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建設的ジャーナリズムとは何か

ネガティブ性払拭へ  権力監視との共存必要

清水麻子/林香里

ネットアルゴリズムとの共存

 建設的ジャーナリズムは、番組や紙面とともに、公式ウェブサイトと連携しながらプロジェクト形式で発信されるスタイルが多いようである。

 一方で、グーグルやフェイスブックなどのプラットフォームには特定のアルゴリズムが存在し、差別や排除を助長するのではないかという問題点が指摘されている。

 例えば、「社長」という言葉をグーグルで画像検索すると、男性の写真がズラリと登場する。こうした検索結果が与える社会のイメージは無視できない。さらに、ネット空間は、検索最適化などの操作によって、カネと権力のある者たちによって占拠されている。サイバースペースは、現代社会の諸問題から決して自由ではなく、むしろそれらの再生産や強化に繋がるというわけである。

 これに対して登壇者の「国境なき記者団」事務局長のクリストフ・デロワー氏からは「プラットフォームは報道機関にはなれないのだから、あくまでも報道機関がニュースを発信する際に主導権と責任を持つべきだ」という指摘がなされたほか、「報道機関とプラットフォームとが協力して、アルゴリズムやニュース選択の透明性やアクセシビリティー(利用しやすさ)を確保すべき」(欧州放送連合のノエル・カラン氏)といった意見も出た。

 こうした意見に対して、プラットフォーム当事者であるグーグル社のリチャード・ギングラス氏からは、「進化が速いネットの世界でグーグルが生き残っていくためにも、アルゴリズムの透明性を高めることは重要」との認識が示され、200以上の報道機関と「トラストプロジェクト」を立ち上げ、信頼性を高める実践に取り組んでいることが伝えられた。

 会議では、様々な実践者からの報告があり、どのように市民の関心を高め、議論に巻き込んでいったのかの実践例が各報道機関から報告された。

 建設的ジャーナリズム発祥の地であるデンマークの公共放送DRラジオのティン・ラッド・シーラップ氏からは、ラジオ局のパーソナリティーとリスナーが共に社会問題の解決策やアイデアを考える「公共サービス」コーナー(週4日、午前10:03~11:00)が紹介された。心臓発作やドラッグ、虐待や食べ物、無駄使いなど市民の身近な問題に焦点をあて、パーソナリティーがリスナーに直接電話をかけ、スタジオに招き、メールを読み上げたりして共に解決策を考える実践である。聴取率は10.9%を獲得した。

 番組内で話し合われた解決策は、番組責任者が、様々な組織や政治家に持ち込むほか、番組には大臣などにも参加してもらう。一定期間経過後には、議論に参加した人々がどんな行動を起こしたかもチェックしているという。

 スウェーデンの公共放送SVTのニュース・スポーツ局長、アン・ラガークランツ氏からは、公式オンラインサイト「SVTオンライン」と連携した取り組みの報告がなされた。SVTは2018年1月、「私たちはコンストラクティブ・ジャーナリズムと協力します」という宣言をウェブ上で行い、「いつもと異なる視点」を増やし、コンテンツの品質向上に取り組むことを新しい戦略方針とした。具体的には視聴者が政治や社会問題に興味を持つような分かりやすい解説を増やし、視聴者が関心を持つコンテンツを積極的に配信するように工夫をこらした。

 最近では問題が多かった学校の再生を多角的に追うシリーズや、看護師不足と非効率財政の構造を暴いて視聴者に解決策を考えてもらう建設的報道シリーズがヒットとなったようである。

 建設的ジャーナリズムの導入によって視聴者の信頼は回復。18年9月の選挙報道では「過去と比較して視聴者の信頼度が上がり、SVTオンラインは2年連続で最も急成長したニュースサイトになった」(ラガークランツ氏)ことが報告された。

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