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安倍支持の中心は若年男性層

ネガティブ情報の影響薄く

金子智樹 逢坂巌

小泉政権、郵政解散で再浮上

 以上のように安倍政権の平均的な支持構造を比較したが、内閣支持率はその時々の政治情勢(とメディアの報道)の変化の影響を受けて変動しやすい指標である。換言すれば、性別×世代別の支持率の動き方を調べることで、各グループの有権者が政治状況やメディア報道にどの程度「反応」しやすかったのかを析出することが可能になる。

図2−1 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(安倍内閣・第1次)拡大図2−1 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(安倍内閣・第1次)

 図2ー1は、第1次安倍内閣に対する支持率の推移を示したものである。まず、2006年9月の政権発足当初は、どのグループからも満遍なく高い支持を集めていた。小泉純一郎氏の後を継いで首相に就任した安倍氏は、第1次小泉内閣の時に官房副長官となり、小泉首相の北朝鮮訪問の際の拉致被害者の帰国問題をきっかけにテレビ番組に盛んに出演して有権者の人気を得る。そして、その人気を小泉首相に買われて第2次小泉内閣で若き幹事長となり、総裁候補の地位を獲得したという経緯があった。その意味では、「テレビに作られた宰相」という側面もあったと言える。その安倍氏が若き宰相として登場してきた時、全ての世代や性別から高い支持を集めた。

 この第1次安倍政権への高い支持は2段階で減っていくことになる。第1段階は、郵政民営化に反対した議員たちを自民党に復党させたことの影響による減少である。小泉首相は、2005年夏の「郵政解散」によって自民党に大勝をもたらす。郵政民営化を単一争点に設定して衆議院を解散し、「改革」に反対する者を「抵抗勢力」と呼び、「改革政党」たる小泉自民党への支持を訴えた。その際、自民党の議員にも郵政民営化に反対する者はいたが、彼らには党の公認を与えず、逆に「刺客」を送るなどして、選挙そのものが非常にドラマ化されテレビでも大きく取り上げられた。この選挙によって、それまで低迷し、民主党に迫られていた自民党の党勢が大きく回復する(注7)。自民党は小泉首相が登場した当初に掲げた「改革政党」のイメージを再び身にまとったことになる。

 しかし、第1次安倍政権は、その郵政選挙・改革自民党の敵役たちを就任2カ月後の2006年12月4日に復党させた。そもそも第1次内閣での安倍首相は発言が曖昧(あいまい)で、郵政選挙圧勝の原動力となった若年層が離反しつつあるという指摘が就任直後からからなされていたが(注8)、この復党は第1次政権の改革イメージを毀損してしまう。そしてこれを境に、同月21日の本間正明政府税調会長の公務員官舎問題での辞任、27日の佐田玄一郎行革担当相の政治資金不適正処理問題による辞任など、様々なスキャンダルが噴出して、同年10月には63%あった支持率は、07年2月には37%と26ポイントも大きく減少した。

 第2段階は、2007年5月に発覚した「消えた年金」問題と、松岡利勝農水相や赤城徳彦農水相の事務所費問題、柳沢伯夫厚労相や久間章生防衛相の相次ぐ失言などの一連のスキャンダルによる下落である。これによって7月の参院選の敗北へとつながり、2007年7月の参院選直後の調査では「危険水域」の30%を割ることになった。

安倍1次は若者から下落

紙面 2006年11月25日付朝日新聞拡大紙面 2006年11月25日付朝日新聞
 以上の全体的な推移を踏まえた上で、各グループの変動を確認しよう。図2ー1は第1次安倍政権の内閣支持率の時系列の変化である。これをみると、先に支持率が下落したのは若年層であり、それから高齢層が落ちる形となっていることが読み取れる。当時の朝日新聞の分析(注9、紙面)では、2006年10月(第1段階の初期)で落ちたのは無党派と若者とされ、その理由は安倍首相の曖昧さと安保よりも経済や年金に若い世代の関心があったことにあると指摘されている。また図2ー1からは、その後全体的な支持率が低下する中でも、高齢層からの支持はある程度安定していたことも分かる。この間、多くの報道、特に活発なテレビ報道があったことからすると、相対的に若者の方が報道に影響されていたと推測することも可能ではある。

 しかし同時に指摘しておかなければならないのは、第1次安倍政権において、全体的に見ればどのグループの支持率推移も似通ったトレンドであり、高齢層の方が支持率が高いという傾向はあっても、突出して安倍首相を支持/不支持していたグループが見いだせるわけではないということである。この点に関連して、郵政解散のあった2005年の小泉内閣のグループ別支持率の推移を図2ー2にまとめた。小泉内閣においてもグループ間である程度の支持傾向の差異は見られるが、第1次安倍政権同様、変動のトレンド自体はいずれのグループも類似している。すなわち、世代×性別ごとの推移という側面に着目する限り、第1次安倍政権は小泉内閣と同じく、政治情勢や報道に対する各グループの反応傾向は比較的同質的だったと考えられる。 

図2−2 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(小泉内閣・第2〜3次)拡大図2−2 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(小泉内閣・第2〜3次)
 それでは、近年の安倍政権ではどのような傾向が見られるのだろうか。図2ー3は、2017年2月~2018年10月にかけての、各グループの第3~4次安倍内閣支持率の推移をまとめたものである。この時期は周知の通り、「森友学園問題」「加計学園問題」という安倍政権に関する二つの疑惑の報道によって安倍内閣の支持率が大きく変動している。

図2−3 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(安倍内閣・第3〜4次)拡大図2−3 世代×性別ごとの内閣支持率の推移(安倍内閣・第3〜4次)
 全体的な推移をまず確認しよう。加計学園が国家戦略特区への獣医学部新設計画を立てた際に「総理のご意向」などと記された文科省の文書が存在していることが報じられた2017年5月17日以降、安倍内閣の支持率は急落した。その後徐々に持ち直したが、2018年3月2日付朝日新聞が森友学園の土地取引に関する財務省の決裁文書が改ざんされた疑いをスクープしたのを契機に、再び支持率が落ち込むことになった。

 ここで焦点を当てたいのが、30代以下の若年層男性の支持率である。2017年2月時点では、 ・・・ログインして読む
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