神戸新聞の新たな試み
2015年03月02日
今年の1月17日は阪神・淡路大震災20年にあたり、当時を振り返る様々な報道が行われた。
表示される写真は、同社の記者が撮影したもので、倒壊したビルや高速道路の橋脚、炎に包まれる建物など、当時の生々しい光景が現在の風景に重なる。
昨年12月に公開が始まり、その時点で、神戸市中央区や三宮、元町などを中心とした、101点の写真が登録されている。
「社内にある写真を全て公開するという考え方もあるが、ARの特性を考え、当時の記憶として価値あるものを厳選して整理したデータベースを作った」と、コンテンツ開発を担当する神戸新聞デジタル事業局の川上隆宏氏は説明する。
20年前のネガフィルムをデジタル変換して、位置情報を付加するのだが、同じ場所で撮影した複数の写真があると、その地点で写真が何枚も重なりあって表示されてしまう。そこでまず、写真を重ならないように整理して、さらに、現地で正確に表示されるかを検証するなどの作業に手間がかかったと言う。
「位置情報を示すジオタグの精度がかなり高いため、プライバシーに配慮して住宅地はさけるようにし、繁華街や公共エリアの写真を増やした。ただし、住宅地でも場所によってはやはり記録が残っていた方がいいと思われるケースもあるので、元となるコンテンツの選出を行っている編集部とも協力して検討を進めている」と川上氏。
今回のARによるコンテンツ公開は、昨年9月の電子版「神戸新聞NEXT」の震災特集ページ刷新に伴うプロジェクトの一つとして行われたものだ。
NEXTのサイトでは、グラフや写真をふんだんに盛り込み、震災に関する国内外の主な出来事をスクロール表示できるページや、関連するデータを分かりやすく図示するインフォグラフィックスが使われている。
また今回のAR用写真とは別に、震災当時の写真をオンライン地図上の400カ所にマッピングした「阪神・淡路大震災デジタルマップ」も公開している。
今回のARを使えば、デジタルマップではできない、その現場に立って、今の状況と比較しながら被災時の光景を見ることができる。
「東北大震災では、現地の状況が空撮やグーグルのストリートビューなど、あらゆる視点で公開され、私自身も大きな影響を受けた。20年前ではできなかった、当時の模様を様々な角度から伝えること、その中でも現場にいながらにして見るという行為は、記者経験もあるせいか、とても大事な要素の一つだと考えている」と川上氏。
通常、こうした特定の地域と連動したコンテンツを見せる場合、独自にアプリを開発する事例が多いが、神戸新聞ではあえて、「タイムマシンカメラYesterscape」という京都のITベンチャー企業クォークが2013年に開発したカメラ用アプリを使い、汎用性を高めている。
もともとこのアプリは、
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