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中間選挙後も混乱続く米政局

トランプ再選の道筋は見えず

冷泉彰彦 在米作家、ジャーナリスト

ラストベルトは民主が巻き返し

オルーク候補。選挙戦では、多額の資金が集められ使い切られたという(テキサスTV局のサイト記事)拡大オルーク候補。選挙戦では、多額の資金が集められ使い切られたという(テキサスTV局のサイト記事)
 前回、2016年の大統領選では、「ラストベルト」つまり製造業が斜陽となっている五大湖地方が注目された。従来は民主党の票田であったこの地域に対して、トランプは「忘れられた白人層」の怒りを引き出してみせ、ヒラリー・クリントンの勢いを逆転することに成功したからだ。

 だが、今回の中間選挙では「異変」が見られた。例えば、大統領選の最後の決め手となった、ペンシルベニア州では上院、下院、知事の3選挙ともに民主党が勝利した。「ラストベルト」の象徴と言われるオハイオでは、引退するジョン・ケーシック知事の後任は共和党候補が勝ち、下院は引き分けた(議席移動なし)が、上院では民主党が勝利した。また、小さな政府論を掲げて毎回大統領候補にも擬せられてきたウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事(共和)の落選というのも大きなニュースだった。

 この「ラストベルト」における民主党のカムバックだが、「通商戦争」が原因という見方が多い。まず、自動車産業をはじめとする製造業は、関税引き上げ合戦でコスト高に苦しむとともに、対中国などの輸出の不透明感に襲われている。また、この五大湖地方というのは養豚のメッカであるし、また大豆の大量生産地であるが、いずれも中国が主要な輸出先であり各農場は大きなダメージを受けている。

 更に、南部の各州における選挙結果も注目される。まず、テキサス州における民主党の躍進という現象がある。最終的には共和党現職で元大統領候補のテッド・クルーズ議員にわずかに及ばなかったものの、民主党のベト・オルーク候補の善戦は、全国に鮮烈な印象を与えた。

 このテキサスの選挙結果だが、下院選挙区では定数36議席の中で新たに2議席を奪い13まで議席数を伸ばしている。また上院議員選でのオルーク候補は、勝ったクルーズ候補の50.3%に対して48.9%まで得票率で迫った。これは、ニューエコノミーに沸く同州に北東部やカリフォルニアから多くの企業が流入し、併せてリベラルな人口が移動してきていること、そして国境州という「当事者」ゆえに、トランプの「排外主義」が強く嫌悪されたことが指摘できる。

 テキサスにおける民主党の党勢拡大は大きなニュースだが、一方でジョージアとフロリダの選挙結果の評価は難しい。両州ともに、民主党はフレッシュなアフリカ系新人を知事候補に立てた。そして、ジョージアの知事選(上院は非改選)、フロリダの知事選、フロリダの上院選のいずれもが、極めて僅差の結果となり、一時は再集計の作業が進められたほどである。最終的にはいずれも民主党側が敗北を認めて、勝敗は確定したが、いずれの選挙も1%前後の差まで肉薄したのである。

 まず、ジョージアであるが、上院は非改選で知事選に注目が集まった。かつてジミー・カーター大統領を輩出した土地柄であるが、当時は民主党支持であった白人の宗教保守派が共和党支持にシフトした後は、強固な保守州という性格が出来上がっている。そのジョージアで、惜敗したものの「黒人票+リベラル票」が保守票に肉薄した意義は大きい。一方で、フロリダの場合は、元来が両党の拮抗した「スイング・ステート」という性格を有しており、今回は上院選と知事選の双方で激しいデッドヒートが繰り広げられたが、正にこの州の特性が現れたと言える。

民主に「オルーク待望論」

 中間選挙において、中西部の保守州で善戦したトランプ大統領は、あくまで「今回の選挙戦は勝利」だとして強気の姿勢を崩していない。確かに、小選挙区の下院では敗北したが、州単位の上院では反対に党勢を伸ばしたからだ。では、この勢いが2020年の大統領選に向けて続いていくのかというと、必ずしもそうとは言えない。というのは、大統領選というのは確かに「州単位」での戦いだが、一州1票ではなく、人口比によって変動する「選挙人」の獲得ゲームであるからだ。

 そこで問題になるのは、テキサス州における民主党の躍進である。最終的には共和党現職のテッド・クルーズ議員に惜敗したものの、ベト・オルーク候補の善戦は、選挙から1カ月を経た本稿執筆の時点でも依然として話題になっている。オルーク候補に関しては、「落選」したにもかかわらず「2020年の民主党大統領候補」としての待望論が盛り上がっている。

 この「オルーク待望論」だが、

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筆者

冷泉彰彦

冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ) 在米作家、ジャーナリスト

1959年生まれ。東京大学卒。コロンビア大学大学院修士課程修了。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル、ラトガース大学講師を経てプリンストン日本語学校高等部主任(現職)。著書に『トランプ大統領の衝撃』(幻冬舎新書)、『予言するアメリカ』(朝日新書)など。Newsweek 日本版公式ブログ、メルマガJMM、メルマガ「冷泉彰彦のプリンストン通信」を配信中。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです