山下晴海(やました・はるみ) RSK山陽放送 報道部長
1967年、岡山市生まれ。91年RSK入社、報道部記者、デスクを経て2001~04年にはTBSカイロ支局長としてイラク戦争などを取材。05年にRSKに戻り、ハンセン病をテーマにしたドキュメンタリーなどを制作したほか、東日本大震災、熊本地震なども取材。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
実名報道で進んだ安否確認
7月7日午前2時50分に撮影した映像がある(写真2)。真備町を取材していたクルーが撮ったものだ。写真の左側、小田川から水が堤防を越えて、右側の田畑や住宅地へと流れ込んでいる。激流ではないゆっくりとした水の流れだ。これを「バックウォーター現象」と呼ぶことを今回の災害で初めて知った。撮影されたのは初めてではないかと専門家は話す。
この現象は背水現象とも呼ばれる。大雨などにより増水した本流の川の流れにせき止められる格好で、支流の川の水位が急激に上がる。このため支流の川が合流地点より上流で溢れ、水が堤防を越えて氾濫するのだ。堤防の決壊をもたらす危険な状況と言える。これを撮影した経緯を取材クルーに聞いた。
午前1時半、真備町の小田川北側(地区の中心部)に避難指示が出た。取材を続けるうちに次第に浸水が始まり、増水していった。記者は危険を感じて高台への避難に移ろうとする。そこに1台の消防車が現れた。「これについていけば安全に避難できる」。そう思い、取材車で消防車の後を追ったという。消防車は堤防の上に向かう。しばらく走った所で止まった。消防車から「バックしてくれ。引き返す」と指示。堤防の上では越水が始まっていて行く手を阻まれたのだ。
この場所で、
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