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元陸将 山口昇氏に聞く

「なんとなく」が縛ってきた自衛隊 憲法を国民のものにするために

山口昇 元陸将、笹川平和財団参与、国際大学副学長

嫌だった米軍への説明

――集団的自衛権の一部行使に反対する人たちの懸念は、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか、歯止めがなくなるのではないかという思いでしょう。

山口 そういう議論はありました。新しい解釈をみるとそういうことはなくて、日本の存立が脅かされるような事態で、まだ武力攻撃を受けるに至っていないときに集団的自衛権を行使できるという、ほとんど個別的自衛権に近いところで、皮一枚くらいです。例えば1950年6月に朝鮮戦争が始まって9月中旬には釜山が落ちるか落ちないかというくらい追い詰められた。米軍が兵力を送り込み、韓国が動員して守り切り、まさに皮一枚で残ったのですが、もし落ちていたら次は対馬だったでしょう。このような事態が、安倍内閣が解釈を拡大した部分に近いのではと思います。

――現役の時、国際舞台でも活躍されていますが、他の軍隊とやりとりする際に9条への理解を求めなければならないという状況はありましたか。

山口 ありました。90年代前半に少し任務を拡大し、PKO(平和維持活動)に部隊を派遣できるようになり、周辺事態で米軍に兵站(へいたん)支援、後方の補給や衛生などの支援ができるようになりました。例えば、米軍機が落とされたら捜索・救難活動ができるようになりました。それを米軍に説明すると「えっ、そんなこともできなかったの?」という顔をされます。96、97年から2000年代にかけて法制度を整備しましたが、その都度、特に米軍に説明するのが一番嫌でしたね。

 米軍の人に「自衛隊は作戦の話をするときに、すぐに法律を持ち出す」と何度も言われました。こういう根拠でここまでしかできないという議論になることに不満を持っていたと思います。それもこの25年間で、特にアメリカとは深いやりとりをしてきて、議論のレベルを高めてきました。今ではオーストラリアやイギリスといったところとも安全保障協力について議論しています。実は韓国とも90年代には相当突っ込んだ話をしました。日米韓という場合が多かったですが、軍当局同士のフォーマルな場で、防衛当局同士のチャンネルができました。

――突っ込んだ話というのは朝鮮半島有事でということですか。

山口 ええ。日本がどういうことができるかです。韓国の人はどんなに話してもどこかで「自衛隊は土足で上がってくるのか」と。そんなことまったく考えていませんが、常に説明しなければならない。なかなか厳しいものがありました。

――PKOの話を伺いたいのですが、PKOで普通の軍隊は「これ以外はやっていい」という話になりますが、自衛隊は「これ以外はやってはいけない」という話になりますよね。

山口 たぶん普通の軍隊というのはないですよ。米軍だって普通ではないし、

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筆者

山口昇

山口昇(やまぐち・のぼる) 元陸将、笹川平和財団参与、国際大学副学長

1974年防衛大学校卒、フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。ハーバード大学オリン戦略研究所客員研究員、防衛研究所副所長、陸上自衛隊研究本部長などを歴任した後、2008年12月退官(陸将)。09年4月~15年3月防衛大学校教授。11年3~9月内閣官房参与。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです