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饒舌だった「橋下劇場」会見を検証

個人攻撃を許した事なかれ主義

松本創 ノンフィクションライター

拡大大阪都構想が争点となった大阪府知事・大阪市長のダブル選で当選を決め、握手する大阪維新の会の吉村洋文氏(右)と松井一郎氏=2019年4月7日夜、大阪市中央区

 今年の4月、大阪府知事と大阪市長の「入れ替えダブル選挙」で大阪維新の会の候補者が圧勝したことを受け、1本の記事をネットメディアに書いたところ、予想以上に多くの反響があった。

 『誰が「維新」を支持したか―大阪・首長ダブル選挙の光景から』(ハーバー・ビジネス・オンライン、2019年4月11日)というその記事は、大阪には今や、維新支持層が着実に深く根を張っており、橋下徹氏が首長を務めていた3年半前までの「熱狂」とは明らかに異なるステージに入っていることをレポートし、その理由を探ったものだが、とりわけ維新の関係者や支持者には好意的に読まれたらしい。「維新政治をポピュリズムだと批判してきたライターがついに誤りを認めた」というようなコメントとともに、SNSで拡散された。

 橋下氏の目にも止まったらしく、彼はこんなコメント付きで、記事のURLをツイッターに投稿していた。

 〈やっと気付き始めたか。この手の連中は初めから有権者の認識を誤解していた。今回の選挙結果を受けて自分たちの方が誤っていたのでは?とやっと認識。これが選挙の効果だ。ただまだ往生際が悪く、メディアが維新寄りだとか、維新が変わったとか言い訳をしている。〉

 〈在阪メディアは維新の会誕生から一貫して批判的スタンスだ。それはメディアの役割として当然。(後略)〉

今も変わらない疑問と危惧

 一度発表した記事がどのように読まれようが仕方ないし、解釈は読み手の自由だが、あえて言っておくなら、私は維新の政治手法や党の体質、大阪都構想をはじめとする彼らの政策や主張、何よりも言論の手法に対しては、現在も変わらず大きな疑問と危惧を抱き、批判的な目を向けている。

 ただ、事ここに至って、「維新は所詮、ポピュリズム」「なぜ支持するのかわからない」とばかり言っていても仕方がない。対抗軸を立てるにも、市民の分断を埋めるにも、大阪において維新が支持され続ける理由と、反維新陣営の敗因をきちんと分析して、対話を試みるところから始めるしかないだろう、ということを書いたつもりだ。

 本稿では、橋下氏が首長だった時代の記者会見から、彼の政治手法や「橋下劇場」が作られていった経緯を検証するが、もう一方の当事者だった在阪マスメディアに対する見方も、基本的には変わっていない。橋下氏の派手な言動と〝維新政局〟に踊らされた異様なまでの過熱報道には大きな問題があり、世論形成や言論状況に深刻な影響を与えたと、今も考えている。そこには、記者会見の在り方をはじめ、権力との距離の取り方、画一的な取材手法、速報偏重と検証・論評の弱さ、SNSの影響、報道のバラエティー番組化……など、政治とメディアをめぐる問題が凝縮され、現在の国政報道にもつながっている。

 取材される側だった橋下氏にすれば「批判的」に見えたのかもしれないが、そんなことは決してない。少なくとも、「一貫して」などということはない。そのことは、先の記事の題名の元になった拙著『誰が「橋下徹」をつくったか─大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2015年)に詳しく書いた。

 橋下氏が知事になってから、政治家を引退するまで約8年間の橋下府政・市政と在阪メディアの関係を追った拙著の概要を、まずは記者会見や囲み取材のやりとりを中心に振り返ってみたい。

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筆者

松本創

松本創(まつもと・はじむ) ノンフィクションライター

1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、フリーランスに。著書に『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社)、『誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)など。