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取材して取材して、そしてヒント

ドキュメンタリーで歴史を検証

小口拓朗 NHKディレクター(大型企画開発センター)

齋藤元少尉は最後に登場した

拡大齋藤博圀元少尉が登場するラストシーン。放送後に永眠された「戦慄の記録 インパール」から
 例えば、昨夏、私は「戦慄の記録 インパール」という番組を担当しました。太平洋戦争で最も無謀と言われ、7万人もの死傷者を出したインパール作戦。番組では、冷静な分析よりも、組織内の人間関係を優先した日本軍上層部の意思決定や、飢えや疫病で命を奪われていく兵士の姿を、90歳を超える元兵士の証言やイギリスに残されていた資料を軸に描きました。

 番組のラストシーンでは、戦地で日記を書き続けた齋藤博圀・元少尉(当時23歳)が、96歳となった現在の姿で登場します。このラストシーンまでは、齋藤少尉の場面は当時の顔写真と日記の朗読だけで構成し、ご本人は一切登場しません。さらに日記では、マラリアにかかり、軍に見放された揚げ句、飢えに苦しむ様子をクローズアップしました。視聴者には、「齋藤少尉は戦死したのかもしれない」と想像してもらうことで、番組の最後に、齋藤少尉が生きて帰ってきたことを知る、という構成にしました。私は、全体構成と編集を担当したのですが、齋藤さんのラッシュを見たときから、齋藤さんの登場はこの構成でいきたいと強く思いました。結果的に、劇的なラストシーンに映りましたが、この構成も取材がきっかけでした。

 齋藤元少尉のインタビューを実施し、日記を発掘してきたのは、10年近くインパール作戦の取材を続けてきたディレクターの笠井清史です。何度も取材を重ねた末に齋藤さんにたどり着き、貴重な証言と戦地の日記によって、現地軍の指揮系統や飢えに倒れていく兵士の姿を明らかにしました。こうした重要な証言が撮れたときの制作のパターンとしては、伝えたい証言をメモ紙にひとつひとつ抜き出し、それらを眺めながら、これぞという証言を導くためにコメントやシーンを逆算して構成を立てます。今回は、齋藤さんの渾身の言葉が、編集室の壁という壁に張り出されました。本来であれば、齋藤さんの証言は番組の骨子として、番組冒頭から余すことなく構成します。編集室でも当初はそうした案が上がりました。

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筆者

小口拓朗

小口拓朗(おぐち・たくろう) NHKディレクター(大型企画開発センター)

2002年入局。クローズアップ現代+「独占告白 野球賭博」「密着ルポ わたしたちと憲法」、NHKスペシャル「"トランプ大統領"の衝撃」「ボブ・ディラン ノーベル賞詩人 魔法の言葉」「日本国憲法 70年の潮流」「戦慄の記録 インパール」「オウム 獄中の告白」「未解決事件File.07 警察庁長官狙撃事件」などを制作。