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グローバルな日米同盟下での自衛隊明記は

憲法の「番外地」の現状を追認

青井未帆 学習院大学大学院法務研究科教授

1 防衛大綱と日米ガイドライン

拡大米軍の新型輸送機オスプレイを使った日米共同訓練が報道公開された=2017年8月18日、自衛隊の北海道大演習場
 18年12月21日に閣議決定された19年度予算案で防衛費は5兆2574億円を計上し、7年連続で右肩上がりに増加してきている。前年度比1・3%増である。ここには「いずも」空母化改修調査研究費や陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」取得費も盛り込まれており、かつての「平和国家」や専守防衛の路線とはまるきり異なった桁違いの防衛政策となっていることは誰の目にも明らかであろう。

 国民の間では、「対中抑止」のために防衛力強化はやむを得ないという理解も広く共有されているようだが、どこまで強化するのか、どのような国を目指すのかといった問題には関心があまり払われていないように思われる。しかし現行の防衛政策は、憲法9条の2として追加される場合に書き込まれるはずの「国家像」と直結するだけに、抽象的ではなく具体的に考えていくべきである。そこで、政府の明らかにしているところを防衛大綱に見てみよう。

 18年12月18日に「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(以下、30大綱)と中期防衛力整備計画が閣議決定された。30大綱の「我が国の防衛の基本方針」には、国家防衛を超える国益防衛が正面から謳(うた)われ、「従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力を構築する」ことが明らかにされている。そして、統合機動防衛力(前25大綱)に加え、宇宙・サイバー・電磁波という領域に踏み込んだ「多次元統合防衛力」なる理解が示されて、「宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合するクロス・ドメイン(領域横断)作戦で、平時から有事まで柔軟かつ戦略的な活動を可能とする」ことが掲げられている。

 この多次元統合防衛力構想において、「日米同盟は、我が国自身の防衛体制とあいまって、引き続き我が国の安全保障の基軸であり続ける」(2頁)ものとされており、「防衛力を強化することは、日米同盟を強化することにほかならない」(9頁)ともされる。日本の安全保障にとって、アメリカはいよいよ深く関わってきていることを確認したい。

 今日の日米同盟の強化は、15年日米ガイドラインを参照点として構想されている。つまり、どのような国が目指されているのか、そのあらましは、この文書に表されているのである。現実問題として、我が国がこれまで日米ガイドラインを忠実に国内法的に「執行」してきたことを考えるなら、国の将来像を検討する際には、日米ガイドラインを無視することはできない。

 15年日米ガイドラインの特徴は、「日米同盟のグローバルな性質」を強調したところにあり、それは同年夏に成立した安保関連法の枠組みの「先取り」であった。もはや日米の関係は、平時から有事まで切れ目なく連絡をとるものとされており、その活動の範囲も、インド太平洋地域を超えた地球規模が想定されている。すなわち、日米同盟は、そもそもの日米安保条約の枠組みを遥(はる)かに超えている。

 改めて日米安保条約の枠組みを確認するなら、日本とアメリカは「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」(5条)へ対処するよう行動することが宣言され、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」(6条)に、米軍が日本で施設及び区域を使用することができるのであった。

 15年日米ガイドラインがいう「グローバルな日米同盟」は、日米安保条約体制では説明できない。日本国憲法73条3号は条約の締結について「事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と定め、外交という国家作用に国民代表機関を関与させている。いったい、正式な条約の改定なく、活動範囲を世界大に広げることができたのはなぜか。ガイドラインは、国際約束ですらないとされるが(1997年6月11日衆議院外務委員会・池田行彦外務大臣)、アメリカを「盾」に、あるいは忖度して、憲法の定める統治の仕組みをショートカットすることによって、戦後の日本の安全保障政策・外交政策が決定、執行されてきたことは否定できまい。日本にとって国防は日本国憲法の規律の「番外地」に大きくはみ出ている現実がある。

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筆者

青井未帆

青井未帆(あおい・みほ) 学習院大学大学院法務研究科教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得満期退学。信州大学准教授、成城大学准教授などを経て、2011年から現職。著書として、『憲法を守るのは誰か』(幻冬舎ルネッサンス新書)、『憲法と政治』(岩波新書)など。