2014年08月05日
このところスマートフォン(スマホ)向けに、ニュースを読んでいろいろ活用できる「ニュースアプリ」が熱い戦いを繰り広げている。
「SmartNews」「グノシー」「LINEニュース」「NewsPicks」といった有力なソフトが相次いで登場し、首位のヤフーを脅かすまでになっている。
2014年3月からグノシーが大々的にテレビCMを始め、おかげでこのソフトはニュースアプリのランキングで1位、2位に入る大躍進を遂げた。
グノシーを開発した東京大学の大学院生が設立したベンチャー企業は、KDDIから約12億円の出資を受け、このうち約10億円をテレビCMに使ったという。
グノシーはなぜ巨額の広告宣伝費をかけたのか? それは、今こそヤフーに代わりニュースアプリで1位になれるチャンスと考えたからだろう。
12年から13年にかけて若年層を中心にしてスマホの普及が一気に進んだ。これにより従来型の携帯電話とスマホの地位が逆転したのはもちろん、インターネットにアクセスする端末としても、スマホがPCを超えることになった。
いうまでもなく、日本でPCによりアクセスされるサイトとしては、ヤフーがトップだ。しかし、スマホではその地位はまったく保証されない。
なぜなら、スマホユーザーは、小さな画面では操作が面倒なブラウザーを嫌ってアプリを使い、連絡をするためにもメールの代わりにLINEなどを使っているからだ。
このようにブラウザーもメールも使わず、目的ごとに使い勝手のいいアプリを選んで使うというのが、スマホユーザーの常識となっているのである。
こうした中、ニュースアプリとしてトップになることが、ビジネスとして極めて重要なことになってきている。
スマホ利用者が、フェイスブックやツイッターで話題を交換したり、LINEで会話したりする際、その話題を提供できる優れたニュースアプリの価値が高まっているからである。
では、ニュースアプリ戦争はどういう経緯をたどり、それぞれの特徴はどういったものなのかを振り返ってみよう。
口火を切ったのは、12年12月に登場したSmartNewsだった。
特徴は、なんといってもそのカラフルで洗練されたデザインである。加えてページめくりを模した視覚効果、すぐ読みたい人やオフラインでも読みたい人向けの「Smartモード」など。これらの特徴により、このアプリはたちまちこの分野の代表格となった。
次いで13年1月に登場したグノシーは、当初ユーザーの関心領域に合った記事を抽出するアプリとしてスタートしたが、KDDIの資本が入るとともにSmartNewsによく似たアプリに路線変更をした。
グノシーは海外展開にも積極的で、14年4月に英国、5月に米国向けアプリを公開。3年間で1億インストールを目指している。
13年7月に、この二つのアプリを追いかけるように「Yahoo!ニュース」とLINEニュースが相次いで登場した。
Yahoo!ニュースは、ヤフーのニュース部分を切り出したものである。質量ともに充実し、速報性でも優れているが、写真より文字優先のレイアウトが、全体的に古風な印象を与える。
LINEニュースの特徴は、短時間にできるだけ多くのニュースを効率的に読める工夫が随所に施されていることである。
ニュースのタイトルをタップすると、編集部がまとめたサマリーがあり、そこから引用先の記事に飛ぶようになっている。
左右どちらに動かしてもカテゴリーをループして遷移できるので、行き止まりでまた逆に動かしてもとに戻らなくていい。
継続中のニュースについては、過去にさかのぼってニュースをまとめ読みできるなど、きめの細かい気配りがなされている。
13年9月に登場したNews Picksは、経済情報に特化したアプリで、SNS的な機能を備えているのが特徴である。
業界の著名人や業界紙をフォローすると、その著名人がピックアップしたニュースや業界紙から自動抽出したニュースがタイムラインに現れる。
ユーザーは、そのニュースにコメントをつけてシェアをしたり、「いいね!」をつけたりすることができ、そうした評価がニュースのランキングに反映されるようになっている。
ニュースアプリは、毎日アクセスするアプリという点でコミュニケーション系のアプリと双璧をなす。
スマホシフトの中で、どのニュースアプリがユーザーに支持され、ビジネス的に成功するのかをめぐり、今まさに最先端の戦いが繰り広げられているのである。
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高木利弘(たかぎ・としひろ)
株式会社クリエイシオン代表取締役。マルチメディア・プロデューサー。
1955年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。「MACLIFE」などのIT系雑誌編集長を経て、96年から現職。著書に、『The History of Jobs & Apple』(晋遊舎)、『ジョブズ伝説』(三五館)、『スマートTVと動画ビジネス』(インプレスジャパン)など。
※本論考は朝日新聞の専門誌『Journalism』7月号から収録しています。同号の特集は「ビッグデータ時代の報道とは何か」です
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