メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

人間の尊厳伝える災害取材

好奇心高め、質問する力を

李淼 香港フェニックステレビ(鳳凰衛視)東京支局長

現場主義を持ち続ける

 当事者に直接アクセスし、一次資料を読み、現場主義に徹する、これが私のモットーだ。好奇心旺盛で根掘り葉掘り物事を調べる性格の人にとって、ジャーナリストはまさに天職だ。「道端で拾った日本の石一つでも、見る視点によって中国にとってはニュース性や面白みを感じる」と上司に言われたことがある。好奇心と発見力、加えて実行力は、良いジャーナリストになる前提条件だと思う。

 日々のニュース取材だけでなく、日本での暮らしから様々な問題意識を抱き、いろんな可能性を想定し、想像力を膨らませ、一つ一つ調べて取材することは、私の一番の趣味といえる。小さなテーマでも、調べていくうちに、必ず楽しい発見がある。

 例えば、家庭ごみの油をどう捨てるか、捨て方が何種類あるかを調べると、外国では考えられないほど日本のごみ分別への意識が高いことが分かる。レストランで隣に座っていた母娘が会計の時に割り勘をしていたのを見て、日本人の家族同士のお金の感覚はどんなものかと考える。夫が娘の保護者会に参加した時、「お母様の皆さん」と先生が話すのは、なぜなのか。毎朝見るごみ収集車があんなに綺麗なボディを保つために、どんなメンテナンスをしているか、保育士不足の原因は何か、等々。調べたいテーマが多すぎて疲れてしまうのではないかと思われるかもしれないが、私にとって電話をかけ、「根掘り葉掘り」細かい質問をしてメモを取ることは、むしろストレス発散になる。見つけた「発見」をブログで中国語で発信すると、様々な反応が戻ってくるので、それらを読むのも楽しい。

 実際の取材活動では、当然のことながら発見力だけでは足りない。現場に行く実行力がもっと大事だ。どんなに年齢を重ねてベテラン記者になっても、現場主義が最も大切なことだと私は思う。民主主義の国の日本では、記者証と熱意、そして努力さえあれば、基本的にどんな人・場所にでも自由にアクセスできる。

 私は、日中関係が悪化していた時期に日本の首相に両国関係を問う単独インタビューをしたし、空母化が検討されている日本の護衛艦「いずも」の乗船取材も、中国で大きな注目を集めた殺人事件の被疑者の面会取材(東京拘置所)も、毎年8月15日の靖国神社でのリポートもした。いずれも、ちっとも躊躇しなかった。いや、誤解を恐れずに言えば、むしろワクワクしながら取材をしていた。かけがえのないチャンスが与えられていると思っているから。そして、報道では、現場で見聞きして感じたことこそ一番説得力があると思っているから。

国会前から安保法反対デモをリポート=2015年9月拡大国会前から安保法反対デモをリポート=2015年9月
 安保法が国会で可決直前、国会前のデモを何日間も取材し、身動きが取れないほどの中で何度も中継リポートした。その場にいた人たちの雰囲気、演壇から降りた「SEALDs」の若者の顔、沈黙しながらプラカードを掲げ続ける人、警察の警備、デモ隊とのにらみ合い。中継中、スタジオにいるキャスターの質問がイヤホンで聞こえないくらい、現場は大混乱だったが、ありのままの姿を伝えた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

李淼

李淼(リ・ミャオ) 香港フェニックステレビ(鳳凰衛視)東京支局長

中国吉林省出身。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。NHK国際放送中国語アナウンサーを経て、2007年から現職。日本の政治や安全保障、日中外交を中心に取材。首相や大臣など多数の政治家に単独インタビューした。東日本大震災、福島原発事故、熊本地震などの災害では現地取材した。個人ミニブログに67万人のフォロワーがいる。