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元陸将 山口昇氏に聞く

「なんとなく」が縛ってきた自衛隊 憲法を国民のものにするために

山口昇 元陸将、笹川平和財団参与、国際大学副学長

「愛される」より「信頼される」

――自衛隊は戦時中の反省に立ってスタートし、吉田茂元首相は「君たちが日陰者であるときの方が国民や日本は幸せなのだ」と言いました。「税金泥棒」なんて言葉もあったと聞きます。山口さんが自衛隊に入隊したころ、自衛隊の社会における位置づけや9条との関係は今とどう違っていましたか。

山口 私は1974年入隊ですが、当時、国会の第2党だった社会党がずっと自衛隊は憲法違反だと言い続けていました。私は自衛官になりましたし、父親が自衛隊で誇りをもって働いている姿を見ていましたので、税金泥棒ということはまったく当たらないと思っていました。ただ、「税金泥棒」とか「税金の虫」とか言われたことはあります。

――直接ですか。

山口 防大の学生のときに、夜、バス停で待っていたら酔っ払いのおじさんにゆで卵の殻を投げられ、「税金の虫」と言われました。19歳か20歳でしたからカチンとは来ましたが、今ではそういうことが自由に言えるような世の中を守ることが自衛隊の使命だと思っています。

――防大では憲法について、自分たちを批判する人たちを含めて国民を守るというような講義があったのですか。

山口 憲法は必修でした。(憲法解釈について)いろんな議論があることはそのとき、学びました。自衛隊に入ってからもいろんな段階で何度も教育されるのですが、そのときには自衛隊の背景にある法理を必ず議論しました。自衛隊では、憲法、法律に関する教育は徹底しています。

――山口さんより少し上の世代だと思いますが、「愛される自衛隊」というスローガンがありました。

山口 私が部隊に入ったころまでですね。当時、統合幕僚会議議長(統幕議長)、陸海空各幕僚長は旧軍の人でした。その後、防大1期生まで間があった。「愛される自衛隊」というのは旧軍の人たちの時代です。栗栖(弘臣)さんという統幕議長が「超法規的」という発言をして解任されましたが(注1)、来栖さんは「自衛隊が愛されてどうする」と言っていました。「信頼されるべきだ」と。来栖さんは士官学校ではなくて東京帝大法学部出身です。そういう人が言われたことなので印象に残っています。

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筆者

山口昇

山口昇(やまぐち・のぼる) 元陸将、笹川平和財団参与、国際大学副学長

1974年防衛大学校卒、フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。ハーバード大学オリン戦略研究所客員研究員、防衛研究所副所長、陸上自衛隊研究本部長などを歴任した後、2008年12月退官(陸将)。09年4月~15年3月防衛大学校教授。11年3~9月内閣官房参与。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです