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IT革命はさらに激動の時代を迎える

モバイル化で利用者同士が直接交流

高木利弘 クーロン株式会社取締役。マルチメディア・プロデューサー

 2015年は、PCインターネットからモバイルインターネットへの大転換、すなわちモバイルシフトがさらに進展し、折り返し点を迎えた年であった。

 モバイルシフトの進展によって、多くのユーザーが、いつでもどこでもスマートフォンで情報を受発信できるようになるにつれ、メルカリ(mercari)やエアビーアンドビー(airbnb)、ユーバー(UBER)など、一般消費者間で直接取引できるC2C(Consumer to Consumer)と呼ばれるビジネスモデルが大きく成長してきている。ユーザーの主体性、参加性がますます重要になってくる中、今後、こうしたC2Cこそがビジネスの主流になっていくと考えられる。

 音楽ビジネスでは、アイチューンズ(iTunes)ストアのような音楽ダウンロード販売に代わって、スポティファイ(Spotity)のような定額配信サービスが主流になりつつある。

 動画ビジネスでは、アップルが新しいアップルTVを発売したことにより、テレビ向けのさまざまなアプリ開発が可能となった。さらに、ネットフリックス(NETFlix)をはじめ米国の大手定額配信サービスが相次いで日本に上陸したことで、放送局がテレビを独占する時代は終焉を迎えつつある。

 若者のテレビ離れが進む中、民放5社はようやく重い腰を上げ、テレビ番組の無料見逃し配信サービスであるティーバー(TVer)を開始した。どれだけテレビ離れを食い止められるかは未知数である。

 アップルがアップルウォッチを発売したことで、モバイルシフトは、スマートフォンのみの世界から、ウェアラブル(身につける情報機器)も含む世界へと大きく進展した。

 今後、ウェアラブルをはじめ、ドローン、ロボット、自動運転など、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が次々と実用化段階に入っていくと考えられる。

 ビッグデータ、人工知能も頻繁に話題にのぼり、それらの発達によってこれから「消える職業」が話題になった1年でもあった。

 マスメディアの衰退が加速し、どちらの方向に活路を見出すべきか、ますます厳しく問われるようになってきた。

 15年は、過激思想、言論統制といった民主主義の根幹を揺るがす動きが目立った年でもあったが、これらもまたIT革命の一環であり、IT革命がさらに激動の時代を迎えているという観点から分析することが大切である。

モバイルがPCを上回りC2Cが時代の主流に

C2CとB2Cのビジネスモデルの違いと、代表的なサービス例拡大C2CとB2Cのビジネスモデルの違いと、代表的なサービス例
 15年5月、ニールセンは「スマートフォンからのインターネット利用者、2015年冬にはPCを超える可能性」と題したニュースリリースを発表した。

 それによれば、15年4月時点で、PCからのインターネット利用者が5100万人に対して、スマートフォンからは4832万人であった。

 そして、PCからの利用者数が横ばいであるのに対し、スマートフォンからの利用者は引き続き増加しており、15年冬にはPCを超えるだろうという。まさに15年は、モバイルシフトが折り返し点を迎えた年だったわけである。

 スマートフォンがインターネット利用の主役となるにつれ、ユーザーは、いつでもどこでも自分がほしいと思う情報に簡単にアクセスできるようになり、しかも、情報を受動的に受け取るだけでなく、自ら積極的に情報発信できるようになる。

 その結果、当然のこととして、ユーザー主体のサービス、ユーザーの参加性の高いサービスが隆盛することとなる。

 その代表が、ライン、フェイスブック、ツイッターといったコミュニケーション、ソーシャルネットワーク(SNS)系のサービスなのであるが、最近、特に若い女性の間で人気急上昇中なのは、インスタグラム(Instagram)とメルカリである。

 インスタグラムは、10年に米国でスタートした写真・動画共有サービスで、15年9月時点で、1カ月に訪問するユニークユーザー数が全世界で4億人と、ツイッターの3億1000万人を抜き、フェイスブックの10億人に次ぐ世界第2位のSNSとなっている。

 ビジュアルを中心に、直感的にわかりやすい操作性を前面に打ち出しているところが若い女性を中心に支持を得ている理由で、今や、ミュージシャンやスポーツ選手、タレント、ファッションモデルなどの著名人にとって、極めて効果的なプロモーションのためのメディアとなっている。

 インスタグラムに投稿した写真や動画をきっかけに多くのファンを獲得し、カリスマ・ファッションモデルや、スタイリストとしてデビューする若い女性も続出している。

 インスタグラムは、ネット時代ならではのグラビア誌であるといっていい。

 その宣伝効果はフェイスブックの10倍高いといわれ、広告料金も高いが、多くの企業が、ユーザーの自主性、参加性を生かしたマーケティングに取り組み始めている。

 メルカリは、13年にスタートした日本のフリマアプリ(オンライン上でフリーマーケットのように個人間で物品の売買ができるサービス)である。

 13年7月にサービスを開始するや、その操作性のシンプルさと売買取引の簡単さ、信頼性の高さから、たちまち若い女性を中心に人気を博し、15年10月時点で2000万ダウンロードを達成している。

 メルカリのような個人間の直接取引を前提としたビジネスモデルのことをC2Cという。そして、モバイルシフトが進展するにつれ、爆発的に市場を拡大しているのがこのC2Cなのである。

 C2Cの代表例には、この他、エアビーアンドビー、ユーバーがある。

 エアビーアンドビーは、08年に米国でスタートした個人間の宿泊取引サービスである。個人が自宅を宿泊施設として提供して収入を得られる一方、旅行者はホテルに泊まるよりも安い価格で泊まることができる。

 15年12月時点で、エアビーアンドビーは、世界190カ国、3万4000都市、200万件以上の物件をそろえ、通算ゲスト数は6000万人を超える巨大宿泊取引サービスとなっている。
エアビーアンドビーの評価額は255億ドル(3・1兆円)にのぼり、ヒルトングループの時価総額(2・9兆円)を上回っているという。

 ユーバーは、09年に米国でスタートした自動車配車サービスである。

 ユーバーの特徴は、一般的なタクシーとともに、一般の人が自分の車を使って他人を運ぶことができる配車サービスを構築していることである。利用者が運転手を評価するとともに、運転手が利用者を評価する相互評価システムによって、それぞれの信頼性を担保している。

 そのビジネスモデルは、B2CにC2Cを付加したサービスということができるが、爆発的成長を牽引しているのは、B2CではなくC2Cである。

 ユーバーの評価額は625億ドル(7・7兆円)に達するという。

風雲急を告げる音楽、動画の世界

 15年は、音楽ビジネス、動画ビジネスにも大きな動きがあった年であった。

 国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によれば、スポティファイなど定額音楽配信サービスの台頭で、14年にデジタルの売上高が初めて物理メディアを超えたという。

 その一方で、アップルがアイチューンズストアで先鞭をつけた音楽ダウンロード販売は陰りを見せ始めた。

 そこでアップルは、音楽定額配信サービス、ビーツミュージックとビーツエレクトロニクスを30億ドルで買収。アップルミュージックを15年6月に世界100カ国以上でスタートした。
9月にはグーグルがグーグルプレイミュージックを、11月にはアマゾンがプライムミュージックを開始した。

 動画配信サービスでは、15年9月がひとつの山場だった。

 アップルが、新しく第4世代のアップルTVとともにtvOSを発表。サードパーティーがアップルTV用アプリを開発できるようにした。付属のリモコン、シリリモートは、音声を使って簡単にさまざまな操作ができるようになっている。

 アマゾンは、定額動画配信サービス、アマゾンプライムビデオをスタートした。

 そして、全世界で会員数6900万人を誇る世界最大の定額動画配信サービスネットフリックスが日本上陸を果たした。

 10月には、日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョンの5社が共同で、テレビ番組の一週間無料見逃し配信サービスのティーバーをスタートした。10代、20代の若者を中心にテレビ離れが進み、「スマートフォンで見たいときに見たい動画を見る」という生活習慣が標準になりつつある今、ようやく放送業界が重い腰を上げた格好だが、既にそこは激戦区であり、遅きに失した感は否めない。

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筆者

高木利弘(クーロン株式会社取締役、マルチメディア・プロデューサー)

高木利弘(クーロン株式会社取締役、マルチメディア・プロデューサー)(たかぎ・としひろ) クーロン株式会社取締役。マルチメディア・プロデューサー

1955年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。「MACLIFE」などのIT系雑誌編集長を経て、2014年から現職。著書に、『The HIStory of Jobs & Apple1976~20XX』(晋遊舎)、『ジョブズ伝説』(三五館)、『スマートTVと動画ビジネス』(インプレスジャパン)など。