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肥大化してきた雑誌の姿を転換する試みが始まった

文字を届けるメディアという雑誌本来の姿に原点回帰、新しい役割も模索

星野 渉 文化通信社取締役編集長。東洋大学非常勤講師。

 日本の雑誌市場が1996年をピークに縮小を続ける中、部数回復をめざして、かつては考えられなかったような大胆な転換の試みが始まっている。

拡大雑誌の姿は変わっていくのか

 その一つが、大判(A4判)の女性ファッション誌のサイズを縮小した「バッグ・イン・サイズ」を発行する動きだ。

 欧米では既に行われているが、大判の雑誌と同じ内容で、判型だけを半分のA5判に縮小した雑誌を、大判と同時に同じ定価で発行するというものだ。

 こうすることで、大きな誌面でじっくり読みたい読者と、鞄に入れて持ち運びたい読者という二つのニーズに同時に応えることができる。

 当初、一部の大手出版社が実験的に開始したところ、読者の反応が良かったため、今では他の出版社にも広がっている。

 中でも光文社の女性生活実用誌『Mart』は、本誌の発行部数が12万〜13万部に対し、「バッグ・イン・サイズ」を7万〜8万部発行している。トータルの発行部数は、本誌だけの場合の1.5倍に増えている。

 光文社は、各社が豪華付録を相次いで付けるようになる中で、付録を付けない方針を貫いてきた。そのことが「バッグ・イン・サイズ」を出すことに有利に働いている。

判型縮小に加え定期購読にも注力

 これは、雑誌の内容ではなく、形を変えることでユーザーの利便性が向上した例だ。

 ただ、これを実現するためには、大小それぞれの版面を作製したり、印刷工程を変えたりすることや、流通側との交渉が必要になる。雑誌が売れていた時代であれば、このように手間のかかることに誰も取り組まなかっただろう。

 日本雑誌協会が中心になって毎年実施している販促企画に「雑誌定期購読キャンペーン」がある。協会加盟出版社が指定した雑誌について、書店を通して定期購読を申し込むと、購読料1カ月分を割り引く企画だ。

 雑誌愛読月間(7月21日〜8月20日)に行うイベントの一つとして2002年に始まった。03年に参加した雑誌は出版社32社から雑誌60誌であり、獲得した定期購読は7165部に過ぎなかった。

 それが今年のキャンペーンでは、参加雑誌は出版社47社の134誌、定期購読の獲得数は7万117部にのぼった。

 従来、日本の大手出版社は雑誌、とくにファッション誌などの定期購読には熱心でなかった。低コストで大量の雑誌を供給できる世界に類を見ない取次・書店ルートという販売網を持っているため、読者情報や入金状況などを管理しなければならない定期購読は、メインの販売手段にはならなかったのだ。

 広告収入の比率が高い欧米の雑誌の多くが定期購読で販売され、日本の新聞が宅配網による定期購読に依存しているのとは対照的だった。

 近年、出版社が定期購読に力を入れるようになっているのは、雑誌の部数減少に対する危機感があるからだ。それに加えて、雑誌の販売減少で経営が厳しくなっている取次や書店が定期購読獲得に積極的になっていることも大きな力になっている。

 さらに、本誌8月号の本欄でも伝えた「デジタルバンドル」も、新たな試みの一つだ。

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筆者

星野 渉

星野 渉(ほしの・わたる) 文化通信社取締役編集長。東洋大学非常勤講師。

1964年生まれ。国学院大学卒。共著に『オンライン書店の可能性を探る』(日本エディタースクール出版部)、『出版メディア入門』(日本評論社)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです