安田菜津紀(やすだ・なつき) Dialogue for People所属フォトジャーナリスト
1987年神奈川県生まれ。上智大学卒。カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は岩手県陸前高田市を中心に被災地を記録し続けている。2012年、「HIVと共に生まれる―ウガンダのエイズ孤児たち―」で第8回名取洋之助写真賞受賞。著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
ISとは何だったのか 世界の無関心に疲れる人々
2011年3月、アサド政権に対するデモがシリア各地で広まり、8年という月日が経った。昨年9月に在英NGO「シリア人権監視団」が公表したシリア内戦の死者数は36万人を超え、そのうちの3分の1が民間人とみられている。ある時、隣国で避難生活を送る、母親になったばかりの友人がふと、「シリアは死んでしまった」とつぶやいたことがある。「革命が始まったとき、こんな事態になるとは想像していませんでした。もし過去に戻れるならば、そんな″革命〟は選ばなかったでしょう。小さな子どもたちや友人たちが死んでいく、そんな自由は求めていなかったのに」
そんな中で昨年12月、シリア北部に駐留している米軍が撤退するというニュースが大々的に報じられた。トランプ大統領は「イスラム国は今にも崩壊しようとしている。100パーセントの勝利後、われわれは撤収する」と成果を強調する言葉をツイッター上に並べていった。
過激派組織「イスラム国」(IS)は一時、英国全体ほどもある土地と、1千万人以上の住民たちを支配していたものの、シリア東部に位置する最後の拠点を失い、シリアではほとんど壊滅状態にある。けれどもトランプ大統領の言葉とは裏腹に、今年1月16日、北部の街マンビジュでパトロール中の駐留米軍部隊を狙ったとされる自爆テロが起き、米兵4人を含む16人が亡くなった。米軍撤退の宣言は果たして、内戦が既に終結しつつあることを意味しているのだろうか。今年1月、シリア北部地域を取材した。
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