかどうかです。社論への感想より、もっと根源的なもの、正義感や人を思いやる気持ちなど記者に必要なものを持っているかどうかを知りたいわけで、読売新聞の採用の場で、朝日新聞の論調が気に入らないって主張されても、それはその人の記者の資質とは無関係ですからねぇ……。

山内 面接のときに必ず聞くのは、NHKの良いところ、悪いところ、変えたいところです。一人の視聴者として見たときに、足りない部分があるからこそ、あなたが入って変えたいんだよねという話をして、その人がどう考えているのかを見きわめたいなと思っています。厳しいこと言う学生もいるのですが、なるほどと思うことも少なくありません。ちゃんと意見を言える学生を私は評価します。

 また、志望動機に「公平中立」を挙げる人が必ずいるんですが、NHKだから公平中立なのではなく、報道は基本的にそうなんです。そうでありながら、根っこにあるのは自分が何か感じ、それを伝えたいという思いです。これが最も重要なことです。最初から公平中立という正解がどこかにあって、それを原稿化するというものではないとは面接の場でも伝えています。

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「Journalism」3月号本誌での座談会記事は、「2011年度採用実績と2012年度採用予定」「東日本大震災が2011年度採用に与えた影響」「大震災後に求められる記者像」「会社訪問の12月解禁の影響」「各社のデジタル展開とその人材確保」「採用担当者が志望者に求めること」「女性記者の配置」「記者の結婚事情」「出産支援、子育て支援」「多様な人材確保の工夫」「志望者へのアドバイス」など盛りだくさんな内容です。

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