まったく関係のない第三者を傷つけてしまいかねない諸刃の剣
2015年03月18日
9世紀から10世紀にかけて、現在のイランにあたる地域では、綿花栽培が一大産業として成立しており、北東部の都市ニーシャープールでは、綿花産業に携わる人は4割にまで達したそうである。
といっても、現在の国勢調査のような記録が残っているわけではない。日本でいえば「糸屋」といった具合に、住民の名字に関する記録から、その人物の職業を推測することができるのだ。
このようにデータは、加工されることで新たな情報を生み出すという性質を持つ。名字から職業を割り出すという程度であれば、誰でも思いつくことができるだろう。
そしてそれを望まない人物は、公開を拒否することができる。しかし時には、予想外の形で隠されていた情報が明らかになる場合がある。
2014年にクリス・ウォンという人物が、ニューヨーク州の情報自由法(FOIL)に基づいて、ニューヨーク市のタクシー・リムジン委員会からタクシーの走行データを入手した。
得られたデータは、13年の1年間に行われた1億7300万回のタクシー利用に関するもので、いつどこで客が乗車し、下車したか、また料金はいくらだったかといった情報が含まれている。ファイル容量は合計で約20ギガバイトに達したが、ウォンはこのデータを自らのウェブサイト上でも公開した。
こうしてネット上で共有されるようになったデータは、個人情報保護の観点から匿名化が施され、タクシーの識別番号といった情報は含まれていなかった。
しかしこのデータを見たノア・ディノウという人物が、そこに隠された情報を引き出すことを思いつく。その情報とは、ドライバーの宗教は何か、特に「イスラム教徒か否か」である。
イスラム教の戒律では、
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