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オッサンだらけの政治とメディアをどうする

おばちゃんたちが目を光らせてまっせ

谷口真由美 大阪国際大学グローバルビジネス学部准教授

 敗戦後70年を迎える2015年は、日本女性の歴史にとってもさまざまな節目の年である。女性参政権の獲得から70年、国際女性年および国連の第1回世界女性会議(メキシコ会議)から40年、女性差別撤廃条約の批准とそれに伴う国内法として男女雇用機会均等法が成立してから30年、第4回世界女性会議(北京会議)および育児・介護休業法成立から20年なのである。つまり本年は、女性と戦後民主主義を考える上では大変重要な年なのだが、果たして女性の地位は本当の意味で向上したのであろうか?

 本稿は、「年の瀬横暴選挙」とでも言うべき14年末の衆議院議員選挙の報道を材料としながら、日本における女性と戦後民主主義について考える。

政治の世界はダークスーツばかり

「全日本おばちゃん党」はフェイスブックで活動している拡大「全日本おばちゃん党」はフェイスブックで活動している
 私の本業は大学の教員だが、「全日本おばちゃん党」代表代行という肩書も持っている。「おばちゃん党」は、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)のフェイスブックで情報交換や学び合いを活動の場としている。政党だと誤解されることがあるが、そうではないのでご注意いただきたい。

 それは12年9月のことだった。テレビでは当時政権与党であった民主党の代表選と、野党第1党の自民党の総裁選の様子が映し出されていた。候補者は男性しかいなかった。また、同じころ大阪では大阪維新の会が、次の総選挙に向けて公約となる「維新八策」を発表し、日本維新の会と名称を変更していた。ここでも画面には男性しか映っていない。

 さらに、尖閣諸島をめぐり中国や台湾との外交問題が生じていたのだが、コメンテーターは男性ばかり。新聞に登場する有識者たちも、政治だ、外交だとなるとどこもかしこも、「オッサン一色」。

 目に入ってくるのはダークスーツばかり。鳥に例えたらカラス(黒)とスズメ(茶)とハト(灰)。彼らは勇ましいことを叫びながら罵り合い、「仮想敵」をみつけては攻撃し、揚げ句の果てに矛先を弱者に向ける。思わずテレビに向かって「なんやねん、これ。どこを見てもオッサンばっかりやんか!」と叫んでしまった。

 なんともウンザリ、ガッカリしたとき、フェイスブックに書き込んだ。「オッサン政治劇場、もう飽きた。既得権益をぶっ潰すのなんのいっても、結局その既得権益はオッサンのモノ。オッサンのオッサンによるオッサンのための政治にうんざりしたから、私らおばちゃん党でもつくったろか(笑)」と。

 その私の冗談に、とりわけ女性の友人たちが「ええやん」「そうやで」「ほんまや」と、ワーッと賛同してくれた。あまりの反響の大きさに面白くなり、勢いでその日のうちにフェイスブックの中に「全日本おばちゃん党(All Japan Obachan Party:AJOP エージョップ)」というグループを立ち上げた。党員になる条件は、自認する性が女性ということだけ。世界各地から集まっている党員は、5千人に達しようとしている。

おばちゃん全体の底上げを目指す

 シャレと勢いだけで立ち上げたネット上のグループではあるが、たくさんの女友達が賛同してくれたからには何か目的があった方がいい。そう思って二つの目的を立てた。一つ目は、フェイスブックの中での日々のやりとり(井戸端会議)を通じた、「おばちゃん全体の底上げ」だ。二つ目は、オッサン社会に愛とシャレでユーモアのあるツッコミをいれていくことだ。

 おばちゃん全体の底上げは、実はおばちゃんとしての自戒の念もある。今までおばちゃんたちは、「政治なんて難しいことはわからない」「難しいことは夫に任せておこう」「私がわからなくても社会は動く」と考えてしまうことが多かった。

 日本国憲法に男女平等条項があり、女性参政権の獲得から70年が経過したにもかかわらず、昨年末の総選挙で当選した女性は45人、全体のわずか9・5%である。このような結果になった責任は、オッサンばかりが悪いのではない。おばちゃんたちも、オッサンに任せて政治を放置してきた側面がある。

 けれども、おばちゃんたちは積極的に政治を放置してきたわけではない。政治の場から排除されてきたことが深く関係しているのである。「おばちゃんは難しいこと知らんでいい!」という具合に。

 フェイスブックでの井戸端会議には、実に様々な声が寄せられた。「変な人」として見られてしまうため政治的なことを語ることができない。町内会の会議で女性が意見を言ったら後で大変な思いをする。おばちゃん党の投稿を夜中に家族が寝静まってから携帯電話などで貪むさぼるように読み、気がついたら夜が明けていた。

 今まで気づかなかったことに気がついたというおばちゃん、はじめて自分の言葉で自分の意見を言ったというおばちゃんが実に多い。このことに私は大変な驚きを覚えた。これが敗戦後70年かけて培った日本の女性の民主主義の帰結なのか。たくさんのメディアがあるのに、情報に飢えている女性たちがなんと多いことだろう。

シャレやユーモアでアホらしさを風刺

 排除されたままではいけない。グイグイとオッサン政治に入り込んでいくしかない。9・5%という女性議員の比率は異常であるにもかかわらず、異常さに気がつかない人が意外に多い。しかし、男女の比率が逆だったら、気持ち悪いと思わないだろうか。

 この気持ち悪さに気がつくこと、そして難しいことでも正面から向き合い、シャレやユーモアでツッコミをいれながらおばちゃん全体の底上げをはかりたいと考えている。

 難しい問題にシャレやユーモアでツッコミをいれるには、実はとても高度なテクニックがいる。ボヤキでも、悪口でも、陰口でもいけない。オッサンと同じ土俵に立たず、あくまでオッサンのアホな言動や行動にツッコミをいれる。そのことによって、より多くの人たちにオッサン社会のアホらしさに気づいてもらうのだ。

 つまり、風刺を通じてクスッと笑ってもらうことにより、おかしさを認識してもらうのである。標準語の書き言葉でツッコミをいれると非常に硬くなるので、私自身の母語である大阪弁を書き言葉でも使っている。確かに読みにくい点は否めないが、地方分権が叫ばれる現代においては、方言は究極の地方自治の始まりともいえるのではないだろうか。

 一つの例は、13年6月におばちゃん党で行った、【ちょっと聞いてくれはる?〝夫婦別姓〟ってなんやろか?ついでにおばちゃん川柳・狂歌やってみました】というプロジェクトである。

 その頃、夫婦別姓訴訟があり、おばちゃん党内でもさまざまな意見が出てきていた。選択的夫婦別姓と非嫡出子問題は、おばちゃんたちの中でも意見がはっきりと分かれる。

 さまざまな意見はあるものの、96%以上の女性が婚姻後は男性の姓になることを考え、 ・・・ログインして読む
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筆者

谷口真由美

谷口真由美(たにぐち・まゆみ) 大阪国際大学グローバルビジネス学部准教授

1975年大阪府生まれ。2004年、大阪大学大学院国際公共政策研究科修了。博士(国際公共政策)。専門は国際人権法、ジェンダー法。法政大学現代法研究所客員研究員、一般社団法人部落解放・人権研究所理事。12年に「全日本おばちゃん党」をフェイスブックで立ち上げ、おばちゃん目線で「オッサン政治」をチェックしている。現在、代表代行。主な著書に『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(文藝春秋)、『リプロダクティブ・ライツとリプロダクティブ・ヘルス』(信山社)など。