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21世紀家父長制の悪夢

新天皇家の発する家族メッセージ

牟田和恵 大阪大学大学院人間科学研究科教授

皇室と家族イメージ

 そうした制度面だけでなく、「インフォーマル」に見える家族の在り方についても、天皇一家の影響は測り知れない。

 現在われわれはメディアの発達により、天皇や皇族の「家族」の姿をTVや雑誌、さらにはネット上でもよく目にするが、「家族の姿」を見せることは、近代ヨーロッパの王室や皇帝に始まる、国民統治戦略の一つだ。

拡大図1 アニメ「原始家族フリントストーン」 THE FLINTSTONES and all related characters and elements are trademarks of and © Hanna-Barbera.
 家族史や社会史の分野に「近代家族」という概念がある。夫・妻とその子が情愛で結ばれ外部からは独立したあたたかな「ホーム」を営む家族の在り方は、多くの人々が「自然」なものと思い込んでいるが、実は近代に至る社会経済構造の変化の中で生まれてきたものだ。人類史をはるかに遡る狩猟採集時代でも「男が狩りに出かけている間、女は洞窟で子を抱いて待つ」というイメージが疑いもなく信じられていたり、石器時代を舞台にした映画やアニメから「家族のために働くサラリーマンの父親、家で家事や育児をする妻、家にはペットがいる」といったストーリーが提供されていたりする(図1「原始家族フリントストーン」)が、これらは幻想にすぎない。後者はあくまでフィクション、とも思われようが、人類発祥から男女は前者のような役割分業をしていたという信念があるからこそこうしたフィクションが受け入れ可能なお話になるのだろう。しかしながら夫・妻・子の極小の単位で人類が生存しえたはずはなく、人はより広い共同体の中でこそ生きることが可能だった。それが、近代に至る産業化の中ではじめて「夫・妻・子」よりなる独立した単位としての「家族」を形成するようになったのだ。つまり私たちの自明とする家族は没歴史的なものでも「自然」なものでもないという認識から、「近代家族」と呼んでいる。

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筆者

牟田和恵

牟田和恵(むた・かずえ) 大阪大学大学院人間科学研究科教授

専攻は歴史社会学、ジェンダー論。著書に『ここからセクハラ! アウトがわからない男、もう我慢しない女』(集英社)、『ジェンダー家族を超えて』(新曜社)、『戦略としての家族』(同)、『架橋するフェミニズム:歴史・性・暴力』(編著、電子書籍)ほか。「国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」原告(http://kaken.fem.jp/)。