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移民をチーム日本に迎えるには

「在日ブラジル人1世」の提言

Angelo Ishi 武蔵大学社会学部教授

〝開国〟への関心の高まり

拡大外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が施行された4月1日の各社の紙面

 では、19年前に比べて何が最も変わったのだろうか。それは紛れもなく、この問題への草の根レベルの関心が一気に高まったことである。私が最近登壇したこのテーマに関する2つの公開シンポジウム(注1)を例に取っても、200人の参加者が集まって主催者を驚かせていた。主催者たちによれば、これまでと比べて明らかに幅広い層(とりわけ若い世代)の人々が集まり、初めて移民というテーマに興味を抱いた「にわか関心層」が相当の割合を占めたそうだ。

 流通する情報の「量」が増えれば「質」に繋がりやすいということを考えれば、圧倒的に報道量が増えたことは、それ自体に何らかの効果が期待できそうだ。これまでは、大学の授業で「日本には何人の外国人が在住していると思いますか」とクイズ形式で聞くと、桁違いの誤った答えが飛び出していた。また、東日本大震災後に日本各地からボランティアに駆けつけた在日ブラジル人の支援を受けた東北地方の被災地のリーダーが感謝の挨拶で「世界からの、ブラジルからの支援に感謝する」と述べたのを聞いて衝撃を受けたこともある。これは端的に、一般市民の間で「多くのブラジル人が日本に住んでいる」という基礎知識がなく、かつ、その人たちは助けを必要とする「かわいそうな弱者」であるとは限らず、さらに、彼らは「同胞が被災していなくても同じ日本で苦しんでいる人がいれば、貢献したい」人々だという想像力が働かなかったのであろう。

 最近の「情報の洪水」によって、市民の在住外国人に関する「リテラシー」は確実にレベルアップする。その底上げがこれから来日する外国人労働者に限らず、すでに在住している外国人の人権擁護と労働条件・生活環境の改善にどう繋がるか、注目したい。

 メディア報道が圧倒的に増えたから国民の関心が高まったのか、それとも国民の関心が高まったのに合わせてメディアがこのテーマに関する報道を増やしたのか。卵が先か鶏が先かという因果関係を見極めるのは難しいが、私はやはり、報道量の激増が「無関心層」を呼び覚ましたのだと考える。その意義は大きい。ただし、本稿ではマスメディアへの様々な注文や苦言も呈したい。粗探しや「無い物ねだり」のように聞こえるかもしれないが、本誌はメディアに関心を抱く読者が多く、せっかくの機会なので、お許し願いたい。合わせて4月施行の入管法改定や「外国人材」受け入れ政策に関する提言も幾つか示したい。まずは、簡単な自己紹介から始めよう。

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筆者

Angelo Ishi

Angelo Ishi(アンジェロ・イシ) 武蔵大学社会学部教授

1967年、ブラジル・サンパウロ生まれ。日系ブラジル人3世。サンパウロ大学ジャーナリズム学科卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を経てポルトガル語新聞の編集長を務めた。2010年から現職。専門は国際社会学、移民研究、メディア社会学。著書に『ブラジルを知るための56章』(明石書店)、『日本人と海外移住』(明石書店、共著)ほか。