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中間選挙後も混乱続く米政局

トランプ再選の道筋は見えず

冷泉彰彦 在米作家、ジャーナリスト

上院で共和党が善戦

 まず、全体的な結果であるが、上院(今回非改選を含む)では共和党が善戦して、定数100のところ、共和党53議席、民主党47議席となった。つまり改選前と比較すると、共和党が2議席伸ばした形である。反対に、下院では定数435のところ、民主党234議席、共和党199議席(本稿の時点では残り2議席が未確定)と民主党が大勝した。

 この上下両院でねじれた結果となった要因だが、まず上院に関しては人口比であるとか、一票の格差ということは全く考慮されず、各州の代表2人が任期6年で選出される。従って、中西部から南部の人口の少ない州で優勢な共和党は、支持基盤の中心がカリフォルニア、ニューヨークなど人口の多い州である民主党よりも有利である。加えて、今回の改選対象議席は民主党が圧倒的に多く、守りの選挙となったこともある。そんな中で、トランプ大統領は「カバノー判事承認」を追い風として、本来なら同政権に懐疑的であった宗教保守派を投票所に向かわせることに成功した。反対に、前々回の2006年にブッシュの不人気を受けて上院に当選した「保守州の民主党上院議員」たちは、カバノー承認という「踏み絵」を拒否したことで追い落とされた格好だ。

 一方の下院に関しては、国勢調査を受けて各州の定数は最新の人口比に調整されることから、全体の議員数は両党の得票率とは大きく乖離することはない。CNNの報道によれば今回の下院議員選挙における総得票数は、民主党が5952万5244票(53.2%)共和党が5051万6570票(45.1%)、つまり両党の票数の比率は1.18対1.0ということで、獲得議席比率の1.17対1.0にほぼ一致する。

 勝敗ということで言えば、単純な得票数と下院議席では、民主党が大差で勝利したわけだが、トランプ大統領が言うように上院での共和党の「勝利」ということもまた動かせない結果である。端的に言えば、「ゲームのルール」を熟知した政権が「カバノー承認」というドラマと、「移民排斥」というキャンペーンを使って、中西部の各州を押さえ、かろうじて「引き分け」に持ち込んだ、全体的な選挙の分析としてはそんなところだろう。

 では、各地域別の動向を見ていくことにしよう。まず、北東部とカリフォルニアだが、ここでは民主党が上院を手堅く押さえ、更に下院では大幅に議席を伸ばした。例えば、筆者の地元ニュージャージー州では、下院の12議席中5議席を確保していた共和党は4選挙区で惨敗して、1議席を残すだけとなっている。ニューヨーク州でも共和党は下院で3議席を落としたし、カリフォルニアでも6議席が民主党に移っている。この3州だけで、下院の13議席が共和党から民主党に変わっているのだ。

 そこには、トランプ政権の保守的なイデオロギーへの批判、グローバル経済を傷つけ、国全体の繁栄を危うくする経済政策への批判などに加えて具体的な要因がある。それは地方固定資産税納税者への「増税」という措置だ。2017年末に成立した「トランプ税制」は大規模な法人減税と富裕層中心の所得税減税から成り立っている。だが、その一方で住宅の資産価値に課税する地方固定資産税について、国税の恩典措置には上限が設定された。これは、こうした「リベラルな富裕州」に対する懲罰とも言える税制であり、今回の下院での選挙結果は、その「しっぺ返し」になったと見ることができる。

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筆者

冷泉彰彦

冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ) 在米作家、ジャーナリスト

1959年生まれ。東京大学卒。コロンビア大学大学院修士課程修了。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル、ラトガース大学講師を経てプリンストン日本語学校高等部主任(現職)。著書に『トランプ大統領の衝撃』(幻冬舎新書)、『予言するアメリカ』(朝日新書)など。Newsweek 日本版公式ブログ、メルマガJMM、メルマガ「冷泉彰彦のプリンストン通信」を配信中。